桜才学園での生活   作:猫林13世

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あのモノマネは凄かったな……


アトラクション試乗バイト その2

 アトラクション試乗のアルバイトも半分が終わり、今回はウォータースライダーの安全性のチェックだそうですが、誰一人水着を持ってきていなかったので、出島さんが滑るのをただただ見る事になりました。

 

「安全性のチェックとはいえ、あれだけ滑ったら皮が剥けそうですね」

 

「そう言う事が無いかもチェックしてるから大丈夫だよ~。それに、出島さんにとってそれくらいならご褒美で済むだろうし~」

 

「その言葉で片づけていいのだろうか……」

 

 

 タカトシさんの言葉に、私と萩村さんは頷いて同意しましたが、他のメンバーは特に気にした様子もなく滑っている出島さんを眺めていました。

 

「とりあえず、これが終わったらまたみんなで乗れるアトラクションのチェックになるから、今はゆっくり休んでね~」

 

「まぁ、本人が気にしてないなら、俺たちが気にする事ではないのかもしれませんがね……」

 

 

 力なく呟くタカトシさんの背中を、妹のコトミさんが軽く叩いて何かを囁いていました。

 

「お前は本当に……まぁ、大声で言わなくなっただけ成長したのかもしれないがな」

 

「えへへ~。これでも成長してるのだよ!」

 

「後は心の裡に留められるようになればいいんだがな……」

 

 

 どうやらろくでもない事を言ったようだと、タカトシさんの表情とため息から理解した私たちは、何を言ったのかを確認することなく出島さんのチェックが終わるまでの時間を過ごしたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すべての試乗を終えて、我々はアルバイトの報酬として、豪華なディナーをいただくことになった。

 

「美味しそ~」

 

「がっつくな! 量はあるんだから、とりあえずは落ち着け」

 

 

 報酬に飛びつこうとしたコトミの襟首を掴んで落ち着かせたタカトシが、ため息を吐きながら出島さんに頭を下げていた。

 

「何か手伝いましょうか?」

 

「いえ、本日は七条家が皆さんをお誘いしたのですから、最後まで七条家の人間である私がご奉仕させていただきます。ご希望でしたら、夜のご奉仕も――」

 

「結構です」

 

 

 出島さんの申し出をまったく躊躇なく断ったタカトシは、疲れた顔で出されたジュースを飲み始めた。

 

「最近思うんだが、タカトシって枯れてるんじゃないか?」

 

「そんな事ないと思うけどな~。ところでシノちゃん、そんなこと言ってるとタカトシ君に怒られちゃうわよ」

 

「聞こえなければ問題ないだろ。それに、今日は無礼講だろ?」

 

「まぁ、シノちゃんが気にしないならいいんだけどね」

 

「最近は大人しくしてるんだから、こういう時くらいは良いだろ」

 

 

 タカトシは読心術も読唇術もどっちも使えるから、あまり意味は無いかもしれないが、小声なら問題ないだろ。

 

「そうだ、今度正式にオープンしたらまた遊びに来ようじゃないか!」

 

「そうだね~。今日はウォータースライダーとか、遊べなかったアトラクションもあるからね~。その時はまたウチが招待するから、思いっきり楽しんでね~」

 

 

 アリアと次の計画を練りながら、報酬のディナーを楽しむことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出島さんに家に送ってもらい、リビングで寛いでいたら、コトミが今日の感想を言い出した。

 

「タダで色々乗れて楽しかったね~」

 

「アルバイトとはいえ、楽しめたのは良かったな」

 

「タカ兄は真面目だね~。私は途中からアルバイトって事を忘れて楽しんでたよ~」

 

「お前は……」

 

 

 まぁ、誰かを相手にする仕事ではなかったし、コトミが気を張って安全面を確認する必要も無かったからな……

 

「このアルバイトのお陰で、新しい経験が出来たしね~」

 

「? コトミなら全部のアトラクションに乗った事あったんじゃないか?」

 

 

 子供の頃や、友達と出かけた時に大抵のアトラクションに乗ったことあるだろうし、新しい経験をする機会などあっただろうか……?

 

「実は、ジェットコースターでパンツ濡らしまして。そこから家までノーパンでした。新しい快感に目覚めました」

 

「黙れ小娘!」

 

 

 なんかそわそわしてると思ったが、まさかそう言う事情だったとは……

 

「会長より先に進んじゃったよ~」

 

「小声で言うだけ成長したと思ったが、全くしてなかったな……」

 

「さすがに人前では言えないよ~。タカ兄相手だから言えるんだよ、ノーパンだって」

 

「くだらない事言ってないで、先に風呂に入って着替えてこい」

 

 

 コトミを風呂に追いやって、お茶を淹れてのんびりする事にした。

 

「遅刻や赤点、下ネタと……コトミの問題は山積みだな……」

 

 

 勉強はカナ義姉さんが面倒を見てくれてるから、多少なりとも成長してるし、人前で大声で下ネタを言わなくなっただけ成長してるんだろうが、何故俺の前では相変わらずなのか……普通この年代の異性のきょうだいは、少なからず距離を取りたがるんじゃないだろうか……

 

「両親が出張ばかりで、反抗期が無かったってのも関係してるんだろうか……」

 

 

 親がいないと、年上のきょうだいにぶつける事があると聞いたことがあるが、コトミはそんなこと無かったんだよな……だが、異様にべったりしてくるのが問題だとは思うんだよな……

 

「とりあえず、高校卒業までには、まともになってくれることを願うか」

 

 

 そう結論付けて、少し冷めてしまったお茶を啜り、コトミが風呂から出て来るまでまったりすることにするか。




コトミの問題はまだありますしね……

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