桜才学園での生活   作:猫林13世

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人が増えても頼るのはタカトシ……


夜中の来訪

 思い返せば、タカトシが私の隣で寝ているなどという事が今まであっただろうか……恐らくあったかもしれないが、すぐに思い出せる中の記憶には無いな。

 

「(私のすぐ隣にタカトシが寝ている……これは長い夜になるかもしれないな)」

 

 

 最近は下ネタを自重しているが、根本的な所は変わっていない。そんな簡単に変われるなら苦労しないだろうし、ましてや相手はタカトシだぞ? 興奮しない方がどうかしているのではないだろうか。

 

「(まぁ、タカトシは隣が誰でも興奮しないだろうがな……)」

 

 

 時々枯れているのではないかと疑いたくなるくらい、タカトシは異性に興味を示さない。アリアやカナは女の私から見ても魅力的だし、あの胸で迫られたらすぐに陥落するだろうな。

 

「(そんなタカトシでも森の事は意識しているようだがな……まぁ、三回もキスした相手を意識しないのは、そっちの趣味を疑ってしまうがな)」

 

 

 タカトシが男色ではないかなど、死んでも口にすることは出来ない。そんなことを言えば、その時が私の命日になりかねないからな……

 

「(寝返りを打つふりしてタカトシの方を振り返っていいだろうか……あからさま過ぎないだろうか)」

 

 

 こういった展開になれていない私は、タカトシに背を向けて寝ている。もし振り返ってタカトシと目があったらどうしようとか、アイツもこっちに寝返りを打ってタイミングよく唇が接触してしまったらどうしようなど、いろいろと妄想している内に、そのまま深い眠りに落ちて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隣でシノ会長が悶々と何かを考えていたようだが、今は規則正しい寝息が聞こえてきている。いろいろと考え過ぎて疲れたんだろう……

 

「(てか、何で俺はこの位置で寝なきゃいけなかったんだろう……)」

 

 

 普通に考えれば、シノ会長の位置かカナさんの位置で寝るべきだろうが、相変わらず常識が通用しないんだよな、この人たちは……

 

「(ん?)」 

 

 

 テントの外に気配を感じ取り、敵意が無いのを確認する。どうやら外にいるのはスズのようだ。

 

「タカトシ、起きてる?」

 

「あぁ、起きてるけど」

 

「ちょっと出てきてくれない?」

 

 

 スズに呼び出され、俺は三人を起こさないようにゆっくりとテントから外に出る。

 

「どうかしたの?」

 

「私、もう我慢出来ないの!」

 

「なにが?」

 

 

 スズが何を我慢しているのか見当がつかなかったが、何やらもじもじとしているスズの姿を見て理解した。だが、何故男の俺を付き合わせるんだろうか……

 

「アリアさんや出島さんじゃ駄目だったの?」

 

「だって、絶対からかわれるし」

 

「コトミは?」

 

「鼾掻いて寝てるわよ」

 

「相変わらずだな……」

 

 

 どうやら本当にギリギリだったらしく、スズは駆け足でトイレに入っていく。月明りでそれほど暗くないんだから、一人で行けたんじゃないだろうか……

 

『タカトシ、そこにいる?』

 

「いるぞ。てか、置いて帰る程薄情ではないつもりなんだが?」

 

『そ、そうよね……でも、不安になっちゃうのよ』

 

「相変わらずだね、スズも」

 

『こればっかりは成長出来ないのよ……』

 

 

 怖いものが苦手、暗い場所が苦手、スズもやはり人間なんだな……まぁ、当然と言えば当然だけど。

 

「お待たせ」

 

「それじゃあ、早いところ戻るか。もしシノ会長かカナさんが起きて俺がいないことに気付いたら騒がしい事になるだろうし」

 

「私も。出島さんや七条先輩にからかわれちゃうし」

 

 

 スズと二人元来た道を駆け足で進み、それぞれのテントに戻った。運よく三人とも寝ているようで、俺は安堵の息を吐いて自分の位置に寝転んで休む事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏とはいえ海が近いこの位置では朝はそれなりに冷えるようで、私は目を覚ました。

 

「今何時なのでしょうか……」

 

 

 とりあえず日は出ているようですが、遮るものが何もない無人島ですので、日の出から時間を予測するのは困難である。

 

「確か、時計を持ってきてたはずですし、後で確認しましょう」

 

 

 とりあえず今は尿意をどうにかするのが先なので、私はテントからトイレまでダッシュで移動してスッキリする事にした。

 

「ふぅ、気分爽快ですね」

 

「トイレの前で何を言ってるんですか、貴女は……」

 

「おや、タカ君。おはようございます」

 

「おはようございます。それで、トイレの前で変な事を言っていた義姉さんは、こんな時間に目が覚めたんですね」

 

「こんな時間って、今何時ですか?」

 

「五時を少し回ったくらいです」

 

 

 タカ君が身に着けていた腕時計を私に見せながら答えるのを受けて、私はいつもより早く起きた自分に驚きました。

 

「普段ならもう少し寝ているはずなのに」

 

「まぁ、慣れない環境で眠りが浅かったのでは?」

 

「タカ君は関係なく早起きだもんね。ひょっとしてお義姉ちゃんの寝顔でスッキリしたのかな?」

 

「阿呆な事を言ってないで、朝食の準備を手伝ってください。どうせ他の人たちはまだ起きてこないでしょうし、軽く食材探しに行くつもりだったんですが」

 

「分かりました。タカ君と二人でこの島を隅々まで調べつくしましょう!」

 

「そこまで意気込まなくてもいいんですが」

 

 

 私のテンションは寝起きだからおかしいようで、タカ君は呆れた視線を私に向けてきました。まぁ、割と何時も通りなので、私もタカ君も特に気にせずに食材探しの旅に出たのでした。




夜一人でトイレにいけないなんて、萩村はこd……

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