桜才学園での生活   作:猫林13世

296 / 871
正論は数の暴力で押しつぶされる……


釣りの裏技

 アリアっちに誘われて、二泊三日の無人島ツアーに参加する事になった。運よくシフトを抜けることが出来たので、私もサクラっちも、そしてタカ君も参加することが出来たのだ。

 

「本日は七条家所有、無人島二泊三日ツアーにご参加いただき、誠にありがとうございます。今回のツアーガイドを務めます、メイドの出島サヤカです。よろしくお願いします」

 

「出島さーん」

 

「あぁ、お嬢様!」

 

 

 相変わらずアリアっちにメロメロな出島さんの挨拶が終わり、私たちはまず拠点を決める事にした。

 

「シノっち、どの辺りを生活拠点にするか考えていますか?」

 

「あまり遠くにしない方が良いだろう。いっそのこと、この辺りを拠点として、食材を探した方が良いと思う」

 

「なるほど」

 

「ところで、この辺りには野獣とかいないですよね?」

 

 

 心配そうに確認するサクラっちを見て、思わず笑いそうになりましたが、確かに重要な事なので出島さんに確認する事にしました。

 

「いますよ」

 

「えぇ!?」

 

「といっても、女に飢えた野獣――すなわち、私です!」

 

「寝る時この人は縛っておいた方が良いですね」

 

「やったー!」

 

「……あれ?」

 

 

 タカ君が縛る発言をすると、出島さんの反応はあからさまに喜んでいたので、シノっちが首を傾げました。

 

「そういえば、このテントって何人で使うんですか?」

 

「この大きさなら、三人で余裕ですね」

 

「つまり、タカ君を真ん中に二人が至福の時間を過ごせる、という事ですか」

 

「ん? 何で俺が真ん中なんですか?」

 

 

 私の発言に疑問を抱いたタカ君だったが、他のメンバーは誰一人疑問を抱かなかったようだ。つまり、理解出来なかったのはタカ君だけ、という事ですね。

 

「ここは公平にくじと行きたいところですが、コトミちゃんと私がタカ君と同じテントでどうでしょう?」

 

「おいカナ! 抜け駆けは感心しないぞ」

 

「ですが、コトミちゃんは実妹、私は義姉ですからね。義姉弟妹仲良く過ごすのが一番健全だと思いますが」

 

「一般論で言えばそうだが、お前たちは不健全だから却下だ」

 

「てか、俺とコトミで一つ使って、残りを六人で使えば良いじゃないですか」

 

 

 タカ君が気づいてしまったが、私たちは八人でテントは一つ三人まで。つまり三つ必要なのだ。タカ君とコトミちゃんで使えば、確かに問題なく済むだろう。

 

「こんな事もあろうかと、四人用のテントもご用意しております」

 

「じゃあ、タカトシ君と一緒に寝られるのは三人だね」

 

「何でそうしたいんですか……」

 

 

 タカ君は不満そうだったけど、結局四人用テントを二つ使う事に決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰がどのテントを使うのかは、一旦置いておき、我々は食材を求めて川にやってきた。

 

「上手く釣れないな……あっちの二人は大漁だというのに……」

 

「コトミちゃんもすごいけど、タカトシって何でも出来るんですね……」

 

「あの兄妹は意外と凄いですからね……」

 

 

 我々の釣果は芳しくないのに対して、津田兄妹の釣果は凄い事になっている。あれだけあれば今日一日食うに困らないだろうが、このままゼロで終わるのはなんだか悔しい……

 

「コトミよ。何かコツでもあるのか?」

 

「コツですか? 川から少し離れたところから竿を投げ入れてみてください」

 

「こう、か?」

 

 

 少し離れたところから投げ入れて数秒、カナの竿に当たりが来た。

 

「おぉ! 釣れました」

 

「魚は岸辺にいる事が多いので、人の気配を感じると出てこないんです。だから少し離れたところから竿を投げ入れれば、後は運次第というわけです」

 

「そうだったのか」

 

 

 コトミから教わった通り、確かに離れたところから投げ入れたら魚が釣れた。

 

「コトミ、ここは任せる」

 

「いいけど、タカ兄は?」

 

「食べられそうな野草が無いか探してくる」

 

「分かったー」

 

 

 タカトシは釣りを切り上げて林へと入っていく。同行者は誰もいなかったが、ここはあえて追いかけるよりも大人しくした方が好感度が上がるだろう。なぜなら、野草の知識など誰も持ち合わせていないからだ……

 

「ところで、森とアリア、出島さんは何処に行った?」

 

「その三人なら、火おこしを担当してるみたいですよ」

 

「火おこし? そんなに大変なのか?」

 

「マッチもライターも使えませんからね。出島さんとアリアっちが火おこし担当で、サクラっちはその監視みたいですけど」

 

「遊びながらだと危ないですからね」

 

「ところで、テントはどうやって決めるんですか?」

 

 

 カナが思い出したように尋ねてきたせいで、私たちの竿を握る手が少し震えてしまった。

 

「そんなに動かしたら釣れませんよ?」

 

「分かってるが、ちょっと動揺してしまったんだ……」

 

「タカ兄の安全を守るのならば、もう一つテントを建ててそこはタカ兄一人にするんですが、それじゃあ納得しませんしね」

 

「当然だ! せっかくのチャンスをみすみす手放すわけがないだろ!」

 

 

 ここ最近私はタカトシとの絡みが少ないし、森は三回目のキスをしたしで、私の心中は穏やかではないのだ。

 

「公平にくじ引きでもしますか? 砂浜にあみだくじを用意して」

 

「ですが、くじだとサクラっちが有利ですし」

 

「まぁ、森が確定でも後二人いるわけだしな。あみだでも構わないぞ」

 

 

 出来る事なら、私と誰か一人が当たればいいがな。狙って引くとろくな結果にならないから、選ぶときは無心でいよう……




大漁な津田兄妹……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。