桜才学園での生活   作:猫林13世

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こういっても差し支え無くなってきたな……


恒例行事

 冬休みも終盤に差し掛かり、私たちは長期休み恒例の宿題片付けを始める事になった。

 

「君たち、もう少し成長してくれないかな?」

 

「ゴメンなさい……」

 

「まぁまぁタカ兄、今回トッキーは宿題をウチに忘れてたんじゃなくて、宿題自体を忘れてたんだから、成長してると言えなくはないんじゃない?」

 

「宿題を忘れてる時点で、成長なんて言えないだろ」

 

「仰る通りです……」

 

 

 今回はタカ兄が一人で私たちの面倒を見てくれているのだが、タカ兄は派手に呆れている様子なのだ。

 

「てかコトミ。お前散々遊んでたが、自分の立場分かってたのか?」

 

「うっ……てかタカ兄、その目は止めてください」

 

 

 私よりも背が高く、私は今座っているので、だいぶ高い位置からタカ兄に見下ろされている。そして鋭い眼光を向けられているので、興奮するよりも前に恐怖を覚えてしまうのだ。

 

「時さんも、もう少し自分で出来るようになってほしいんだけど」

 

「はい、申し訳ないです……」

 

「タカ兄、トッキーには随分と優しくない?」

 

「お前は身内だからな」

 

 

 呆れているのを隠そうともしないタカ兄に、私とトッキーは俯いてタカ兄の視線から逃げたのだった。

 

「さて、二人とも全く宿題に手をつけてないようだし、早いところ始めたいんだが、何時まで俯いてるんだ」

 

「ゴメンなさい……」

 

「タカ兄、お願いします」

 

 

 タカ兄に見下ろされ、私とトッキーは素直に頭を下げて宿題に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当なら兄貴に頼るのは間違ってるのだが、私とコトミだけではこの量の宿題を終わらせることは出来ないし、マキに手伝ってもらえないしで、結局兄貴に頼るしかなかったのだ。

 

「時さん、そこ間違ってる」

 

「うっ……すみませんっす」

 

 

 兄貴に間違いを指摘されるのはこれが初めてではない。宿題を初めてからもう何度目か分からないのだ。

 

「コトミも間違えてるぞ」

 

「えー? 何処が間違ってるの?」

 

「こことこことここ」

 

「うぅ……」

 

 

 兄貴に間違いを指摘されて、コトミは呻き声を上げて間違えている箇所を考え直す。といっても、自力で直せるならここで兄貴に監視されながら宿題をやる意味は無いので、当然兄貴に相談しながらだ。

 

「さて、そろそろ昼飯の用意をするから、その間は自力で考えておくように」

 

「今日のお昼ご飯は何?」

 

「そんなこと気にしてる暇があるなら、一つでも多く問題を解いておけ」

 

「うへぃ……」

 

 

 兄貴の切り返しに、コトミはあまりやる気が感じられない返事をして、私と二人で宿題を片付ける事に覚悟を決めたようだった。

 

「といっても、私とトッキーじゃ力を合わせたところで大した戦力じゃないよね……」

 

「お前と同列に見られているのが物凄く悔しいが、言い返せない自分がいる……」

 

「マキでもいれば変わったんだろうけど、家の用事じゃね……」

 

 

 というか、マキがいたところで私たちの面倒を見てくれるとは思えない。勉強は出来るが、マキは人に教えるのがあまり得意ではないらしいのだ。

 

「まぁ、マキもタカ兄にテスト範囲予想してもらってるしね」

 

「私たちのついでにマキも範囲予想を聞いてるだけだがな……それが無くてもマキは上位の成績だったし」

 

「理解力は高いからね、マキは……」

 

 

 マキの理解力を羨ましがる一方で、私たちは同時にため息を吐いて宿題に向き合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミと時さんの分の料理を用意し終え、俺はコトミの部屋に料理を運ぶ。本来ならリビングかダイニングで食べた方が良いのだが、少しでも多くの時間を宿題にあてる為には、部屋から移動する時間も無駄に出来ないと考えての事だ。

 

「出来たぞ」

 

「ありがとう、タカ兄」

 

「すみません、何時も勉強だけじゃなくご飯まで用意してもらって……」

 

「見てみぬふりは出来ないしね……」

 

 

 申し訳なさそうに俯く時さんを慰め、俺は二人の前に料理を置き、自分の分を空いているスペースに置いた。

 

「ところで、さっきのページから進んでないみたいだが?」

 

「うっ……」

 

「頑張ろうとはしたんですけど、私とコトミでは分からなかった時どうすればいいのかが分からなくて……先に進もうにも結局分からなくて……」

 

「先に進もうとした気概は認めるけど、やってなかったら意味が無いと思うけどね。それで、なにが分からないの」

 

 

 時さんに視線を向けてはいるが、俺はコトミにも同時に聞いているのだ。だがコトミの奴はその事に気付かないようだった。

 

「コトミ、お前にも聞いてるんだが」

 

「私は殆ど全部分からないです!」

 

「威張って言う事じゃないぞ」

 

「はい、ゴメンなさい……」

 

「私も途中までは何とか分かるんですが、どうしても答えまでたどり着かないんです」

 

 

 時さんの宿題に目を通せば分かるのだが、彼女は基礎は出来ているのだ。だが途中で諦めてしまうのか、持ち前のドジっ子を発揮してるのか、何故か間違っているのだ。

 

「とりあえず食べ終わったら教えるが、次の定期試験は自力で何とかしてくれよな」

 

「タカ兄がいないと、私とトッキーはあっという間に赤点ギリギリまで点数が落ちるんだけど!?」

 

「バイトだってあるんだ。二人の相手をずっとしてる暇は無い」

 

 

 あまり甘やかしてもアレなので、あえて突き放す物言いで二人に反省を促したのだった。




結局は甘いんですけどね……

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