桜才学園での生活   作:猫林13世

314 / 871
身を持って実感した人物が一名……


タカトシの凄さ

 タカトシさんはエッセイ作成、カナ会長は下で家事をしているので、コトミさんの部屋には私とコトミさんの二人きりという事になっています。それなりに付き合いはありますが、こうして二人きりになったのは数えるほどしかないので、ちょっと緊張しますね……

 

「何をキョロキョロしてるんですか、サクラ先輩?」

 

「いえ、こうしてコトミさんの部屋に入るのも珍しいなと思ってただけです」

 

「普段はタカ兄の部屋ですもんね」

 

「あんまりふざけてると、後で会長とタカトシさんに報告しちゃいますからね」

 

「そ、それだけは勘弁してください……」

 

 

 普段から余程怒られているのか、タカトシさんの名前に過剰に反応するコトミさん。そんなに怒られているのなら少しは改善しようとか思わないのでしょうか……

 

「とりあえず宿題から片付けましょうか」

 

「今日は宿題はありません」

 

「タカトシさんが担当の先生からあると聞いているそうですが?」

 

「はい……大人しく宿題をします」

 

 

 まさか教師から聞いていたとは思わなかったのでしょうか……コトミさんは素直に鞄からプリントを取り出して机に向かい――

 

「なにが書いてあるか分かりません……」

 

 

――すぐに私に泣きついてきました。

 

「何で分からないんですか……あぁ、英語ですか」

 

 

 コトミさんは特に英語が苦手らしく、一問目から躓いたようですね。

 

「よく合格できましたよね……」

 

「タカ兄が徹夜で叩き込んでくれたお陰です」

 

「タカトシさんが努力したんですか……普通コトミさんが努力するんじゃないんですか?」

 

「私だって頑張りましたよー? でも、それ以上にタカ兄が頑張ってたんですよねー」

 

 

 笑いながら言うコトミさんを見て、タカトシさんには悪いですが、いっそのこと不合格になった方が良かったのではないかと思ってしまいました。

 

「まずは辞書を引く癖をつけましょう。そうすれば自ずと覚えていけるはずです」

 

「タカ兄にも同じことを言われてるんですが、調べるよりも聞いた方が早いじゃないですか~」

 

「早い遅いの問題ではなく、覚える為にも辞書を引いてください」

 

「辞書引いてやってると、いつ終わるか分からないですけど」

 

「……とりあえず一時間は辞書を使って進めてください」

 

 

 タカトシさんが匙を投げずにコトミさんの相手をしていられることに尊敬の念を抱きますね……

 

「ん? 私の顔になにかついてます?」

 

「いえ、見た目は似ているのに、どうしてここまで中身が違うのかと思っただけです」

 

「タカ兄に全部持っていかれて、私の時には何も残ってなかったんですよ。あっ、性知識は残ってたみたいですけどね」

 

「……とにかく、頑張ってください」

 

 

 もし私がコトミさんの血縁だったとして、彼女の面倒を最後まで見る事が出来るでしょうか……そんな疑問が浮かび上がり、私は絶対に無理だろうなと結論付け、タカトシさんを尊敬する気持ちがますます強まったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミちゃんの面倒はサクラっちが見てくれていたお陰で、私は家事に専念する事が出来ました。普段ならタカ君が帰ってきても終わっていない事が多いのですが、今日はほぼ完璧に終わらせることが出来、私は満足です。

 

「――で、何故サクラっちは精根疲れ果てているのでしょうか?」

 

「まさかあそこまで出来ないとは思っていなかったので……」

 

「コトミちゃんは毎回赤点すれすれですからね。タカ君が面倒を見て、ようやく平均に届くか届かないかですからね」

 

「改めてタカトシさんとカナ会長の凄さを実感しました……」

 

「私はそこまで面倒を見てあげてるわけではないですけどね。タカ君がコトミちゃんの面倒を見ている間の家事を請け負ってるだけですから」

 

 

 もし私がコトミちゃんの相手を任されたら、恐らく数日で匙を投げているでしょうね。

 

「タカ兄の凄さはみんな知ってると思うですけど」

 

「ですから、改めてと言っているのですよ……前々から凄いとは思っていましたが、実際にコトミさんの相手をしてみて、その気持ちがさらに強くなったという感じでしょうか」

 

「それに加えて、タカ君は家事やエッセイ、それからバイトとこなしていますからね。あっ、タカ君」

 

「すみません、義姉さん。家事の全てを任せてしまって」

 

「これくらいしかお手伝い出来ませんので。もう完成したんですか?」

 

「さすがに一日じゃ無理ですよ。ちょっと息抜きに下に降りてきただけですが、サクラさんはどうしたんです?」

 

 

 ソファで倒れ込んでいるサクラっちを見て、タカ君は不思議そうに首を傾げて問いかけてきました。

 

「コトミちゃんの相手を四時間務めてたんですから、仕方ないと思うな」

 

「あぁ……申し訳ありません、サクラさん」

 

「いえ、大丈夫です……」

 

 

 力なく起き上がり、タカ君に手を振るサクラっちを見て、私はタカ君に提案した。

 

「サクラっち、今日は泊まってったら?」

 

「いきなり何を言ってるんですか!? そもそも、着替えなんてありませんし」

 

「大丈夫。下着とかなら私やコトミちゃんのがあるし、制服だからシャツだけ変えれば問題ないよ」

 

「乾燥機ありますから、洗っても明日の朝には乾いてますよ」

 

「そ、それじゃあ……お世話になります」

 

 

 サクラっちのお泊りも決定したので、私は客間の用意を始める事にしました。もちろん、私もお泊りするんですけどね。




成長はしてるんでしょうが、それ以上に抜けていく速度が速いコトミ……結局ダメじゃん

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。