桜才学園での生活   作:猫林13世

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ちょっとでは無いかもしれませんが……


ちょっとした問題

 山菜採りの途中で雨が降ってきてしまったので、七条家が保有する別荘へと避難した私たちは、天候が回復しなかったためこのまま一泊する事になった。

 

「いや~、結構降られてしまったな」

 

「皆様、お風呂の用意が出来ました」

 

「ありがと~」

 

 

 七条家専属メイドである出島さんが、お風呂の用意をしていてくれたようで、私たちは全員でお風呂に入ることになりました。

 

「それじゃあ、皆さんがお風呂に入ってる間、俺はあく抜きしてますね」

 

「なんだったらタカ君も一緒に入る?」

 

「なっ!? おいカナ!」

 

「それはさすがに恥ずかしいよ~」

 

 

 親戚関係になってから、カナ会長がかなり積極的にタカトシさんとの触れ合いを増やそうとしている気がするのですが、さすがに今回は積極的というよりは無謀ですね……

 

「後でゆっくり入りますから、皆さんはどうぞごゆっくり」

 

 

 そう言ってカナ会長の提案を退け、タカトシさんは山菜のあく抜きを始めました。

 

「それでは、ご案内します」

 

「分かってるとは思うが、畑」

 

「何でしょう?」

 

「防水カメラなど持ち込んだら、後でタカトシに説教してもらうからな」

 

「そんなことしませんよ」

 

「お嬢様、畑様が仕掛けたと思われる監視カメラの撤去は既に済んでおりますので」

 

「何故バレた……簡単にバレるような箇所には仕掛けてないのに……」

 

「貴女と私とでは、経験が違いますので」

 

 

 何の経験かは兎も角、この人もタカトシさんに怒ってもらった方が良いのではないでしょうか……

 

「ところで出島さん。この別荘ってそんなに部屋、多くなかったと思うんだけど」

 

「寝泊まりが出来る部屋は二つ、その部屋に二段ベッドが二つありますので、八人まで宿泊可能です」

 

「八人……? 私にアリア、萩村にカナ、コトミに森、畑に出島さん……ピッタリだな」

 

「えぇ……タカトシを除けば、ですがね……」

 

 

 萩村さんが零した言葉に、全員がフリーズしたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調理を済ませてテーブルに並べていると、皆さんが風呂から出てきた。だがその表情は何処か浮かない感じが見て取れたのだった。

 

「何かあったんですか?」

 

「いや、この天気じゃここに泊まるしかないだろ?」

 

「そうですね。無理に下山して怪我でもしたら大変ですし」

 

 

 それがどうかしたのかと、視線で尋ねると、アリアさんが申し訳なさそうに口を開いた。

 

「この別荘ね、八人分しかベッドが無いのよ」

 

「八人、ですか……」

 

 

 今風呂から出てきたメンバーが八人、そこに俺を足すと合計で九人だ。一人分のベッドが足りない事になる。

 

「困りましたね……選び放題じゃないですか」

 

「何故貴女が選択権を持っているのかが不思議なのですが……」

 

「アリアが出島さんと一緒のベッドで寝るのは駄目なのか?」

 

「さすがの私でも、あのベッドに二人で寝る勇気はありませんね……どこまで我慢出来るか分かりませんし」

 

 

 この人が何を我慢するのか、聞くだけ無駄なので流す事にして、とりあえず食事にすることにした。

 

「さっすがタカ兄、今日も美味しそうだね~」

 

「コトミちゃんは緊張感が無いですね」

 

「最悪、私とお義姉ちゃんが抱き合って一つのベッドで寝れば解決ですからね~」

 

「さすがの私も、義妹には手を出しませんよ?」

 

「私も同性愛者じゃないですけどね~。別にお義姉ちゃんがそのつもりなら、私は受け入れますけど」

 

「馬鹿な事言ってないで、大人しく食え。てか、俺がこの部屋で寝ればいいだけの話でしょうが」

 

 

 女性八人でベッドを使い、俺は椅子でも並べて寝ればそれで十分だし。

 

「そんなこと出来ないよ! タカトシ君がこの部屋で寝るなら、私がここで寝る!」

 

「いえ、お嬢様にそのような事をさせたと知られれば、私が旦那様に叱られてしまいます。ここはダメっ子メイドの私がこの部屋で――」

 

「別に報告するわけでもないんですし、お二人が気にする事はありませんよ。最悪、座ったままでも寝れますし」

 

 

 下手に同室で寝て、畑さんに在らぬ噂を流されるのも面倒だしな。八人分のベッドがあるなら、女性に使ってもらった方が全員安全だろう。

 

「大丈夫なの? ただでさえアンタは普段から無理してるのに」

 

「別に一晩くらい寝なくたって大丈夫だって。それに、なんとなく身の危険を感じるしな」

 

 

 視線を出島さんに向けると、他のメンバーも出島さんに視線を向けていた。

 

「そんなに見られると恥ずかしくて濡れてしまいます」

 

「そうね……それじゃあタカトシには悪いけど、誰がどの部屋を使うか決めましょう」

 

「桜才生徒会メンバー+出島さん、私とサクラっち、コトミちゃんと畑さんの組み合わせでどうでしょう?」

 

「それが一番無難か」

 

 

 出島さんとコトミが逆ではないかとも思ったが、カナさんとコトミはそれなりに仲が良い義姉妹だしな。一緒の部屋でも問題ないか……見事にツッコミが一人に対してボケが三人の部屋割りなのは気にしないでおこう。

 

「タカトシ様、せめて布団をお使いくださいませ」

 

「あぁ、あるんですね」

 

「掛け布団だけですが……」

 

「それがあれば十分です」

 

 

 まだ夜は寒いからな、布団があるだけでも結構違うだろう。

 

「てか、畑が不法侵入してなければ、このような事は起こらなかったんだぞ」

 

「私だって、山の天気には敵いませんから」

 

 

 シノ会長が畑さんを怒ってるけど、どちらにしろ俺はベッドを使わなかったと思うんだがな……




わいわいがやがやは無しで……

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