交流会も終わり、カナたちと別れる際になって、彼女が明日の予定を言い出した。
「実は明日、親戚の結婚式なんですよ」
「そうなんですか。実は俺もなんです」
「珍しい事もあるものだな。ウオミーもタカトシも親戚の結婚式だなんて」
「そうだね~」
この前のキス事件以降、どことなくアリアからは余裕が感じられるようになってきたが、それでも森や五十嵐と比べればまだまだだろう。
「それじゃあシノっち、アリアっち、タカ君、また今度」
「失礼します」
カナと森と別れ、私たちも帰る事にした。
「ところで、何故カナは萩村に挨拶していかなかったんだ?」
「だって、スズちゃんは今畑さんのところに行ってるから」
「そう言えばそうだったな」
この場にいない萩村に挨拶をしていかないのは仕方のない事だな。決して小さいから存在を忘れていたわけではないからな。
「時にタカトシよ」
「何ですか?」
「親戚の結婚式という事は、コトミも連れて行くのか?」
「一応は。アイツ一人で留守番させるくらいなら、家を空けた方が安全ですから」
「それもどうなんだ?」
相変わらずコトミに対して厳しいんだか甘いんだか分からないが、明日は津田家に遊びに行っても誰もいないことは分かったから、大人しく勉強でもするかな。
コトミを連れて結婚式場へ向かうと、向こう側から見知った人が、同じ式場にやってきた。
「タカ君?」
「何故カナさんがここに?」
確かカナさんは親戚の結婚式に参加するために出かけるというのを昨日聞いた。そして目的地であろう結婚式場は、俺たちの親戚が結婚式を行う式場と同じようである。つまり――
「まさかウチの
「まさかウチの
――そう言う事なのだろう。
「凄い偶然ですね」
「世の中狭いですね」
カナさんとしみじみ話し合っていると、コトミが顔を赤らめて口を押さえていた。
「どうかしたのか?」
「だって、余の○内狭いって……大胆な告白だよね」
「お前は何を言ってるんだ?」
ふざけたコトミの相手などしたくないので、軽く流して式場へと入ることにした。参列者の中で学生は俺とコトミ、そしてカナさんの三人だけのようで、俺たちは固まって座ることにした。
「これで私たちは親戚関係になりましたね」
「遠縁ではありますが、確かにそうなりますね」
式中は特にすることも無いので、迷惑にならない程度の声量でカナさんとお喋りする事になった。正直親戚と言ってもさほど交流があるわけではないので、出席したくなかったのだが、父さんと向こうの叔父が仲良く、本来なら出席するのは父さんのはずだったのだが、仕事の都合上俺とコトミが名代として出席する事になったのだ。
「私は一人っ子だから、姉弟というものに憧れているんです」
「そうなんですか」
「だからタカ君、これからは私の事をお義姉ちゃんとして扱ってください」
「はぁ? 義姉として扱えと言われましても、どうすればいいのかさっぱりなのですが」
俺には妹しかいないので、義姉扱いしてほしいと言われても困ってしまう……そもそもカナさんはバイト先の先輩でもあるので、接し方を変えろと言われても難しいのだ。
「普通に『カナお義姉ちゃん』と呼んでくれたり、今まであった遠慮みたいなものを取っ払ってくれたらいいだけです」
「お義姉ちゃんは嫌ですね……義姉さんでどうでしょう?」
「……悪くない響きですね」
どうやら気に入ったらしく、義姉さんが採用されてしまった。
「コトミちゃんも、遠慮なく呼んでくださいね」
「はい、カナお義姉ちゃん!」
「うふふ、一日で義弟と義妹が出来てしまいました」
親戚の結婚でこうも人間関係に変化が生じるとは……まぁ、特に何かが変わったわけでもないんだがな……この人がぶっ飛んだ提案をしてくるのは今に始まった事じゃないし。
昨日の結婚式の事をタカトシ君に尋ねると、どうやら親戚の相手がカナちゃんの親戚だったようで、浅からぬ縁が出来たと報告されちゃった。
「それで、カナと親戚関係になったと?」
「ええ。義姉さんと呼べと言われまして」
「ということは、カナは脱落したという事か?」
「脱落? 何からです?」
「まってシノちゃん。血の繋がらない姉弟って関係は逆に燃えるものがあると思うの」
「うむ……あながち否定出来ないな」
「……この二人は何を言ってるんだ?」
「さぁね」
タカトシ君は首を傾げながらスズちゃんに問いかけるけど、スズちゃんは答えてあげなかった。てか、どことなく不機嫌なのは、この前のキスが原因なのかしら?
「カナが義姉になったということは、津田家を頻繁に訪れる口実が出来てしまったわけか」
「タカトシ君がバイトで家を空ける事が多いから、カナちゃんもコトミちゃんの世話と称して家に入れるわけね」
これはカナちゃんも一気に先頭争いに加わってきたという事かしら。一回キスしただけで勝ったと思ってたけど、これじゃあどっちがリードするか分からなくなってきたわね。
「そもそも森がトップなわけで、五十嵐、アリア、カナと来て、次は誰だ? 私と萩村のどっちかだよな?」
「だから、何の話ですか」
タカトシ君を問い詰めるべく距離を詰めたシノちゃんだったけど、タカトシ君は何のことだかさっぱり分かっていなかったので、答えは無かったのだった。
タカトシの方が年上っぽいですけどね