桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミは役に立ちませんからね……


お手伝い

 生徒会の業務を終えて帰宅する途中で、今日の献立を考える。コトミがまったく料理が出来ないのは今に始まった事ではないが、こういう日に誰か代わりに料理をしてくれればと思う事がたまにあるのだ。

 

「まぁ、コトミに任せたら楽が出来るどころか、精神的にも苦労するだけだがな……」

 

 

 自分の考えに苦笑いを浮かべ、少し早足で家路を進む。コトミの事だから、お腹すいたとか言って玄関で待ち構えてるかもしれないな。

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい、タカトシさん」

 

「サクラさん? 何かあったのですか?」

 

「いえ……」

 

「お帰りなさい、タカ君。ごはんにする? お風呂にする? それとも――」

 

「それ以上は言わなくていいです。なるほど、カナさんに連れてこられたのですね」

 

「タカ君、お義姉ちゃんでしょ?」

 

 

 カナ義姉さんの指摘は無視して、サクラさんが家にいた事情を把握したので、申し訳ない気持ちから頭を下げた。

 

「義姉が迷惑を掛けたようで、申し訳ありません」

 

「いえいえ、カナ会長との付き合いは、タカトシさんよりも私の方が長いですから」

 

「タカ君もサクラっちも無視は酷くないかな? せっかく疲れてるであろうタカ君の代わりに夕ご飯の支度をしに来たって言うのに」

 

「それはありがたいのですが、コトミはどうしました?」

 

 

 家に気配が無いので、帰ってきてないのだろうが、一応義姉さんにコトミの所在を尋ねる。

 

「コトミちゃんなら、今日は遅くなるってメールで言ってきたわよ。ほら」

 

「何故俺ではなく義姉さんにメールしたんですかね?」

 

「だって、コトミちゃんからタカ君の代わりにご飯を作ってほしいって頼まれたんですから」

 

「何故そのような事を?」

 

 

 確かに毎日用意するのは面倒だとは思ったりもするが、コトミに考えを見透かされたとは思えないしな。

 

「とりあえずタカ君はゆっくりとしていてください。私とサクラっちで美味しいごはんを用意しますから」

 

「何だか納得は出来ませんが、お願いします」

 

 

 コトミの真意は兎も角として、用意してくれるならそれは普通にありがたいからな。余計な事をしなければ、カナさんも文句なしの家事スキルの持ち主だし。

 

「大丈夫です、余計な事をしようとしたら全力で止めますので」

 

「サクラさんがそう言うなら安心ですね」

 

「ちょっとタカ君。それじゃあまるで、私一人だと安心出来ないって聞こえるんだけど?」

 

「安心出来るとでも思ってるんですか?」

 

 

 過去に色々としてきたんだから、そう思われて当然だと思うんだがな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシさんが自室に戻って課題をすると言い残して、キッチンには私と会長の二人だけになってしまいました。普段なら別におかしくないのですが、タカトシさんの家で二人きりになるのは、ちょっと不思議な気分です。

 

「タカ君の為に料理をするのは、今のところ私だけの特権だったんですけどね」

 

「そうなのですか? 天草さんとかもしてたようですけど」

 

「まぁ、シノっちは出遅れ感が半端ないので気にしてませんけど」

 

「何の話ですか?」

 

「分かってるくせに」

 

 

 ここで分からないフリをすることは私には出来ませんでした。確かに天草さんは出遅れ感が凄いですが、彼女のポテンシャルをもってすれば、これくらいはハンディの内で済んでしまうのではないかという恐ろしさが彼女にはあるからです。

 

「シノっちのことは置いておくとしても、タカ君の周りには強力なライバルになりうる存在が大勢いますからね」

 

「五十嵐さんは結構強そうだとは思いますよ」

 

「まぁ、アリアっちより先にタカ君とキスしてますからね。サクラっちは更に先にキスしてますし、二回目もありましたからね」

 

「あれは二回とも私の意思ではありませんので、睨みつけるのは止めてください」

 

 

 一回目は溺れかけた私を落ち着かせるために、二回目は完全な事故チューだったので、気持ちはどうあれそこに私の意思は介在していない。だからカナ会長にここまで睨まれる覚えは無いのですけどね。

 

「いくら私にNTR属性があるとはいえ、あれは殺意を覚えずにはいられませんでしたよ」

 

「そんなことはどうでも良いですが、キスで殺されたら堪りませんよ」

 

「本気でサクラっちの唇を奪って、タカ君と間接キスをしてやろうかとも思ってましたけどね」

 

「何それ怖い……」

 

 

 カナ会長の事ですから、冗談ではない可能性の方が高いわけですからね……私は身の危険を感じでカナ会長から距離を取りました。

 

「さすがに今は思ってませんよ。それに、タカ君との間接キスのチャンスなら、かなり増えましたからね」

 

「いったい何をするつもりですか!」

 

 

 確かにタカトシさんの家に入り浸る口実がカナ会長にはありますし、一緒に食事をする機会も増えたでしょうけども、それだけは認める訳にはいきませんからね。

 

「さすがに私だって命は惜しいですから、そんなことはしませんけどね」

 

「そうしてください。カナ会長にいなくなられたら、英稜の生徒会は空中分解しますので」

 

「サクラっちがいてくれれば大丈夫だと思いますけどね」

 

 

 会長に評価してもらってる事は嬉しいですが、さすがに私ともう一人とでは仕事が終わらないと思いますけどね。




ウオミーなら何かやらかしそうですがね……

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