桜才学園での生活   作:猫林13世

309 / 871
昨日投稿忘れてました……


河童を追い求めて

 河童の目撃談を基に、我々新聞部と生徒会のメンバーは夜間も張り込みを続けていた。

 

「なかなか現れないものだな」

 

「お疲れ様です。交代の時間です」

 

「あぁ。ずっと同じ体勢でいるとキツイな……」

 

 

 天草会長が腕を伸ばすと、小さく音が鳴った。

 

「お疲れでしたら、そこにある寝袋を使って休んでも良いですよ」

 

「何だかキャンプみたいですね」

 

「休んでいいとは言っても畑さん、寝袋が人数分無いのですが」

 

「マジで!?」

 

 

 おかしいな、先ほど七条さんに数を確認してもらった時にはあったはずなのですが……

 

「あっ! 間違えてタカトシ君の袋をカウントしちゃってたみたい」

 

「間違え方が斬新過ぎるだろ……」

 

「どうしましょうか。私は別になくても問題ないんですが」

 

「俺は使いませんので、四人で使ってください」

 

「でも、タカトシが休む時はどうするんだ?」

 

「一日二日寝なくても問題はないですし、ずっと付き合うわけでもないでしょうし」

 

「それはそうだが……」

 

 

 もしかしたら天草会長は、津田副会長が寝たら襲いかかるつもりだったのでしょうか。もしそうだったら、そっちの方がスクープになりそうですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局仮眠をとる程度で私たちは目を覚ました。まぁ、ここでぐっすり寝るのも何か違う感じがするしな。

 

「ちょっとお手洗いに行ってきます」

 

「おぅ」

 

 

 萩村がトイレに行くのを見送り、私たちはお喋りに興じる事にした。

 

「それにしても、やはり薄着になるとアリアのスタイルは強烈だな」

 

「シノちゃんは気にし過ぎだよ~。ね、タカトシ君?」

 

「何でここで俺に話を振ったのかは聞きませんが、会長も十分魅力的だとは思いますよ」

 

「そ、そうか……」

 

 

 タカトシに褒められると悪い気はしないな……だが、やっぱりアリアのスタイルは同性の私から見ても強烈であり、目が行ってしまうのも仕方ないなと思わせられる。

 

「ん? 萩村から電話だ」

 

 

 先ほどトイレに行った萩村から着信があり、私は扉越しに話しかけた。

 

「何かあったのか?」

 

『あの、紙ってありませんかね?』

 

「あぁ。明日買いに行く予定なので、まだありませんね」

 

「どうする? 乾くまでそこにいるか?」

 

『ですが、使いたい人が出てくるかもしれませんし』

 

 

 確かに萩村の言うように、我々の内誰かがトイレを使いたくなった時、萩村が中に篭ってる状況は非常にまずい気がするな。

 

「仕方ありませんね。押入れのお札でも――」

 

『絶対にやめろ!』

 

 

 畑が本気でお札を剥がすと思ったのだろう、扉越しでも萩村が本気で怒ってる表情が見て取れた。

 

「流せるティッシュがあるけど使いますか?」

 

「さすがタカトシだな。用意が良い」

 

「まぁ、俺が渡すといろいろと問題がありますので、とりあえずおいておきますね」

 

 

 そそくさとティッシュをおいていったタカトシを見送ってから、私は萩村に扉を開けるよう言った。

 

「これで拭けばそのまま流せるようだ」

 

「聞こえてました。タカトシに聞かれてたのは恥ずかしいですが、とりあえず助かりました」

 

「ざーんねん。お札を剥がしたら何が起こるか調べたかったのに」

 

「絶対にやるなよ! 間違っても剥ぐなよ! 剥ぐなら私がいない時に遣れよ!」

 

 

 三連でツッコミを入れた萩村は、再び鍵を掛けてトイレに篭る。まぁ、私もお札を剥がされたら少しくらいは動揺するかもしれないが、相変わらず萩村は怪談が苦手なんだな。

 

「あっ、私は歯磨き粉を忘れた……」

 

「私ので良ければ貸すよ~」

 

「すまんな」

 

 

 歯磨き粉は共有出来るからよかったが、歯ブラシを忘れたらどうすればよかったんだろう……もしタカトシのを借りて歯磨きをすれば、間接ディープキスになるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見張り続け、遂に時刻は午前三時。スズとアリアさんは半分以上寝ているし、シノ会長も目は開いているがどこか眠そうだった。

 

「出た!」

 

「えっ?」

 

 

 畑さんが大声を上げたので、スズもアリアさんもシノ会長も跳び上がった。

 

「どこどこ?」

 

「あそこです。あの河原」

 

 

 畑さんもテンションが高めで、口調が定まっていない様子だった。

 

「なにしてるんですか?」

 

「今河童が男の人に激しいア○ルファ○クを! きっと尻子玉を狙っているんでしょう!」

 

「……出島さんって、今日非番ですか?」

 

「良く分かったね~」

 

 

 つまり、今畑さんが河童だと思って見ている物体は、非番でふしだらな事を外でしている出島さん、という事なのだろうな……てか、普通に犯罪だろ。

 

「せっかく出たと思ったんですけどね……確かに、ズームして確認したら出島さんでした。ですが、何故河童の格好をしてるのでしょうか?」

 

「そういうプレイなんだと思うよ~」

 

「なるほど。見つかっても誤魔化せるというわけですか」

 

 

 誤魔化せてないとは思うが、それで畑さんが納得したなら放っておくか……

 その後も見張り続けたが、結局夜が明けるまで何も出なかった。

 

「残念ですが、我々新聞部はこれからも追い続けます」

 

「そうか、頑張れよ。だが、伝説は伝説のままであった方がロマンがあっていいな」

 

「そうだね。『アイドルはトイレに行かない』と同じように」

 

「その伝説、マニアにはがっかりだな」

 

「寝不足で思考回路が狂ってるんですか? 少しはクリーンに物事を終わらせてください」

 

 

 最後の最後まで締まらない二人にツッコミを入れて、俺たち生徒会役員は解散したのだった。




アニメ版では、出島さんが河童のコスプレをしてましたが……あれはなんかのCMだったような……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。