桜才学園での生活   作:猫林13世

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通い妻感が凄い……


本命組 カナ編

 タカ兄の帰りを待ちながら、私はお義姉ちゃんとゲームをしていた。意外な事にお義姉ちゃんはこういったゲームは苦手なようで、勝率は私が八割以上という、他の事ではまずありえない数字をたたき出していた。

 

「また負けちゃいましたね」

 

「こればっかりはお義姉ちゃんに負けるわけにはいかないですからね! 他の部分では勝てる気がしませんし」

 

「コトミちゃんの胸のポテンシャルは、私を超えるかもしれないですが」

 

「本当ですか!?」

 

 

 お義姉ちゃんのポテンシャルだって相当なモノだけど、それを超えるかもしれないということは、もしかしてアリア先輩並みのポテンシャルが私に……

 

「少なくともシノっちやスズポンに負ける、という事はあり得ないでしょうし」

 

「もう勝ってますよ~」

 

 

 スズ先輩は一つ上、シノ先輩は二つ上だけど、胸は既に私の方が上だと自負している。というか、誰の目にも明らかだとすら思っている。

 

「ただいま」

 

「あっ、タカ兄。お帰り~って、凄い量だね~」

 

「何か店に持ってくる人が多くてな……義姉さん、こんな時間までありがとうございました」

 

「いえいえ、タカ君の為ならこれくらい問題ありません」

 

 

 帰ってきたタカ兄からチョコが沢山入っている袋を受け取りながら、お義姉ちゃんがタカ兄に笑みを見せる。

 

「タカ君がこれだけモテるというのは、義姉である私も鼻高々です」

 

「そんなモンですかね?」

 

「そんなモンです。お茶で良いですか?」

 

「自分でやりますよ」

 

「良いから。タカ君は座って待っててください。それか、コトミちゃんの相手をしてて」

 

 

 お義姉ちゃんに押し切られ、タカ兄はチラリと私を見てため息を吐いた。

 

「お前、勉強してたんじゃないのか?」

 

「してたよ? でも、さすがに集中力が続かないから息抜きをね~」

 

「……じゃあ、この対戦成績はどういう事だ?」

 

「げっ!?」

 

 

 画面端に表示されている対戦成績を見て、タカ兄は明らかに息抜きではないことを見抜いた。

 

「べ、勉強はしてたよ? でも、ずっと勉強出来るほど私は優秀じゃないんだよ……」

 

「まぁ、後で進捗状況を義姉さんに聞くが、一応勉強してたならいいか」

 

 

 ため息を吐きながらも、タカ兄はコントローラーを手に取り私の相手をする。ちなみに、通算での対戦成績は、タカ兄が圧倒的な勝ち越しをしているので、私としては気合を入れなければいけないところだ。

 

「お待たせしました」

 

「すみません、ありがとうございます」

 

「コトミちゃんがここまで苦戦するとは……やっぱりタカ君は何をやらせても上手いんですね」

 

「そんなこと無いと思いますが」

 

 

 お茶を啜りながら、かつお義姉ちゃんとお喋りをしながらでも、タカ兄は全く隙を見せない。そして、私の隙を見逃さない。

 

「そういえばタカ君、今日はちょっと遅かったけど、何かあったの?」

 

「休憩時間に飯を食えなかったので、帰りに食べてきたんです。あぁ後、サクラさんを家まで送ってきたので、それで遅くなったんだと思います」

 

「サクラっちの家に行ったんですか?」

 

「えぇ。あんな時間まで待たせてしまった、せめてもの罪滅ぼしです」

 

「罪滅ぼし……本当にそれだけですか?」

 

「……何を疑ってるんですか?」

 

 

 お義姉ちゃんが疑り深い目を向けているのに対して、タカ兄は呆れ気味な目をお義姉ちゃんに向けている。

 

「そのままサクラっちを美味しく頂いちゃったりしたんじゃないですか?」

 

「するか! てか、サクラさんは食べ物じゃねぇだろうが!」

 

「そういう意味じゃないって、タカ君だって分かってるでしょ?」

 

「……とにかく、そんなことはありません」

 

 

 タカ兄は盛大にため息を吐いて、私にとどめを刺した。

 

「何で喋ってるのにそんな動きが出来るんだよ~! チートだチート!」

 

「自分に出来ない動きをチートとか言うな。てか、お前だってこれくらい出来るだろうが」

 

「さすがによそ見しながらは出来ないって……」

 

「そうだ。せっかくだしお茶請けを用意しますね」

 

「そこまでしてくれなくても大丈夫です」

 

「まぁまぁ。今日はお茶請けに困らないですし、遠慮は無用です」

 

 

 そう言ってお義姉ちゃんは再びキッチンに消えていく。確かに、タカ兄が大量にチョコを貰って来たから、お茶請けには困らないもんね。

 

「チョコならコーヒーとか牛乳の方が良いんじゃ……」

 

「まぁまぁ、お茶でも美味しくいただけるんだから、気にしたら負けだよ」

 

「そういう事です」

 

 

 お義姉ちゃんが戻ってきて、タカ兄にチョコを手渡す。

 

「これは? 貰った覚えがないものですが」

 

「さすがタカ君。あれだけ貰っておいて全部覚えてるとは……これは、私が作ったものです」

 

「あれ? お義姉ちゃん、恥ずかしいから冷蔵庫に入れておくって言ってなかったっけ?」

 

「せ、せっかく渡せるチャンスがあったので、どうせなら手渡ししてしまおうと思っただけです」

 

「うわ、お義姉ちゃんが照れてる。ほら、タカ兄。男として責任を取らないと!」

 

「何かニュアンスがおかしくないか?」

 

 

 そういいながらも、タカ兄はチョコを口に運び、そして小さく頷いた。

 

「美味しいです。ありがとうございました」

 

「い、いえ……気に入ってくれたなら私も嬉しいです」

 

「くー! 見てるこっちがムズムズするね~」

 

「馬鹿な事言ってないで、宿題片付けろ。どうせやってないんだろ?」

 

「げっ、何故わかった!?」

 

 

 冷やかしたら手痛い切り返しを喰らい、私は慌てて部屋に逃げ込んだのだった。




とりあえずこれでバレンタインネタは終わりです

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