桜才学園での生活   作:猫林13世

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凡ミスは誰にだってあるでしょうに……


スズの失敗

 最近気にしなくなってきたが、私の身長は同年代から見ても低すぎるのではないだろうか……いや、別にそこまで気にしてないけど、ムツミやネネと比べても明らかに低いし、私服で外を歩いていると、小学生に間違われたりすることが多い……また、タカトシと一緒にいても兄妹に間違われたり、タカトシが迷子を案内しているように見られるのだ。

 

「でもスズちゃん、体重も軽いでしょ? 私からすれば羨ましいよ」

 

「ネネだってそこまで重くないでしょ? てか、あんまり気にしてないでしょ?」

 

「そんなの事無いよ。私だって女子の端くれ、体重は気になるんだって」

 

 

 そういいながらネネは私の両脇に手を入れて、そのまま私を持ち上げた。

 

「ほら、私の力だってスズちゃんを持ち上げられるんだから、絶対に軽いって」

 

「何だか高い高いされてるようで嫌なんだけど……」

 

「こんだけ軽いなんて、羨ましいな~」

 

「どれどれ?」

 

 

 ネネと私の会話を聞いていたムツミが、ネネから私を受け取りそのまま持ち上げる。

 

「確かに軽いね。これなら減量の心配もいらないし、羨ましいよ」

 

「あんたあんまり気にしてないでしょうが」

 

 

 減量とか言ってる割にはよく食べるし、この間も学校を抜け出してコンビニでお菓子とか買ってたしね。

 

「あっ、タカトシ君。タカトシ君もスズちゃんを持ち上げてみる?」

 

「は? 何でそんな展開になってるんだ?」

 

「スズちゃんの体重が軽くて羨ましいって話から、ちょっと持ち上げてみようってネネが」

 

「た、タカトシだって身長のわりに軽いわよね?」

 

「そんなこと無いと思うが……平均くらいじゃないか?」

 

「あんたの場合、贅肉じゃなくて筋肉だもんね……」

 

 

 それなりに鍛えているし、普段から動いているためか、タカトシはかなりの筋肉質なのである。それでいてムキムキだと思わせない辺り、やはりスマートな体型なんだろうな……

 

「ところでスズ、さっき数学の先生から頼まれたんだが」

 

「ん、なに?」

 

「いや、珍しく間違えてたから体調でも悪いのかって」

 

 

 そう言ってタカトシは私がさっき提出したプリントを取り出す。恐らく先生から預かったんだろう。

 

「……あっ」

 

 

 パッと見直して、私がかなりの凡ミスをしていた事に気が付く……こんな失敗を犯すなんて……

 

「なになに? 何処が間違ってるの?」

 

「うっかりは誰にでもあることだから気にしないで、スズちゃん」

 

 

 ネネに励まされたが、私はショックでしばらく立ち直れなかったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、スズと一緒に生徒会室に移動したが、スズはさっきの間違いをまだ引き摺っているようだった。

 

「萩村のヤツ、何かあったのか?」

 

「数学の問題でちょっとミスしてしまって……それもかなりの凡ミスで」

 

「あぁ、それでショックを受けてるのか」

 

 

 シノ会長とひそひそ話をしていると、それが聞こえたスズが力なく笑った。

 

「大丈夫です。人間はミスをするたびに成長する生き物ですから。だからさっき買ったこのジャージも一回り大きいものを――」

 

「早く帰ってこい……」

 

「てか、どっかに行ってたと思ったらジャージ買いに行ってたのか……」

 

 

 とりあえずスズを落ち着かせるために席に座らせ、すかさずアリアさんがお茶を淹れる。

 

「そういえばさっき古谷先輩が来てな」

 

「あの人ですか……それで?」

 

「今度大学の催しでワカサギ釣り大会を開くようなんだが、我々も参加しないかとのお誘いだ」

 

「……何故俺たちなんですか?」

 

 

 猛烈に嫌な感じしかしなかったので、俺はシノ会長を問い詰める。

 

「いや……集まりが悪くて盛り上がらないだろうから、我々にサクラをやってほしいと頼まれたんだ」

 

「いっそすがすがしいですね、その頼み方は……」

 

 

 サクラをやれと頼むなんて、中止にでもすれば良いものを……

 

「私ワカサギ釣りってやったこと無いんだけど、面白いのかな?」

 

「釣れればそれなりに楽しいでしょうが、必ず釣れるわけじゃないですしね……氷の上で釣るわけですし、寒いと思う人も少なくないとか」

 

「そうなんだ~。ちなみに、タカトシ君はやったことある?」

 

「あんまりないですね……」

 

「とにかく、冬休みに入ってからだから問題ないな?」

 

「てか、もう参加するって答えちゃったんですよね?」

 

「……うん」

 

 

 お祭りごとが好きな会長の事だからどうせそうだろうと思ってたが、もう返事をしてしまったのなら仕方ないか。

 

「そういえばタカトシ、コトミのテスト結果はどうだったんだ?」

 

「おかげ様で、平均すれすれでした」

 

 

 普段から考えれば高得点なのと、宿題を少し多めにしてもらう事で、コトミは補習を免れたのだとさっきメールが着た。てか、コトミのためを思えば補習になった方が良いんだろうが、どうせまともに聞いてないんだろうし、家で俺がか義姉さんが監視してた方がまだ勉強するだろうから、俺が提案して宿題を多めにしてもらったのだ。

 

「それなら大丈夫だな! 当日は我々四人で参加する事になるので、コトミには留守番を頼んでおいてくれ」

 

「はぁ……どうせ義姉さんが来るでしょうし、そっちに頼んでおきます」

 

 

 冬休みは何度か泊まりに来るって言ってたし、後でメールしておくか。




頑張れ、スズ……大きくなれると良いね……

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