桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミは終わってても……


トッキーの宿題

 例年ならコトミの夏休みの宿題を追い込みで片づける為にシノ会長たちがウチにやってくるのだが、今年は義姉さんがコトミの相手をしてくれたお陰で、無事にコトミの夏休みの宿題は片付いている。

 

「……それでもウチに集まるんですね」

 

「せっかくの夏休みだからな! お泊り会は必須だろ!」

 

「まぁまぁタカ兄。トッキーはやってないんだし、みんなでトッキーの宿題の手伝いをしてあげるって考えれば良いんだよ」

 

「ウチである必要がないだろ……」

 

「申し訳ないです」

 

「別に時さんが悪いわけじゃないよ。まぁ、ここまで宿題をやってないのは問題だけどさ」

 

 

 柔道部の練習とかで忙しいのは分かるが、全く手を触れた様子がないのは問題だろうな……

 

「今回はカナがコトミの面倒を見てくれていたからな。トッキーの面倒は我々で見ようじゃないか!」

 

「あの、私が呼ばれたのってそういう事なんですか?」

 

「カエデちゃんだってお泊りしたいでしょ~?」

 

「それは、まぁ……」

 

 

 今回時さんの宿題追い込みの為に集まったのは、桜才生徒会の三人と英稜の二人、そしてカエデさんの計六名。それに宿題を片付けなければならない時さん本人、そしてこの家の住人である俺とコトミの合計九人……食事とか用意するの大変そうだな……いつも通りだが。

 

「タカ君、私たちは何しようか?」

 

「この気温ですし、アイスでも用意しますか」

 

「でも、買いに行くのは大変だよ?」

 

「材料はありますし、作りますか」

 

 

 他の人は時さんの宿題を見てなければいけないが、俺と義姉さん、そしてコトミは暇を持て余しているのだから、これくらいは良いだろう。

 

「というわけで、私たちはキッチンに行きますが、シノっちたちは頑張ってトッキーさんを立派に育て上げてくださいね」

 

「任せろ! 私たちがトッキーを立派な女にしてみせるからな!」

 

 

 なんか引っ掛かりを覚える言い回しだったが、別にツッコむ必要は無さそうだったから俺もサクラさんもスルーしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休憩でタカトシ君たちが用意してくれたアイスを食べている時に、私は出島さんから預かっていた写真を取り出した。

 

「この間の無人島で撮った写真が出来たんだ~」

 

「そういえば無人島で生活すると言ってましたね」

 

「五十嵐も来ればよかったのに」

 

「生憎ですが、その日はコーラス部の活動があったので参加出来なかったんです。七条さんからお誘いは受けてたんですがね」

 

「そうだったのか」

 

 

 あれ? シノちゃんにはカエデちゃんことは話したはずだったんだけどな……知らなかったみたいだし、話すのを忘れてたのかも。

 

「しかしこうして改めて見ると、タカ君って背が高いんですね」

 

「何ですかいきなり?」

 

「私たちの中で一番大きいアリアっちと比べてもだいぶ違いますし、男の子は背が大きい方が自慢出来ますしね」

 

「そんなこと自慢しませんよ」

 

「でも、頭身が高い男の子はモテるって聞くよ?」

 

 

 まぁ、タカトシ君の場合、頭身云々なんて関係なくモテてるけどね……実際、この場にいる全員がタカトシ君に少なからず好意を持っているわけだし。

 

「それに加えてタカ兄は勉強も運動も家事も得意だもんね~。モテ要素満載だよ~」

 

「バカな事言ってないで、お前も少しは勉強したらどうだ?」

 

「もう宿題終わってるのに、何で勉強しなきゃいけないのさ~?」

 

「万年補習候補のお前の為だ! 本気で塾に通わせることになるぞ」

 

「それだけは勘弁してください!」

 

 

 コトミちゃんが跳び上がって土下座をしたのを受けて、私たちは笑ってしまった。

 

「まぁ、コトミちゃんの勉強は私がしっかりと面倒みますから。塾に通わせる時間がもったいないです」

 

「お義姉ちゃん……」

 

「それに、コトミちゃんの頭は塾に通わせた程度じゃ良くなりません。それだったら私とタカ君の二人でスパルタ教育した方が絶対に成績が上がると思いますし」

 

「それ、親にも言われました……」

 

 

 確かに塾の講師に習うよりも、タカトシ君やカナちゃんに習った方が身になるでしょうね。

 

「何だったら私たちも手伝うぞ?」

 

「そうですね。時さんの宿題をみるのに、こんな人数必要ありませんし」

 

「それじゃあ休憩後はトッキーとコトミのどちらの勉強をみるかのくじ引きをしようじゃないか!」

 

 

 シノちゃんが楽しげに宣言すると、タカトシ君が申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「結局コトミも面倒みてもらうことになって申し訳ありません……」

 

「タカトシ君が気にする事じゃありませんよ。後輩の面倒をみるのも私たちの務めですから」

 

「五十嵐の言う通りだ! それじゃあ、さっそくくじを引こうではないか!」

 

 

 いつの間に用意したのか、シノちゃんの手にはくじが握られている。ちなみに、タカトシ君は家事を片付けてからという事でこのくじ引きには参加しないことになった。

 

「まずコトミの担当だが、私、カナ、森の三人だ!」

 

「時さんの担当は私、七条先輩、五十嵐先輩の三人ですね」

 

「俺は両方を軽くみる程度にしておきます。夕飯の買い出しとかもありますし」

 

「一人で大丈夫か?」

 

「慣れてますから」

 

 

 タカトシ君の発言に、私たちは一斉に頭を下げた。慣れさせる原因となっているのはコトミちゃんや時さんだけど、お世話になっているのは私たちも一緒だからね……いつか恩返ししなきゃ!




やっぱりコトミは駄目だ……

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