定期試験も無事終わり、我々生徒会役員も一息つくことにした。
「そういえばタカトシ、コトミの奴は大丈夫だったのか?」
「えっ? あぁ、なんとかなったとか言ってましたよ」
「てか、アンタが時さんと一緒に面倒見てあげたからでしょ?」
「最後までは教えてないけどな」
前日までコトミの相手をしなかったタカトシだが、最終的にトッキーと一緒に泣きつかれて勉強を見てやったらしい。それでいて自分は全く問題ないような雰囲気を出している辺り、私の跡を継ぐと噂されているだけはあるな。
「せっかくだしどこかに寄っていきましょうよ」
「待てアリア! 寄り道は校則違反だ! 我々が率先して校則を破るわけにはいかない」
「そうですね」
タカトシが頷いたのを受けて私たちは――
「では、これより遊びに行くぞ!」
「一回帰って着替える手間は必要だったんですかね……」
――着替えて再び集まったのだった。
シノちゃんの提案で、まず私たちはカナちゃんのバイト先であるファストフード店を訪れた。
「いらっしゃいませ」
「カナ、今日はバイトだったのか」
「YES! 見たところ皆さんは女子会ですか?」
「俺は男ですが」
「しまった! タカ君に女装させて男の娘にする計画が……」
「この前も聞きましたが、そんな恐ろしい事を考えないでくださいよ……」
確かにタカトシ君とコトミちゃんは顔が似てるし、タカトシ君が女の子の格好しても似合うかもしれないわね。
「タカコちゃんにするの?」
「アリア先輩もおかしなことを言わないでください」
タカトシ君に睨まれて、私は思わず見悶えてしまった……だって、タカトシ君に蔑まれると興奮しちゃうんだもん……
「ところで、アリア先輩ってジャンクフード食べるんですね」
「こんなに美味しいのにジャンクだなんて、おかしくないかな?」
「まぁ、世の中にはジャンク扱いされて喜ぶ人間もいるからな」
「なるほどね」
「それで納得するのはおかしい……」
シノちゃんと二人纏めてタカトシ君に蔑みの視線を向けられた。それにしても、タカトシ君にゴミ扱いされたら興奮するかな……それともショックを受けるかな……
「この後どうします?」
「タカトシは予定ないの?」
「コトミも遊びに行ったからな。夕飯の買い出しは済ませてあるから、特に予定はないぞ」
「相変わらずの主夫発言……アンタ結婚する必要なさそうよね」
「まぁ、一緒にいて苦にならないなら結婚してもいいかなとは思うけどね」
なんかすでに落ち着いてるわよね、タカトシ君って……
「たまにはカラオケでも行くか」
「カラオケですか」
「私は構いませんよ」
タカトシ君もスズちゃんも歌上手だもんね……
「アリアは乗り気じゃないようだな?」
「そんな事ないけど、このメンバーだと私が一番下手だからさ」
「アリア先輩も上手だと思いますが」
「そう? ありがとう」
タカトシ君に上手だって言われて気分が良くなったので、私もカラオケに賛成したのでした。
随分と久しぶりにカラオケにやってきたが、相変わらず先輩たちやスズは歌が上手いな……
「カエデさんがスカウトしたくなる気持ちは分からなくもないな……」
「次、タカトシの番よ」
「あぁ……ん?」
考え事をしていたら、いつの間にか俺の番になっていた。てか、俺の歌なんて聞いても楽しくないと思うんだけどな……
「タカトシ君、良かったらデュエットしない?」
「アリア先輩とですか? 構いませんが……」
何故か背後でスズとシノ先輩が頬を膨らませてるんだが、何があったんだよ……
「そういえばスズ、何でそんなに汗だくなんだ?」
「必死に歌ってたからね~」
「汗だくの萩村か……売れるな」
「売るな!」
何だか最近会長たちの我慢が解かれたような気もしないでもないが……まぁ、以前と比べればだいぶマシになってるからな……これくらいで手を挙げるのは止めておこう。
「タカトシ、アリアの後は私とデュエットだ!」
「シノ会長も? まぁ別に構いませんが……」
「私も!」
「スズもか? 先輩たちでデュエットすればいいのでは?」
「アンタとじゃなきゃ意味が無いのよ!」
「お、おぅ……すまん」
何で怒られたのか分からないが、スズだけ除け者にするわけにもいかないしな……てか、俺は三曲続けて歌わなければいけないのか?
「それじゃあタカトシ君、どの曲が良い?」
「先輩が歌いたい曲で構いませんよ。たぶん歌えると思いますので」
最近の曲はあまり知らないけど、聞いたことあるだろうし歌えるだろう。
「(そういえば最近、スズやシノ先輩のアピールが露骨になりつつあるんだよな……何が原因だ?)」
二人のアピールが露骨になってきた時の事を想い返し、何が原因かを探ってみる。
「(あれか? 奴隷ゲームの時以降か?)」
シノ会長の発案で最後の罰ゲームがキスになり、結局俺とサクラさんがキスしたんだよな……それ以降シノ会長とスズの視線が鋭くなったり、急に情緒不安定になったりして……
「(別に俺から発案した訳でも、サクラさんが発案した訳じゃないんだから、俺たちに不満をぶつけるのは間違ってる気もするんだがな……)」
そんなことを考えながら、俺はデュエット曲を三曲続けて歌ったのだった。
タカトシ男の娘計画、失敗……