桜才学園での生活   作:猫林13世

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通常運転の人が数名……


聖戦前日

 七条さんの家に招待され、私は天草さんと萩村さんと一緒にお屋敷にやってきた。何度見ても広いお屋敷よね。

 

「いらっしゃい」

 

「アリア、今日はよろしく頼む」

 

「私も教わる側だし、その言葉は出島さんに言ってあげてね~」

 

「もちろん出島さんにも言うが、場所を提供してくれたアリアにも言っておくべきだろ」

 

 

 天草さんは変な言動などが目立つが、こういう事はしっかりしている人だから、七条さんにもしっかりと頭を下げられるのよね。

 

「カエデちゃんもスズちゃんも、渡す時はライバルだけど、今は一緒に頑張ろうね」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしく……」

 

 

 ら、ライバルって何よ。私はただ、タカトシ君にはお世話になってるからそのお礼にチョコを渡すだけなんですからね!

 

「ツンデレは最近流行りませんよ?」

 

「うひゃ!?」

 

「出島さん。今日もよろしくお願いします」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 突如背後から現れた出島さんに驚いている私を横目に、天草さんは出島さんに頭を下げる。というか、何時の間に私の後ろに立っていたのでしょうか……

 

「報酬は今皆さんが穿いているパンツで結構ですので」

 

「問題ありまくりだろうが!」

 

「あぁ、ロリっ子に罵られるこの快感!」

 

「……とりあえず、中に入りましょうよ。人通りが少ないと言っても、さすがにこの光景を見られるのは問題あると思うんですが」

 

「そうか? 出島さんは通常運転だろ?」

 

「出島さんの為人をそれなりに知っているからそんな態度でいられますが、知らない人が見たら問題ですよ」

 

 

 それに、萩村さんは今制服じゃなくて私服だから、事情を知らない人が見たら事案発生と思われる可能性も……

 

「今失礼な事考えませんでした?」

 

「そ、そんなこと無いわよ!」

 

「それでは、キッチンまでご案内いたします」

 

「お願いね~」

 

 

 私が萩村さんに睨まれている事には触れずに、出島さんを先頭に天草さんと七条さんはさっさと敷地内に入っていく。私も萩村さんを宥め三人の後に続いた。

 

「……迷いました。相変わらず広いですね、このお屋敷は」

 

「「えぇー!?」」

 

「あらあら」

 

「何度目ですか、この流れ……」

 

 

 萩村さんのセリフから、既に何度かこんな流れがあったのかと、私は少し残念な人を見るような視線を出島さんに向けた。

 

「その目、ゾクゾクします!」

 

「えぇー……」

 

 

 何をやってもダメなのかと、私は諦めて七条さんの案内に続いてキッチンに向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノっちもアリアっちもチョコの準備で遊べないとなると、私はすることがなくなってしまう。だからじゃないけど、今日もタカ君の家でコトミちゃんの勉強を見てあげる事にした。

 

「わざわざ毎日来なくても、ちゃんとやりますよ~」

 

「でも、私が帰った後、全くやってないでしょ? 昨日私が教えてたページからまったく進んでないし」

 

「いや~、ちょっと息抜きで始めたダンジョンが手ごわくてですね~」

 

「何でその情熱を勉強に向けられないんだ、お前は……」

 

「あっ、タカ君。お邪魔してます」

 

「どうも、義姉さん。お茶淹れたのでどうぞ」

 

 

 恐らく買い出しに行っていたタカ君が帰ってきて、私にお茶を持ってきてくれた。後で自分で淹れようと思ってたけど、私が淹れるよりタカ君が淹れてくれた方がおいしいから、これはラッキーですね。

 

「タカ兄、私の分は?」

 

「しらん。自分で淹れろ」

 

「お義姉ちゃんには淹れたのに、私には淹れてくれないの~?」

 

「義姉さんはお客様だ。お前はこの家の人間だろうが」

 

「私もここの住人でも良いですけどね?」

 

 

 そう言って私は、カバンの中から婚姻届けを取り出す。既に私の名前は書き込んであるので、後は新郎側を書き込めばいつでも提出できる。

 

「待って、何でそんな物持ってるんですか? てか、何で義姉さんの親は許可してるんですか!?」

 

「だって、タカ君といつでも結婚出来るようにと思って。ウチの親も、タカ君ならいつでも歓迎だって言ってるから」

 

「タカ兄の信頼度は半端ないね~」

 

 

 軽い頭痛を覚えたのか、タカ君は頭を抑えながらコトミちゃんの部屋から出ていってしまった。

 

「怒られなくて良かったね、お義姉ちゃん」

 

「私は本気だったんですけどね。まぁ、タカ君に決断を迫るわけにもいきませんし、今はコトミちゃんの勉強を見る事にしましょう」

 

「せっかく話を逸らせたと思ったのに……」

 

 

 コトミちゃんは逃げ出そうとしてたのか、机の上に広げていた勉強道具をいつの間にか片付けていた。もちろん逃がすつもりはないので、コトミちゃんを椅子に押し戻して勉強を開始した。

 

「それにしてもお義姉ちゃん」

 

「何でしょうか?」

 

「本気で私のお姉ちゃんになろうとしてるんですね」

 

「別にコトミちゃんのお姉ちゃんになろうとしてるのではなく、タカ君の妻になりたいだけですよ」

 

 

 今のところその第一候補はサクラっちですが、私だって結構いい位置にいるはずですから、何かきっかけさえあればサクラっちを逆転出来るかもしれませんからね。

 

「その為にはまず、タカ君の悩みの種であるコトミちゃんをしっかり更生させるのです」

 

「うへぇ……私だってやれば出来る子だと思うんですよ。タカ兄と同じ遺伝子を受け継いでるわけですし」

 

「でも、コトミちゃんは努力してないでしょ?」

 

 

 私の正論に、コトミちゃんはガックシと肩を落として、大人しく勉強を始めた。確かに、やればできる子なんですが、やらないんですよね……




やればできるって、自分で言ってちゃ意味が無い……

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