桜才学園での生活   作:猫林13世

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森さんがいないため、全員にチャンスが


山の天気

 足湯でリラックスしながらも、私には一つの懸念事項があった。

 

「ところで、暗くなる前に下山しなくても大丈夫なんですか?」

 

「今の時間帯はロープウェイが混雑していますので、あえて遅い時間まで待っているのです」

 

「そういう事でしたか」

 

 

 確かにさっきちらっと見た限りでは、ロープウェイ乗り場には人が沢山いた。出島さんはその事をしっかりと考えてのんびりしているのだった。

 

「それにこの時間は道路も混んでいますので、帰宅ラッシュを避けるためにも、こうしてのんびり過ごした方が後々楽が出来ます」

 

「そう上手く行きますかね……」

 

「何か気になることでも?」

 

「いや、杞憂に終わればそれが一番ですし」

 

 

 何やら空を見上げながら不安げな態度を見せるタカトシに、私たちは何処となく不安な気持ちになった。だがタカトシも決定的な何かがあるわけではなさそうで、すぐに気にしないでくれとでも言いたげな笑みを浮かべて視線を逸らした。

 

「さて、そろそろ支度をしておかないとロープウェイの最終に間に合わなくなりそうですね」

 

「それじゃあ、足を拭いて帰りましょうか」

 

 

 足湯から上がり荷物の準備をしていると、外から凄い音が聞こえてきた。

 

「これって……」

 

「吹雪いてますね……」

 

「あっ! もしかしてタカ兄が気にしてたのって……」

 

「山の天気は変わりやすいからな……だけど、まさか本当に吹雪になるとは……」

 

 

 出島さんが確認すると、案の定ロープウェイは運休となってしまい、私たちの下山の術は無くなったのだ。

 

「まぁ、こんなこともありますよね」

 

「しかし、どうします? さすがにこの吹雪の中野宿はしたくないです」

 

 

 私たちは八人だし、運よく部屋が空いている可能性も低いからな……そうなるとタカトシが言ったように野宿するしかないのだが、こんな吹雪の中野宿したくないのは私たちも同じだ。

 

「そうですか……ではお願いします」

 

「どうだった?」

 

「運よく部屋が空いているそうです」

 

「ほっ、良かった」

 

「ただし、二人一部屋ですがね」

 

「な、なんだって!?」

 

 

 二人一部屋という事は、誰か一人がタカトシと一夜を共にするわけで……しかも、こういった場面で大抵当たりを引く森はいない。となると、私がタカトシと同じ部屋になる可能性もあるわけで……

 

「普通に俺とコトミで一部屋使えばいいだけでは?」

 

「えっ、タカ兄。私たち兄妹だよ?」

 

「だからだろ。身内なら男女一部屋という考えにはならないだろ」

 

「私は、タカ兄が良ければそれで……」

 

「……何か致命的に考え方に相違があるんだが」

 

「コトミと一緒だと逆に不健全な空気が漂うわね……」

 

 

 萩村が動いたが、ここで抜け駆けを許すわけにはいかないな。

 

「それじゃあコトミは時と同室という事で」

 

「私はそれで構わないです」

 

「そうなると残りは、シノちゃん、スズちゃん、ムツミちゃん、私、出島さん、タカトシ君の六人だね」

 

「わ、私はタカトシ君と別の部屋で……男の子と一緒の部屋だなんて、恥ずかしいですし……」

 

「(よし、三葉は脱落した!)では私たち四人の内誰かがタカトシと同室となるわけだが……」

 

「恨みっこなしだよ~?」

 

 

 私が拳を突き出すと、アリアも同じように拳を突き出した。もちろん、殴り合いで決めるのではなく、公平にじゃんけんで決めようという提案である。

 

「私は出来ればお嬢様と同室が良いのですが、タカトシ様と同室でも一向にかまいませんので」

 

「わ、私も参加します」

 

 

 拳の意味を理解して、出島さんと萩村も拳を突き出した。つまり、全員タカトシと同室を狙っているという事になる。

 

「私と出島さんが負けたら、ここが同室でいいよね?」

 

「つまり、私か萩村が三葉と同室になる、という事か」

 

「もしくは、私かお嬢様が勝てば、その二人が同室になる、という事ですね」

 

 

 つまり私が勝てば萩村が三葉と、萩村が勝てば私が三葉と、アリアか出島さんが勝てば私と萩村が同室、という事になるのか……

 

「一回勝負だからな」

 

「勝っても負けても恨みっこなしだからね」

 

「こういう時、狙っていると負けそうですけどね」

 

「どう転んでも私は得しかしませんけどね」

 

 

 既に息を荒げている出島さんに、タカトシが呆れているのを隠そうともしない目を向けている。確かに出島さんは殆どの確率で当たりだもんな……さすがに天然ピュワっ子には手は出さないだろうけども……

 

「無知な少女を私色に染め上げるのも悪くないですし」

 

「まごうことなき変態ですね……」

 

「?」

 

 

 出島さんのいかがわしい視線の意味も理解出来ないのか、三葉は首を傾げていた。まさかここまで無知だったとはな……

 

「ではいくぞ!」

 

「「「「じゃんけんぽん!」」」」

 

 

 じゃんけんにこれほど全力を出したことがあっただろうか。私以外はパーで、私はチョキ。つまり、私がタカトシと同室に決定したのだ。

 

「わー、私はスズちゃんと一緒の部屋だね」

 

「よろしく……」

 

「お嬢様と一夜を共にするだなんて……はぁはぁ」

 

「息が荒いよ~?」

 

「というわけで、よろしくな!」

 

「よろしくお願いします」

 

「……なんか淡泊な反応だな」

 

 

 私はこれほど興奮しているというのに、タカトシはいたって普通な反応を示す。まぁ、同室だからと言って何かが進展するわけではないと私も分かってはいるがな……




珍しくシノを勝たせてみました

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