桜才学園での生活   作:猫林13世

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このメンバーで作れば、普通に商品として成立しそう……


ラーメン完成

 逃げ出そうにも五十嵐先輩と畑先輩がしっかりと見張ってるし、この二人を掻い潜ってもタカ兄が待っているだろうしで、私は大人しく勉強をしている。ちなみに、今回の問題はタカ兄が用意した定期試験予想問題で、その問題を見た畑さんが息を呑んでいた。

 

「この問題集を手に入れられれば――」

 

「そういう事は認められませんからね」

 

「じゃあ風紀委員長の隠し撮り写真を――」

 

「また撮ってたんですか!?」

 

 

 さっきから私の横で五十嵐先輩と畑先輩がギャーギャー言ってるので集中できない……といっても、元々集中してはいないんだけどね。

 

「こらコトミ、手が止まってるぞ」

 

 

 洗濯物を片付けていたタカ兄が、通りすがりに私の頭を軽く叩く。作業しながら見てたのか……相変わらずスペックが高い兄だなぁ……

 

「五十嵐さんと畑さんもコトミの邪魔になってるので静かにしてくださいね」

 

「は、はぃ……」

 

「相変わらずの威圧感ですね……」

 

 

 畑先輩がしみじみ呟いたように、タカ兄の威圧感はかなりのものがある。並大抵の人間ならあれだけで気絶するんじゃないかと思わせるくらいだ。

 

「厨二はいい加減にしておけよ」

 

 

 タカ兄は私にそう言ってリビングで洗濯物をたたみ始める。兄なんだけどお母さんみたいな感じなんだよね……両親が出張がちだから仕方ないのかもしれないけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノちゃんがスープを完成させ、スズちゃんとサクラちゃんが麺を完成させたので、後はその麺を茹でて盛り付ければ完成というところで、タカトシ君がキッチンにやってきた。

 

「どうした? こっちは私たちだけで問題ないぞ」

 

「いえ、他の事は終わったのでちょっと覗きに来ただけです」

 

「そうか。ちょうどいいから味見をしてみてくれ」

 

 

 シノちゃんがタカトシ君にスープの味見を頼んだ。タカトシ君は小皿にスープを救って一口啜る。

 

「ちょっと甘目ですね」

 

「そうか? 私的にはこれくらいがちょうどいいんだが」

 

「まぁ味付けはシノ会長に任せますよ、コトミは何でも食べますし、これくらいなら俺も問題ないですから」

 

 

 小皿を洗ってからタカトシ君は自分の部屋に戻っていった。

 

「さすがタカ君だね……私たちが間接キスを狙う可能性を見抜いてた」

 

「視線が露骨だったかな?」

 

 

 私たちが小皿を凝視してたのに気づいたのか、ただ単純に使ったものはすぐ片付ける癖なのかは分からないけど、私たちはちょっと落胆してラーメン作りを再開する。

 

「会長、タカトシに何を言ったんですか?」

 

「味見を頼んだだけだぞ?」

 

「そうなんですか? 何だかちょっと怖い雰囲気だったので」

 

「たぶんそれは私たちがタカトシの使った小皿を凝視してたからだろう。お前たちは兎も角、私はタカトシとキスした事ないからな」

 

「私もキスしてないですけどね」

 

「お前は義姉弟の関係だろ! 私はそういう親戚関係も無ければお前たちのようにキスしたことも無いんだぞ!」

 

「あの、私もしてないんですけど……」

 

「萩村は放課後二人で一緒に勉強とかしてるだろ」

 

 

 スズちゃんは同級生だから一緒にテスト勉強とかしてるけど、確かにシノちゃんは学年も上だしキスもしてないからさっきの視線は仕方なかったのかな……でも、私たちだって間接とはいえもう一回キスしたいんだよ?

 

「会長、鍋が噴いてますよ?」

 

「おっと……この話題はここまでだ」

 

 

 麺が茹で上がったので、全員分のどんぶりを用意しスープを入れて麺を人数分に分けていく。ラーメンってあんまり食べないけど、こうやってみんなで食べると美味しいんだろうな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 完成したと声がかかったので、俺は部屋からリビングへ向かう。コトミも勉強を一時休止して一緒に食べるようだし、結構な人数になるな……

 

「さぁ、食べろ!」

 

「どんな掛け声なんですか……」

 

 

 一人立ち上がって胸を張るシノ会長に、俺は呆れ気味な視線を向ける。シノ会長一人で造ったわけじゃないんだろうが、何故かこの人が作った感が凄い出てるんだよな……

 

「薬味を使う人は言ってね~。こっちにあるから」

 

「あっ、七味ください。このスープちょっと甘いので」

 

「畑は辛い方が良いのか?」

 

「そんなことは無いですけど、ちょっと甘すぎると思いますよー?」

 

 

 さっき俺も思ったけど、そこまでじゃないと思うんだがな……まぁ、味覚はそれぞれだし、一口も食べずに味付けを変えたわけじゃないし口を挿む必要は無いか。

 

「このラーメン、普通に商品として出てきてもおかしくない程美味しいですね」

 

「コトミにそこまで言ってもらえると自信がつくな!」

 

「タカ君に舌を鍛えられてるコトミちゃんがそこまで言うとは、さすがシノっちですね」

 

「麺を作ったのは萩村と森だがな」

 

「でもスープの味付けをしたのはシノちゃんだよ? 麺も確かに美味しいけど、私はこのスープ好きだよ」

 

「ありがとう、アリア。今度は別の味のラーメンを作ってみるか?」

 

「今度はタカ兄に全部やってもらったらどうですか? タカ兄ならシノ会長に負けないくらい美味しいものを作ってくれるでしょうし」

 

「その前に定期試験ですね。コトミは平均以上取れなきゃ補習なんだから頑張れよ」

 

「うっ……忘れてたのに……」

 

 

 忘れてたら困るんだが、こいつはすぐに現実逃避するからな……また試験前は徹夜覚悟なのだろうか……




いきなり味を変えるのはね……一口は味わいましょう

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