昼飯の買い出しに向かう途中で、背後から声を掛けられた。知らない相手ではないので、一応は相手をしておかなければな。
「津田君じゃないか。こんなところで何をしてるの?」
「買い出しです。古谷さんこそ、こんなところで何をしているんですか?」
「あたしは暇だったからぶらぶらとね」
「この暑い中をですか?」
「扇風機が壊れちゃってね。さすがに風鈴の音だけじゃ凌げなくてさ」
「冷房を使えばいいのではありませんか?」
古風な人だと知っているが、冷房くらい使えるだろうし……それとも、家に冷房が無いのだろか?
「あんまり使い過ぎると良くないって聞いたからさ。ところで、買い出しって何処に行くの?」
「近所のスーパーですが」
「じゃああたしもついて行こうかな。そこだったらクーラーも効いてるだろうし」
「涼むだけが目的では怒られますからね」
「大丈夫だって。津田君について回るから」
それの何が大丈夫なのか分からなかったが、断れる雰囲気ではなかったので、俺は古谷さんと二人でスーパーに向かう事にしたのだった。
夏休みで浮かれている生徒のスクープを探して日夜動き回っていたが、目ぼしいものは何もなく諦めて家に帰ろうとした矢先に、津田副会長が見知らぬギャルとスーパーに入っていくのが目に入り、私は津田副会長に気付かれない程度の距離を保ってスーパーに入る。それにしても、随分と仲がよさそうに見えるが、何時の間に知り合ったのだろうか……
「もうちょっと近づかないと相手の顔が見えませんね……」
これ以上近づくと津田副会長に気付かれてしまうかもしれないけど、相手の顔を確認する為にはもう少し近づかなければならない。知り合いならこの距離でも自動補正で相手の顔が分かるけど、知らない相手だとそうはいかないしね……
「なにしてるんだ、畑?」
「はい?」
津田副会長の隣にいた女性に気付かれてしまったが、どうやら相手は私の事を知っているようだった……はて、いったい誰なのでしょうか……
「って、古谷元会長でしたか。何故津田副会長と?」
「さっき会ってあたしが津田君の買い出しに付き合ってるんだよ。スーパーなら冷房も効いてるだろうしってさ」
「なんだ、てっきり津田副会長が見ず知らずのギャルと付き合ってるのだと思ったのに」
「また捏造なんてしようものなら、新聞部の活動予算を大幅に削りますからね」
「古谷元会長とデートしてたのは事実ですから、そこを曲解して記事を作ろうかとも思いましたが、予算を人質に取られては仕方ありませんね。大人しく退散します」
津田副会長は天草会長よりも権力を持っていますからね……本気で新聞部を潰しにかかられてはたまったものではありませんし……
「では、私は家に帰って寝ます」
「おう、またな」
古谷元会長に挨拶をして、私は家に帰る事にした。結局スクープは見つからなかったですね……
タカ君の家でコトミちゃん、トッキーさんの勉強を見ているのですが、正直この二人はやれば出来ると思ってるんですよね。
「トッキー、そこ違うぞ」
「コトミちゃん、そこはさっき教えたでしょ?」
今はシノっちとアリアっちが二人の勉強を見ているので、私たちは休憩しているのですが、この二人を纏めて面倒見ていたタカ君の凄さが改めて理解出来ました。
「タカトシって凄かったのね」
「おや? スズポンはタカ君の凄さを間近で見てきたのではありませんか?」
「確かにタカトシが凄いとは思ってましたけど、コトミの相手をしながら私と同点だったことを改めて考えると、私の方が負けてるんだなと思いまして……」
「でも、タカトシ君は萩村さんの方が凄いって思ってるのでは?」
「どうなんでしょうね……」
カエデっちの言葉に、スズポンが首を傾げた。お互いに相手の方が凄いと思っているのかもしれませんが、私からすればどちらも凄いと思いますけどね。
「サクラっちはどう思いますか?」
「私は、萩村さんもタカトシさんも凄いと思いますよ。てか、私ももっと頑張らないとと思います……」
「サクラっちも十分頑張っていると思いますよ? それは私が保証します!」
生徒会の仕事っぷりを見れば、サクラっちが頑張っているのは分かりますし、何より私に対する愛のあるツッコミには感謝してもしきれませんしね。
「ですが、萩村さんは外国語の勉強をしたり、タカトシさんは家事やコトミさんの相手をしてる中、私は特別な事はしてませんし……」
「サクラっちはアルバイトをしてるじゃないですか」
「それはタカトシさんも一緒ですよ……」
「タカ君はいろいろとスペックが高いからそれくらいは問題ではないのでしょう。サクラっちもスペックは高いですが、タカ君は異常に高いんですよ」
親戚になってから改めてタカ君のスペックの高さを思い知らされましたが、サクラっちや私だってスペックが低いわけでは決してないのです。ただ単にタカ君が高過ぎて私たちが平均かそれ以下に感じられるだけであって、そこと比べる事を止めれば私たちだって十分にハイスペックだと評価されるでしょう。
「とにかくサクラっちは、タカ君やスズポンというハイスペックすぎるライバルがいるせいで自信が持てないんですね」
「そうなのかもしれませんね……」
気落ちしたサクラっちの肩に手を置いて、私はサクラっちを慰めるのだった。
遠目では気づかないのかもしれませんね