桜才学園での生活   作:猫林13世

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憧れるのだろうか……


似非怪力少女

 生徒会室に行くと、会長が何かのアンケート用紙に記入していた。

 

「なんのアンケートですか?」

 

「先日買った本が面白かったのでな。その本に付いていたアンケートだ」

 

「なるほど」

 

 

 俺は答えた事が無いけど、確かにアンケートはがきが挟まっている本は見かけるな……それにしても、本当にアンケートに協力する人がいるとは……身近にはいなかったからちょっと驚きだ。

 

「えっと……職業に丸を付けるのか……これで良しと!」

 

「よくは無いと思いますが……てか、スパムじゃないんですから」

 

 

 確かに丸を付けたが、恐らく――いや、アンケート主催側がつけてほしい箇所はそこではないだろう。

 

『〇学生』

 

 

 確かに学生に丸を付けている事には違いないが、これは絶対に違う、そう言い切れる自信がある。

 

「シノちゃん、誰にスパム送るの?」

 

「ほら、やっぱり……」

 

 

 後ろから覗き込んだアリア先輩もスパムだと思ったので、シノ会長は丸の位置を直し、正しい感じになったのだった。

 

「おっと、そういえば倉庫の整理を頼まれてたんだったな。アリアも来た事だし、そろそろ行くとしよう」

 

「スズは?」

 

「萩村は横島先生に呼び出されて職員室だ」

 

「なんの用なんでしょうね……」

 

 

 あの人の用事には極力付き合いたくないし、下手に首を突っ込んで巻き込まれるのも避けたいしな……頑張れ、スズ。

 

「倉庫って言っても頻繁に掃除とかしてるから散らかってないね」

 

「それでも、埃をかぶったりしてますね」

 

 

 前に掃除したのは何時なのだろうか……

 

「この椅子、脚の部分が朽ちてますね」

 

「そういうのは処分して構わないぞ」

 

「分かりました」

 

「ちょっと待ったー!」

 

 

 椅子を脇において整理を再開しようとしたら、いきなりコトミが現れた。

 

「なにか用か?」

 

「その椅子、捨てるんだったら私にください」

 

「こんな椅子をどうするつもりなんだ?」

 

 

 家に持って帰るとか言い出したら説教でもしてやろうか……

 

「……はぁー!」

 

「相変わらずの厨二だな……」

 

 

 朽ちて脆くなっているところにチョップを喰らわせ、あたかも怪力であるかのように椅子を破壊した。

 

「散らばった木くずと、その椅子の処分はお前がするんだからな」

 

「えぇー!? 何でそんなことしなきゃいけないの?」

 

「その椅子はお前がもらったものだし、壊して散らかしたのもお前だ。お前が片づけるに決まってるだろうが」

 

「は、はいぃ……」

 

 

 少し眼光を鋭くして詰め寄ると、コトミは反論を諦めて箒と塵取りを持ってきて片付け始めた。

 

「さて、俺たちも整理を続けましょうか」

 

「そうだな」

 

「といっても、タカトシ君がコトミちゃんを怒りながら進めてたから、殆ど終わってる感じだね」

 

「え?」

 

 

 完全に無意識で説教をしながら片付けていたらしく、確かに倉庫はある程度綺麗になっていた。

 

「無自覚でも掃除の手を止めない、さすが主夫の鑑だな!」

 

「だから、主夫じゃないですってば……」

 

 

 シノ会長とアリア先輩に拍手されたが、あんまり嬉しくないのは何故なのだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園の机と椅子は、私からしてみれば大きくて使い難い。だが、それを学園に訴えるのは恥ずかしいし、何より私が小さいだけだと言われそうで嫌なのだ。

 

「――という事なんだけど、何とかならないかしら?」

 

「そうだね……ちょっと相談してみるね」

 

 

 ネネに相談すると、何か案があるらしく、学園に許可を貰う為に職員室に向かっていった。

 

「何をする気なのかしら……」

 

 

 ネネの事だから、突拍子もない事をしでかすのではないかという不安と、相談した私の責任なのかしらという不安に押しつぶされそうになった。

 

「スズちゃん、何してるのー?」

 

「ムツミ……ちょっとネネの帰りを待ってるのよ」

 

「ネネならさっき、空き教室に入ってくのを見たよ」

 

「空き教室?」

 

 

 そんなところで何をするつもりなのかしら……

 

「なんかタカトシ君にも声を掛けてたけど、何をするんだろうねー?」

 

「タカトシにも?」

 

 

 ネネがタカトシになにかをするとは思えないけど、もしかしたら私の相談事をタカトシに話したのかしら……タカトシなら私の事を子供扱いする事はないのだけど、知られたと思うと何だか恥ずかしいわね……

 

「スズちゃん、お待たせー!」

 

「ネネ! って、その机と椅子は?」

 

「先生に許可を貰って、空き教室の机と椅子を改良したんだよ。ちなみに、工具はウチの部のを使いました」

 

「あぁ、これってスズの為にやってたのか」

 

 

 机と椅子を運んできたタカトシは、何が目的だったか知らされてなかったようで、私の姿を見て納得したように頷いて、元々私が使っていた机と椅子を退けて、その机と椅子を置いた。

 

「中身とかは自分で動かしてくれ」

 

「うん」

 

 

 タカトシに言われて、私は机の中身を移動させ、その作業が終わるとタカトシは元々私が使っていた机と椅子を空き教室に運んでいった。

 

「これならスズちゃんにもピッタリだと思うんだけど、どうかな?」

 

「確かに使いやすいわ」

 

 

 ネネが改良してくれた机と椅子は、私の身長でも問題なく使える。こんなことなら早く相談すればよかった。

 

「良かった。これでスズちゃんも、放課後の人気のない教室で角オ〇ニーが出来るね!」

 

「良い表情でおかしなことを言ってんじゃねー!」

 

 

 せっかく感動したのに、ネネの余計な一言で色々と台無しになってしまった……まぁ、感謝はしてるけどね。




いろいろと台無し……

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