生徒会の作業も一段落し、七条先輩が淹れてくれたお茶を飲みながら雑談をする。最近はこういった時間も良いなと思えるようになったのよね。
「そういえば最近、友人から痩せるにはどうすればいいかと良く聞かれるんですよね」
「スズちゃんも? 私もこの前聞かれたんだよね」
女子はどうしてもダイエットしなきゃと思うようで、ネネからも聞かれた事があるんだけど、何故私に聞くのかしら? 自慢じゃないけど、私はダイエットとは無縁だから良く分からないのよね……
「スズちゃんはなんて答えたの?」
「普通に運動するか食べる量を減らせばいいんじゃないかとは答えましたが」
「正論だね。でも怒られなかった?」
「怒られました。なんで怒られたのかは分からないんですがね」
ネネ曰く「正論なんて聞きたくない!」との事だったけど、正論を聞きたくないなら私に聞かなければよかったのに……
「そういえば俺も轟さんに質問されたっけ」
「タカトシにも? なんて答えたの?」
「スズとほとんど同じこと」
「ほとんど?」
私はそこに引っ掛かりタカトシに首を傾げてその内容を問う。
「前にコトミと義姉さんが話してたのをそのまま轟さんに伝えただけだよ」
「カナとコトミがか? 何を話してたんだ?」
「女子は恋をすると痩せる、というのをリビングで話してたのを偶々聞いただけですけどね。本当かどうかは知りませんし、実際痩せたいならスズが言ったように食事の改善か運動するのが一番ですけどね」
「ちなみに、タカトシ君はダイエットとかするの?」
「しませんよ。普通に運動して家事をしてれば太りませんし」
「この主夫め!」
「主夫じゃないですってば……」
会長がタカトシに対して苛立っているということは……
「会長、もしかして?」
「なっ!? ち、違うぞ! 別に太ったわけじゃないからな!」
「私は何も言ってませんが?」
「ちなみにシノちゃん、自分が着てる服のワンサイズ下のものを買って部屋に飾っておくと痩せられるよ」
「ち、違うからな? 別に太ってなんて無いからな?」
そこまで否定すると逆に怪しいですが、ここには追撃して会長を困らせようとか考える人間はいなかった。
「よーす! 頑張ってるお前らに優しい先生から差し入れだぞー」
「あっ、寒いんでドア閉めてください」
「す、すまん……」
いきなり生徒会室に入ってきた横島先生に、会長が冷たいツッコミを入れた。というか、まだそこまで寒くないと思うんだけど、ちょっと苛め過ぎたのかしら。
「それで、差し入れって何ですか?」
「コンビニで買ってきた中華まんだ!」
「またバッドタイミングで……」
「は?」
タカトシが零した言葉に、横島先生は首を傾げたが、会長から向けられる殺気を感じ取り、ちょっと悪い顔を浮かべた。
「まさか天草、中華まんを食べられないほど太ったのか?」
「そんなことありません! 中華まんの一つや二つくらい平気です!」
「ならしっかりと食べろよ。ちゃんと人数分あるから」
そう言って横島先生は中華まんを置いて去っていきました。というか、本当に差し入れに来ただけだったのね。
「種類が違うみたいですが、なにが良いですか?」
「私、こういうの食べた事無いんだ~」
「さすがお嬢様ですね……」
私は無難にカレーまんを選んだ。会長は悩んだ末に粒あんまんを選択。タカトシはあまりモノで良いとの事で、七条先輩が選び、タカトシはノーマルな肉まんになった。
「あっ、これ美味しい! これはケチャまん?」
「ピザまんですね。というか、横島先生はスタンダードのものを買ってきたみたいですね」
「たまに驚くようなものがあるからな、コンビニの中華まんは」
「もう食べたんですか?」
会長は既に食べ終えたようで、お茶を啜りながらタカトシの言葉に頷いていた。というか、早食いは太るんだけどな、とは思ったが言わないでおきましょう。
「コトミとかが良く買い食いしてますけどね、この時期は」
「アイツ、小遣い厳しいんじゃなかったのか?」
「買い食いしてるから厳しいんですよ……言っても聞かないのでもう言いませんが」
呆れているのを隠そうともしないタカトシに対して、私たち三人は同情的な視線を向ける。ほんと大変ね、あの子のお兄ちゃんっていうのは……
「アリアは兎も角として、タカトシやスズは中華まんを買ったりするのか?」
「私はたまに買いますね。ボアの散歩の帰りに寒くなったりしたらですが」
「俺はあまり買いませんね。このくらいなら作れますし、ウチに蒸籠もあるんで」
「凄いな……というか、手作りするより買った方が楽だろ」
「ええ。だから滅多に使いませんけど」
「なら今度作ってくれないか? タカトシの家で中華まんパーティーをしようじゃないか! もちろん、費用は我々も出すから心配するな」
「別に構いませんが……参加者はここにいるメンバーだけですか?」
「せっかくだし英稜の二人と五十嵐も呼んでやろう。この前の角オ○疑惑は畑の捏造だと判明したし、謝罪の意味を込めてもてなそうじゃないか!」
「俺は何も言ってないんですが……」
どうやらあの写真は五十嵐さんが机を元に戻そうとしたのを、そういう事をしているように見える角度で写真を撮り、その後で畑さんが加工したものだったらしく、この間タカトシにこっ酷く怒られていた。
「カナにメールしたら、何時でもOKとの返事が来たぞ」
「早い……てか、なに勝手に家の使用許可出してるんですか、あの人は」
家主であるタカトシが許可する前に魚見さんが許可したようで、タカトシは頭を抱えながらため息を吐いたのだった。
コトミの浪費癖は治るのだろうか……