桜才学園での生活   作:猫林13世

274 / 871
完全夜型人間っぽいですしね、コトミは……


コトミの生活リズム

 朝、目が覚めて時計を見て私は慌てて飛び起きる。既に絶望的な時間ではあるが、大幅に遅刻するよりかはダメージが少ない方が良いに決まっている。

 

「とりあえず着替えながら朝ごはんを済ませて、カバンにお弁当を入れてっと」

 

 

 さっきタカ兄に起こされたと思ったのに、何でもう一時間も経ってるんだろう……

 

「てか、タカ兄もあんな時間に起こさなくてもいいのに」

 

 

 完全に逆恨みだと分かってはいるが、思わずにはいられない。タカ兄が私を起こしたのは七時ちょっと過ぎ、普通の学生にはまだまだ余裕だと思う時間なのだ。

 

「生徒会役員だから仕方ないのかもしれないけど、タカ兄は真面目過ぎるんだよね」

 

 

 脱ぎ散らかしたままだと後でタカ兄に怒られるので、脱いだパジャマは洗濯籠に入れて、私は家を飛び出した。

 

「この時間なら、電車に乗っていくより走った方が早いね」

 

 

 桜才学園と家とは、電車で一駅の距離なので、タカ兄は最初から電車を使わずに歩いて登校している。私も時間が危ない時はこうしてダッシュで学校まで向かうのだが、冬場の全力疾走は普段に五割増しで疲れるんだよね……

 

「タカ兄は凄いんだなぁ……」

 

 

 こんな寒さだろうが関係なく、タカ兄は朝ごはんとお弁当の用意を済ませ、洗濯をしてから学校に出かけているのだ。それでも文句一つ言わずに生活出来るなんて、私には考えられないんだけどね。

 

「津田コトミ、ただいま参上!」

 

「遅刻、としたいところだが、ギリギリセーフだな。それにしてもコトミ、髪がボサボサだぞ」

 

「寝坊しまして……髪を整える暇も無かったので」

 

「だから起こしたんだぞ」

 

「あんな時間に起こされても二度寝するに決まってるじゃん!」

 

 

 胸を張って答えた私に、タカ兄は盛大にため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時ものようにコトミとトッキーと一緒にお昼を食べていると、ふとコトミが何かを探しているのに気が付いた。

 

「どうかしたの?」

 

「お弁当は持ってきたんだけど……お箸忘れた」

 

「それくらいは自分で用意しなさいよ」

 

「今日は急いでたから、お弁当箱は鞄に入れたんだけどね……」

 

「職員室に行けば割りばしくらいあるんじゃねぇか?」

 

「うん……ちょっと取りに行ってくるよ……あれ、タカ兄?」

 

 

 コトミが席を立ったタイミングで、津田先輩が入口に現れ、クラス中が色めきだった。

 

「どうかしたの?」

 

「いや、お前のことだから弁当は鞄に入れたが、箸を忘れたんじゃないかと思ってな。どうせ水筒も忘れたんだろうし」

 

「面目次第もありません……」

 

「ほら、割りばしとお茶」

 

「でもタカ兄、よく私が忘れたって分かったね」

 

「何となく、な。それじゃあ、これに懲りたら少しは早寝早起きの習慣を心掛けるんだな」

 

「努力はします」

 

 

 津田先輩はそれだけ言って教室から去っていった。津田先輩が去った事により、クラスは落ち着きを取り戻したのだった。

 

「いや~、相変わらずタカ兄の勘の良さにはほれぼれするね」

 

「お前、もう少し兄貴の苦労を減らそうとは思わないのか?」

 

「これでも頑張ってはいるんだけどね……」

 

「頑張ってるようには見えないんだけど?」

 

 

 今日も相変わらず遅刻ギリギリ、忘れ物はする、宿題はやってこないと、何一つ成長してるようには思えないのだけども、コトミは何を頑張ってるのだろう?

 

「カナお義姉ちゃんに勉強は見てもらってるんだけど、途中で脱線しちゃったりするんだよね」

 

「それはあんたが脱線させてるんだと思うわよ」

 

 

 お義姉ちゃんって確か、英稜の生徒会長の魚見さんだし、あの人は勉強は真面目にする人だと思うしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会のメンバーで固まって帰宅していると、前からカナがやってきた。

 

「タカ君」

 

「カナさん、何かありましたか?」

 

「もう、『義姉さん』と呼んでくれるんじゃなかったの?」

 

「はぁ……それで義姉さん、何かあったのですか?」

 

「今日はコトミちゃんの勉強を見てあげる日ですから」

 

「あぁ、そう言えばそうでしたね。でも、コトミならもう家にいると思うんですが」

 

「家に行ったけど、いなかったわよ?」

 

 

 カナの言葉に、タカトシはため息を吐きながら携帯を取り出した。

 

「コトミか? 今何処にいるんだ……そうか。今すぐ家に帰れ。義姉さんが勉強を見てくれるそうだから……分かった、それじゃあな」

 

 

 会話が終わり、携帯をポケットにしまってから、タカトシはカナに頭を下げた。

 

「すぐに戻るそうです」

 

「別に急がなくてもいいのに」

 

「いえ、せっかく時間を割いてもらってるわけですから」

 

「我々も手伝おうか?」

 

 

 カナ一人だけに良い思いをさせたくないという気持ちと、少しでもタカトシの負担を減らせればという気持ちから申し出たのだが、タカトシは首を横に振り私の申し出を断った。

 

「それでは、俺は買い出しとかありますのでお先に失礼します」

 

「私も。コトミちゃんが戻ってきたらみっちり勉強させなければならないのでこれで失礼します」

 

 

 タカトシとカナの背中を見送った私は、隣で黙って二人を見ていたアリアと萩村に声を掛ける。

 

「親戚関係になってカナは脱落したのかと思ってたら、親密度が増してないか?」

 

「サクラちゃんやカエデちゃんに迫る勢いで仲良くなってたね」

 

「……勉強くらい私がみてあげるのに」

 

 

 この中でアリアはタカトシとキスをしてるからまだいいが、私と萩村はいよいよ慌てなければならない感じになってきてしまったな……




ウオミーが物凄いスピードでタカトシと親しく……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。