桜才学園での生活   作:猫林13世

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さすが無自覚ラブコメ野郎……


不意な一言

 最近スクープが無いので、何かないかと校内を歩き回っていると、津田副会長と七条さんが二人きりで歩いているのを見かけた。これは何かあるかしら……

 

「――というわけなのですが、アリア先輩はどう思われます?」

 

「知名度があるのは良いけど、あまり興味ないかな~」

 

「そうですか。俺としては自分で伝えろとは言ったんですがね」

 

「私って話しかけ辛いのかな~? あんまり男子から声を掛けられないんだよね」

 

「とっかかりが難しいのでは? 俺は生徒会役員として関係がありますが、他の男子は全員下級生ですし、先輩の美しさに後退ってるのかと」

 

 

 歯の浮くようなセリフを素面で、さすが津田副会長……七条さんが顔を真っ赤にしてるのに首を傾げてるなんて、無自覚ラブコメ野郎の称号を与えるしかなさそうですね。

 

「何してるんですか?」

 

「あら、風紀委員長。今津田副会長が七条さんを辱めてたんだけど、どう思う?」

 

「津田君が? 何を言ったんですか?」

 

「七条さんの事を『美しい』と」

 

 

 言ってるこっちが恥ずかしくなってきましたが、聞いた風紀委員長の方が顔が真っ赤になってますね。

 

「おんや~? 自分が言われたらとか思っちゃいましたか~?」

 

「そ、そんなこと思ってません!」

 

「さっきから何を大声を出してるんですか?」

 

「あら、見つかっちゃった」

 

「いえ、最初から気づいてますが」

 

 

 風紀委員長の大声に反応した津田副会長と、少し顔を赤くしたままの七条さんが近づいてきたので、私は何の話をしていたのかを聞くことにした。

 

「それで、どういう流れで津田副会長は七条さんの事を『美しい』と言ったのですか?」

 

「クラスメイトがアリア先輩に恋慕してるんですが、勇気が出せないから代わりに想いを伝えてくれと言われただけです」

 

「なるほど……ですが、本人が伝えなければ意味がないと思うのですが」

 

「俺もそういったんですけどね。ほら、アリア先輩は会長みたいに気さくに話しかけられる雰囲気ではないですからね」

 

「つまり、津田副会長も天草会長<七条さんだと?」

 

「別に優劣は付けませんけど、会長は話しかけやすい雰囲気を醸し出してますけど、アリア先輩はお嬢様ですから、住む世界が違うと勝手に思い込む生徒は少なくないと思いますよ」

 

 

 確かに、七条グループのお嬢様で、美人で巨乳、最近は下ネタを控えているので変人オーラも出てないですし、話しかけずらいというのは分かりますね。

 

「それで、カエデさんが大声を出した理由は?」

 

「自分が美しいと言われた妄想をしてたので、ちょっとからかっただけです」

 

「だからしてません!」

 

 

 他の人ならスクープにでっちあげる――じゃなかった、話題になるのですが、この二人は津田副会長とブチューっとしてる人ですからね。今更この程度では読者は喜ばないでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシ君のお友達には悪いけど、そのお陰でタカトシ君に「美しい」って言われたのはすごくうれしい。タカトシ君はお世辞を言うような子じゃないって分かってるから余計に嬉しいんだけどね。

 

「お嬢様、何か良い事でもあったのですか?」

 

「んー? 分かる、出島さん」

 

「はい。何時もより笑顔がまぶしいですので」

 

 

 それほど変わってるとは思わないけど、私の事をよく見てくれている出島さんがそう言うって事は、たぶん何時もと違うんだろうな。

 

「今日ね、タカトシ君に『美しい』って言われたんだ~」

 

「タカトシ様がですか? それはお嬢様にとって最高の褒め言葉となりましたね」

 

「タカトシ君はお世辞言わないし、話の流れとはいえ言われて嬉しかったのは確かだしね」

 

 

 特に意識した言葉ではないから、それが本音だという事が良く分かる。タカトシ君のお友達がそう思ってるだけなのかもしれないけど、タカトシ君の口から「美しい」と言われたことに変わりはないから、一日中気分よく過ごせたんだろうな~。

 

「録音していなかったのですか?」

 

「身構えてたわけじゃないし、言われてすぐに絶頂しちゃったからね」

 

「なるほど。タカトシ様に言葉責めされたのですね」

 

「タカトシ君にそんなつもりは無かったんだろうけどね。でもまぁ、無自覚攻めも悪くないって思えたわ」

 

 

 下ネタはタカトシ君の前では控えてるけど、タカトシ君がいない場所では前以上に酷くなってきたと自覚している。でも、これはタカトシ君の所為。我慢した分だけどこかで爆発させないとストレスが溜まっちゃうからね。

 

「次言われる機会がありましたら、ぜひ録音する事をお勧めします」

 

「そうだね~ 着ボイスにしたら、メールや電話が来るたびに絶頂出来るもんね~」

 

「言ってもらえるように、私が差し向けてみましょうか?」

 

「タカトシ君を誘導できるの?」

 

「これもメイドの務めですので」

 

「それじゃあ、今度のテニスの時にでもお願い出来る?」

 

「かしこまりました。成功した暁には、ご褒美をこのメイドに」

 

「ん~? ムチとかでいいかな~?」

 

「もちろんでございます」

 

 

 興奮しながらもしっかりと運転してくれた出島さんにお礼を言って、私は部屋で着替える事にした。

 

「あっ、パンツがぐしょぐしょになってる」

 

 

 これも全部タカトシ君の所為だね。でも、全然嫌じゃないと思ってる辺り、私ってやっぱりMなのかなぁ……




言われたら嬉しいんでしょうかね?

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