桜才学園での生活   作:猫林13世

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ロクな事じゃねぇな……


コトミの得意な事

 カナ義姉さんがコトミに家事を叩き込むという事で、俺は客間の掃除をすることにした。どうせこの部屋で寝泊まりするはずもないのだが、万が一の可能性を信じて掃除するのだ。

 

「タカ君、ちょっとキッチン借りるね」

 

「どうぞご自由に。コトミ、しっかりと教えてもらえ」

 

「頑張ったってタカ兄やお義姉ちゃんみたいには出来ないと思うんだけどなー」

 

「やる前から諦めるな。てか、少しくらい上達するよう努力しろ」

 

 

 相変わらずやる気が感じられないが、コトミだってやれば少しは出来るようになると思うんだがな……勉強だって多少は出来るようになったんだから……

 

「コトミちゃんが家事出来るようになれば、タカ君が自由に使える時間が増えるし、コトミちゃんだってタカ君に頼り切りな生活から脱出出来るんだよ?」

 

「タカ兄にべったりなのは私の意思ですから、無理して抜け出す必要は無いんですよ~」

 

「少しは反省しろよな……」

 

 

 テスト前に部屋の掃除を初めて、自分一人で片づけられなくなり人に泣きついてきたり、料理をしてたはずがいつの間にか科学実験にすり替わっていたりと、こいつの家事スキルはかなり酷いものなのだ。

 

「とりあえず、今日中に一品は作れるようになろうね」

 

「怪我だけはしないでくださいよ」

 

 

 コトミは別に心配してないが、カナ義姉さんに怪我をされたら面倒だしな……そもそも、コトミが失敗して怪我をする分には自業自得だが、コトミに付き合って義姉さんが怪我をするのは違うもんな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミちゃんに料理を教え始めて二時間、タカ君が匙を投げた理由がちょっとだけ理解出来ました……さっきから失敗し続けているコトミちゃんは、全く反省している様子が無く、むしろ失敗して当然だと言わんばかりの雰囲気を醸し出しているのです。

 

「コトミちゃん、少しは失敗を悔しがったりしないんですか?」

 

「だって、私は最初から成功するとは思ってませんから」

 

「では、次は成功するイメージを持って挑戦してください」

 

「でもお義姉ちゃん。これ以上食材を無駄にしないためにも、私は料理しない方が食材や生産者にとっても良い事だと思うんだけど」

 

「それは……」

 

 

 確かにこの二時間でだいぶ食材を無駄にした気がしますし、コトミちゃんが言っている事も一理あると思ってしまいました……

 

「それじゃあこの汚れきったキッチンを片付けましょう。料理は兎も角、掃除は出来るようになっておいた方が絶対に良いですから」

 

 

 本当は料理も出来るようになった方が良いのですが、コトミちゃんには壊滅的に料理センスが無かったようでした。

 

「掃除くらいは出来ますよー。これをそのままゴミ箱に捨てればいいんですよね」

 

「ちゃんと分別しないとタカ君に怒られますよ?」

 

「テキトーに捨てても、後でタカ兄が分別してくれますから大丈夫ですよー」

 

「………」

 

 

 タカ君がコトミちゃんに家事をさせなかった理由がはっきりと分かった気がします……やらせてもこれじゃあ、二度手間ですものね……

 

「コトミちゃん」

 

「何ですか、お義姉ちゃん?」

 

「もしタカ君に彼女が出来て、同棲するからこの家から出ていくと言われたらどうするつもりですか?」

 

「彼女さんにお願いして私も一緒に生活します!」

 

「………」

 

 

 これじゃあ当分タカ君が彼女を作らないと言っている理由も、一般的な男子高校生と比べて性に疎いのも仕方ないと思ってしまいますね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄とカナお義姉ちゃんが作ってくれたごはんを食べながら、私はどうやったらこんなに美味しく作れるのかと首を傾げた。だけど、それを追求したいとは思わない。

 

「コトミ、さっきから何をうんうんと頷いたり首を傾げたりしてるんだ?」

 

「やっぱり私が家事をするよりも、タカ兄やお義姉ちゃんにお願いした方が確実だなと思ったり、何で二人は私に家事をやらせたがったのかと不思議に思ったりしてただけだよ」

 

「家事をやらせようとしたのは、お前の為だからだよ……」

 

「別にタカ兄みたいに家事上手な男の子を捕まえるから出来ないくてもいいと思うんだけどなー」

 

「まぁ、コトミちゃんは可愛いしおっぱいもそれなりに大きいから、大抵の男の子なら捕まえられるかもしれないけど、出来るに越したことは無いと思うよ?」

 

「人には向き不向きがあるんだよ! 私は家事に向いていないんだよ」

 

「じゃあ何に向いてるんだよ?」

 

 

 タカ兄が疑り深い視線を私に向けてくる。相変わらず信用されてないんだなーって思うけど、この蔑みの目がまた興奮するんだよね。

 

「性知識ならタカ兄に負けないよ!」

 

「そんなもの、勝ちたくもない……」

 

「でもタカ兄、全くの無知じゃいざという時に困るよ? 少しくらい勉強しておいた方が――」

 

「それはお前だ! テスト前に散々人に泣きついて来て、少しは勉強しておいたらどうなんだ」

 

 

 ありゃ、藪蛇だった……

 

「コトミちゃん。家事は無理だったけど勉強はまだ何とかなるよ。家事の特訓じゃなくて必死に勉強してもらうから覚悟してね」

 

「えぇ! せっかくの夏休みなんだから遊びましょうよ~」

 

「遊びつつ勉強するのが理想的なんだから、頑張ろうね」

 

 

 何だかお義姉ちゃんのスイッチが入っちゃったみたいで、私は渋々勉強する事になったのだった。




匙を投げたくなる酷さ……勉強頑張れ、コトミ……

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