桜才学園での生活   作:猫林13世

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あの!はダメだろ……


花瓶の値段

 生徒会室の机の上にレポートが置いてあるが、残念ながら持ち主の名前は無い。

 

「これ、アリア先輩のですよね?」

 

「名前書いてないのに、よくわかったね?」

 

「さすがに生徒会メンバーの字は、見ればわかります」

 

 

 それだけ長い時間一緒にいるという事もあるが、アリア先輩の字は特に分かりやすい。

 

 

「アリアの『!』は卑猥だからな」

 

「昔の癖で……」

 

「その癖は直した方が良いですよ」

 

 

 学内だからまだいいが、社会に出てこのままだと、いろいろと問題がありそうだ……

 

「シノちゃんだって、昔はアルファベットで遊んでたじゃない?」

 

「あ、あれは暇だったからで……ずっとやってたわけじゃないぞ?」

 

「何をしてたんですか……」

 

 

 俺が入学する前の話のようだし、あまり深く追求するのは止めておこう……下手に聞いて、面倒な事になるのも嫌だし。

 

「ところで、この花って造花ですか?」

 

「あぁ。花は偽物だが、その花瓶は七条家に伝わるお値段八千万という――」

 

「そんな物生徒会室に置くな!」

 

 

 怖くて近くを通れないじゃないか……

 

「タカトシ君が壊した場合は、七条家に婿入りしてくれればチャラになるけどね~」

 

「それで俺の人生が決まるのは避けたいです……」

 

 

 どうやらシノ会長の冗談ではなく、本当に八千万する花瓶らしいな……気を付けておかなければ。

 

「時にタカトシよ」

 

「はい、何でしょう?」

 

「今度の朝会だが、お前がスピーチしてくれないか?」

 

「俺が、ですか?」

 

「君が、だ」

 

 

 急に言われても困るんだが……

 

「実は横島先生から、そろそろ後任の指導に切り替えた方が良いんじゃないかと言われてな。次期生徒会長である君に、スピーチなどは任せようと思って」

 

「生徒会長って選挙で決めるんじゃないんですか?」

 

「殆ど信任投票だからな。前任の会長が後任を指名して、全校生徒に是非を問うだけの選挙だ」

 

「余程の事がない限り、タカトシ君で決まりだろうね~」

 

「スズは?」

 

「私はあんたのサポートで十分よ。何より、私が会長になっても、スピーチとか見えないだろうし」

 

「何か前にも言ってたね……」

 

 

 次期生徒会長なんて言われても、全然実感湧かないし、俺なんかが務まるのだろうか……まぁ、今度のスピーチは頑張ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄とカナお義姉ちゃんのお陰で、私は最近小テストの点数が良い。といっても、前までが酷すぎたので、それと比べて良くなってもたかが知れているんだけどね。

 

「最近じゃトッキーには負けなくなった」

 

「殆ど変わらないだろ? てか、さっきの小テストは私の方が上だったぞ」

 

「英語は苦手なんだよー」

 

 

 またテスト前には地獄を見る事になるのだろうが、今からそんな心配してたら気が持たないから考えないでおこう……

 

「マキは相変わらず成績上位者だしね」

 

「私だって頑張ってるんだよ。コトミだって津田先輩や魚見さんに教わってるんでしょ? なのに何で少ししか成果が出ないのよ」

 

「教わった先から忘れてるからかなぁ」

 

「兄貴たちが可哀想だ……」

 

「私の頭に詰め込もうとしたって、すぐに容量オーバーになるって」

 

 

 既に詰まっている知識を追い出す程の力は無いし、そもそも必死になって覚えようと思ってないからかもしれない……これはタカ兄たちには内緒だ。

 

「そういえばマキ、タカ兄がお礼言ってたよ」

 

「お礼? 何の?」

 

「チョコの。直接言えればいいんだけど、とも言ってたけど」

 

 

 あれだけの量を貰っておきながら、タカ兄はどれが誰からのかを全て覚えており、しっかりと感謝しながら一つ一つを大事に食べていた。まぁ、まだ大量に残ってはいるのだが……

 

「べ、別にお礼を言ってもらいたくて作ったわけじゃないよ」

 

「それは私も分かってるし、タカ兄だって当然分かってるだろうね。でも、未来のお義姉ちゃん候補なのは間違いないわけだし」

 

「お、お義姉ちゃん……」

 

「あっ……」

 

 

 マキにこの手の話題は禁物だったんだっけ……

 

「相変わらず足が速い事で……」

 

「陸上部の奴らがスカウトに来るくらいだもんな……てか、久しぶりにマキのダッシュを見た気がする」

 

「最近は地雷を踏み抜いてなかったからね」

 

 

 気を付けていたんだけど、どうやら気が緩んでしまっていたようだ……反省反省っと。

 

「しかしまぁ、お前の兄貴とは思えないほどの人気だよな」

 

「それは聞き捨てならないね、トッキー! 私だって、大勢のオカズになってるんだよ!」

 

「威張って言う事か、それ? てか、そんなのと兄貴とを同列に扱うのは、兄貴に失礼じゃねぇ?」

 

「トッキーもすっかりタカ兄の魅力に絆されちゃってるねぇ~。もしかして、トッキーもお義姉ちゃん候補?」

 

「そんなわけねぇだろうが! だいたい、私と兄貴とじゃ釣り合わねぇだろうが……」

 

 

 その反応が既に、候補に入ってるんじゃないかって疑いたくなるんだよね~。まぁ、本人が否定してる事を私がとやかく言うのもアレだし、ここは黙っておこう。

 

「まぁ、試験の前にはまたトッキーもタカ兄のお世話になるだろうし、そんなこと考えてたら勉強に身が入らないか」

 

「実の兄を性の対象として見てるお前に言われたくはないがな……」

 

「タカ兄相手なら、これが普通だと思うけどな~」

 

 

 あれだけ魅力的なら、血のつながりなんて気にしないって考える方が普通だと、私は本気で思っているんだよね。この考え、カナお義姉ちゃんも同意してくれたし。




久しぶりのマキダッシュ……

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