期末試験前日、勉強してく為に学校に残ろうとして食堂に向かったら、三葉が昼食を摂っていた。
「三葉の飯、随分と質素だな」
「金欠でね……あっ!」
何か思い出したような声を出して、三葉がジッと俺の事を見てくる……何か顔についてるのか?
「男の子をおかずにすると体が満たされるって聞いたけど、そうでもないね」
「多分『体』じゃなくって『身体』だと思うが……誰から聞いた?」
大体三人くらいは想像つくんだが……あっ、もう一人居た。
三葉と別れて生徒会室に行くと、七条先輩が食事をしていた。相変わらず豪勢な弁当だな。
「津田君も一口いかが?」
「良いんですか?」
「もちろん! はい、あ~ん……」
恥ずかしいが、別に誰も居ないので気にする事も無いか……そう思って口を開けたら、丁度同じタイミングで扉が開いた。
「………」
「………」
「津田君、如何だった? 私が舐ったお箸は?」
「感想聞くのそこ!? あと箸は舐るな!」
会長と目が合って気まずかった空気が、別の意味で気まずくなった……
「アリア、手皿は一見上品だがれっきとしたマナー違反だからな。気をつけるように」
「会長もツッコム箇所が違うような……まぁ良いか」
下手にツッコんで墓穴掘るのも馬鹿らしいし……
「でもシノちゃん、○液だと妖艶さが増すと思うのだけど」
「……論破されてしまった」
「他にツッコムところあるでしょ。あと、生徒会室でそんな話をするな!」
「同感ね」
「萩村……」
居たのに全く気付かなかった……寝てたのかな?
「何よ?」
「いや、別に……」
「そう……これはあの資料が要るわね」
そう言って棚の中を物色しようとした萩村だったが……
「んー!」
「スズちゃん、私が取ろうか?」
「大丈夫です……あっ!」
手が届いたのだが、上に乗っていた箱が滑って七条先輩目掛けて落ちていく……
『ポヨン、ガン!』
七条先輩の胸で跳ね返った箱は、萩村の後頭部に直撃した。あれは痛いぞ……
「あ、あの……」
「大丈夫です……自業自得ですから」
「でも……」
「七条先輩の優しさに甘えればよかったんです……会長だったらこんな思いはしなかったでしょうが……」
「ケンカウッテンノカー!」
「何故片言!? あと萩村もその目は止めた方が……」
完全に会長に喧嘩売ってるような目をしてたので、俺は軽く注意しておいた。こんなんで明日のテスト、大丈夫かな……
心配してたテスト期間も無事終わり、今日からまた部活が再開するようなので、生徒会で柔道部の見学に行く事にした。
「三葉、やっぱり大会とか出るの?」
「もっちろん! 大会で優勝して名を上げて、皆でオリンピックで金を取ろうって誓い合ってます!」
「素晴らしい団結力だな!」
「感動したよ~!」
良い話なんだろうが、階級とか一緒じゃないのか?
「三葉、あれは何だ?」
「あれは腹ばいと言って、腹を地に着けて手足で移動するトレーニングです」
「キツそうだな……」
「そうですね……」
あれは筋肉付きそうだな……
「津田がやったら、きっと摩擦でイってしまうだろうな」
「そう言う話してんじゃねぇよ!」
トレーニングの話なのに、何でそっちに話を持っていきたがるかな会長は……
「でも、津田君ならあれくらいじゃイケないんじゃない?」
「何故だ、アリア?」
「だって毎日やってれば……」
「いい加減にしろ!」
最近この二人に拳骨を喰らわせる事が多くなってきたような……
「君、津田君だよね?」
「え、あぁそうだけど……確か中里さんだっけ?」
「良く知ってるね」
「まぁ一応は……でも、そっちだって俺の事知ってるじゃんか」
「だってムツミが良く君の事話すから……」
三葉が? 何を話してるのか気になるが、今はそれどころでは無い。
「タカトシ君は気にしないでね」
「分かったから、そろそろ離してやって。死んじゃうから」
首を極められた中里は、今にも死にそうな顔で俺に助けを求めてきたのだった。この部活も色々ヤバイな……
「津田、あっちの二人の処理は任せるわよ?」
「あっちの二人? ……ゲッ!」
拳骨を喰らわせた二人が、何故だか嬉しそうな顔してコッチに向かってきた。あれはヤバイ、逃げなくては!
「あっ、逃げたぞ!」
「津田く~ん! もっと強く殴っても良いんだよ~!」
デカイ声で余計な事を言うな!
「きゃ!」
「あっと、スミマセン」
逃げていたら誰かとぶつかってしまった……怪我とかしてないよな?
「つ、津田君!?」
「あっ、五十嵐さんでしたか。スミマセン、急いでるのでこれで!」
「え、ちょっと!?」
「アリア、あっちだ!」
「待ってよ津田く~ん!」
「あ、そう言う事……」
背後から追いかけてくる二人と、妙に納得したような感じの五十嵐さんの声が聞こえてきたが、今はそれどころでは無いのだ。
桜才学園では、試験の結果が張り出されるのだ。そして生徒会役員のノルマとして、学年20位以内に入らなければ、ある事無い事言いふらされるそうなのだ……これが伝統だったら嫌だな……
「津田ー結果見に行こうぜ!」
「自信あるのか?」
「900点満点だろ? 半分くらいは取れてると思うぜ?」
「それって駄目じゃね?」
900の半分じゃ450だぞ……それで満足するなよな。
「おっ、あったあった」
廊下に張り出された紙に大勢の生徒が群がっている。上位50人しか名前が載ってないのに、皆興味あるんだな……
「おい、あれお前の名前じゃね?」
「どれ?」
「あれ!」
柳本が指差す先には……
1位萩村スズ 897点
2位津田タカトシ 856点
3位轟ネネ 848点
「頑張った甲斐があったよ」
萩村には負けたけど、前回2位の轟さんには勝てたようだ。でも、900点満点で897点って、どれだけ頭が良いんだよ萩村は……
「あっ、柳本の名前もある」
「何!?」
「ほら」
俺が指差した先には……
補習生徒
・
・
柳本ケンジ
・
・
「ウゲ!」
「頑張れよ」
赤点補習の生徒の欄に、柳本の名前があったのだ。半分も取れなかったって事だな……哀れなり。
「津田、アンタやれば出来るのね」
「萩村には勝てないけどね」
結果を見に来ていた萩村が、話しかけてきたが、如何やればあんな点が取れるんだか……ん?
二年結果
1位天草シノ 890点
2位七条アリア 885点
3位五十嵐カエデ 867点
……俺の知り合いは化け物ばかりだった。もっと頑張ろう……
タカトシ頑張った! でも生徒会メンバーには勝てない……