桜才学園での生活   作:猫林13世

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まさにダメな妹だ……


ダメな妹

 カナちゃんが張り切っているのを感じながら、私はお風呂掃除をし終えてリビングにやってきた。

 

「アリアっち、お風呂掃除終わったんですか?」

 

「うん。といってもあんまり汚れてなかったからすぐに終わるのも当然だけどね」

 

 

 毎日タカトシ君が最後に掃除してるお陰で、津田家のお風呂場はかなり綺麗な状態を保っているんだよね。

 

「タカ君はしっかりしてますからね。あっ、これお茶です」

 

「ありがとう。ところで、シノちゃんが汗だくになってるのは何で?」

 

「意外と雑草が生えていたようですよ」

 

 

 息を荒げながらお茶を飲んでいるシノちゃんに視線を向けながら尋ねると、カナちゃんが代わりに応えてくれた。

 

「タカ君も処理しなきゃと思いながら時間が無かったみたいよ」

 

「まぁタカ君のスケジュールを考えれば、庭掃除までこまめにやってる余裕は無いよね」

 

「我々もタカトシに頼り過ぎていたということか……」

 

 

 漸く息が整ったのか、シノちゃんが私たちの会話に加わってきた。

 

「シノちゃん、とりあえず汗を拭いたら?」

 

「あぁ……ふぅ。漸く落ち着いたか」

 

 

 本当に疲れていたようで、シノちゃんは本気のため息を一度吐いてから視線を私たちに向ける。

 

「学校でもそうだが、こまめに処理しておかないと駄目だな」

 

「今度花壇の整備をする?」

 

「そうだな……美化委員に相談して決めるか」

 

「英稜もそろそろ掃除のスケジュールを考えないといけませんかね」

 

「英稜の事はサクラちゃんと相談したら? さすがに私たちは英稜の状況は分からないからね」

 

 

 三人でお喋りしていると、上からサクラちゃんとスズちゃんが疲れ果てた表情でリビングにやってきた。その背後からは、絶望的な表情を浮かべているコトミちゃんがいた。

 

「どうかしたのか?」

 

「小テストの再試をしてたんですけど、本番以上に酷い点数だったので……」

 

「復習したんですけど、コトミさんは覚えた先から忘れていくようでして……」

 

「やっぱりタカ兄に教わらないと覚えられないみたいです……」

 

「何処までタカトシに依存してるんだ……カナ、お前が教えてやったらどうだ?」

 

「そうですね。私が教えた分は覚えてるようですし、それじゃあこっちはシノっちたちにお願いします」

 

 

 そう言ってカナちゃんはコトミちゃんの腕を取って部屋に向かっていった。

 

「カナも義姉が板についてきたようだな……」

 

「スズちゃんやサクラちゃんでも無理だなて、やっぱりコトミちゃんは問題児なんだね……」

 

「定期試験前は頑張って覚えるんですけど、こういった小テストの時は駄目みたいですね……」

 

 

 スズちゃんとサクラちゃんを労って、私たちはカナちゃんが進めていた晩御飯の準備を引き継いだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部活も終わり帰ろうとしたら、校門付近で怪しい動きをしている畑さんを発見した。ぱっと見た感じは普通なんだけど、付き合いの長い私には分かる。彼女は何かをしようとしている。

 

「畑さん、何をしてるんですか?」

 

「これから津田副会長の家に行こうと思っただけです」

 

「津田君の?」

 

「新聞部がもう一本エッセイをお願いした所為で、現在津田副会長の家には英稜の二人に他に、我が桜才生徒会メンバーも集まっているようなので、何かスクープにならないかなと思いまして」

 

「だって津田君は部屋に籠ってるんでしょ? 畑さんが期待するようなことは無いと思うんだけど」

 

「まぁ、新聞部として少しでも津田副会長の手助けにならないかなと思い、差し入れを持って行こうと」

 

「差し入れ? 何を持っていくんですか?」

 

 

 天草さんたちがいるなら、食事の用意はしてくれるだろうし、特に持っていくようなものは無いと思うんだけどな……

 

「ん? この間撮った風紀委員長の下着写真です」

 

「何処で撮ったんですか!?」

 

 

 畑さんが取り出した写真を奪い取り確認すると、そこには下着姿の私が写っていた。

 

「データが残っていたので津田副会長にプレゼントしようかと……津田副会長だって男子ですから、この写真をオカズに自家発電するかなーって」

 

「というか、こんな写真を津田君に渡したら、畑さんが怒られるんじゃないの?」

 

「……その可能性を忘れてた」

 

「てか、今から私が怒りますよ!」

 

 

 畑さんの腕を掴んで風紀委員会本部へ連れて行こうとしたが、いつの間にか畑さんの姿はだいぶ遠くにあった。

 

「冗談はさておき、津田副会長のお手伝いに行こうとしてたのは本当ですので」

 

「畑さんが行って、何の手伝いが出来るんですか?」

 

「そうですね……具体的には、次の試験の範囲とかを教える事が出来ます」

 

「……津田君には不要じゃない?」

 

「ですから、妹のコトミさんに教えるんですよ。範囲が分かればそこを重点的に勉強すれば本番で焦ることも無くなるでしょうし」

 

「でも、いくら範囲が分かってもコトミさんの出来なささは異常よ?」

 

 

 前に勉強会に参加させてもらった時に思い知らされたけど、あの子の出来なささは津田君が匙を投げないのが不思議なくらいだったのよね……

 

「大丈夫です。確実に出る場所を教えられますから」

 

「その情報、どうやって手に入れたんですか?」

 

「おほほほほほ」

 

「なにしたんですか!」

 

 

 明らかに何かやっているのを隠そうともしない笑い方をした畑さんを、駅まで全力で追いかけた所為で、かなり汗を掻いてしまった。秋とはいえ汗を掻いたままじゃ気持ち悪いのよね……

 

「このまま風紀委員長も津田家へ行きますか? シャワーくらいなら貸してくれるでしょうし」

 

「だって着替えが……」

 

「大丈夫です。風紀委員長の替えの下着はここに」

 

「何で畑さんが持ってるのよ!?」

 

 

 畑さんの鞄から取り出されたのは間違いなく私の下着……てか、何処で盗ったのよ……




畑さんの行動力は異常……

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