桜才学園での生活   作:猫林13世

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疲れたという感想しか出ないのか……


職業体験の感想

 園児たちと外で遊んでいたが、急に雨が降ってきたので慌てて屋内へと避難する。

 

「雷まで鳴ってますね」

 

「本格的な雨だな……」

 

「シノ会長、もしかして怖いんですか?」

 

「いや、子供たちが怖がらないか不安なんだ」

 

「なるほど」

 

 

 慌てて屋内に入った為、別々のクラスの園児たちが一緒にいる。その為グループが違う俺たちも会長たちと一緒にいるのだが、さすがに怖がったりはしないだろうな。

 

「おへそを隠さないと雷様に取られちゃう」

 

「怖いねー」

 

 

 そう言えばそんな迷信もあったな……子供だからそういうのもありか。

 

「コトミ先生は大丈夫なの?」

 

「お姉ちゃんは神の申し子だから心配ないのさ」

 

「?」

 

「こんな所でも厨二を発動させるなよな……」

 

 

 子供相手にふざけたところで、誰もツッコんでくれないと分かってるだろうに……

 

「ところで、スズやアリア先輩は?」

 

「隣の教室に避難したんだろう。本当にいきなり降ってきたからな」

 

 

 確かにいきなりだったな……雲の流れを見ていたが、雨が降るような感じは無かったんだが……

 

「架空の生物で思い出したが、昔エロい夢を見たらサキュバスに食べられるとか思ってたな」

 

「どんな思い込みだよ……」

 

「えっ? サキュバスって存在するんじゃないんですか?」

 

「まだ思い込んでたやつがいた……」

 

 

 それが身内だと思うと、なんだか疲れてくるんだよな……てか、園児と同レベルで遊べるコトミは、もしかしたら幼稚園の先生に向いているのではないだろうかと思ったが、遊ぶだけが仕事じゃないから駄目だな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後結局晴れる事は無かったので室内で遊び、いよいよお別れの時間になってしまった。何時もだったらありえない光景だが、タカトシの周りに集まっているのは女の子ではなく男の子たちだ。

 

「タカトシせんせー、また今度サッカー教えてね」

 

「どうやったらあんなに上手くなれるの」

 

「絶対にタカトシ先生とおんなじ学校に通えるようになるから」

 

 

 随分と人気があるようで、私たちは思わずほっこりした気分になった。これが女の子に囲まれていたなら、きっと不機嫌になっただろうが……

 

「それじゃあ皆さん、今日はありがとうございました」

 

「いえ、こちらこそ貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました」

 

 

 私たちを代表して会長が園長先生と挨拶を交わす中、私たちは子供たちとの別れを惜しんでいた。

 

「スズ先生、今度かけっこで勝負しようね」

 

「スズ先生になら勝てそう」

 

「子供だからって容赦しないわよ?」

 

「アリアせんせー、私もせんせーみたいに綺麗になれるかなー?」

 

「なれるよー、きっと」

 

 

 私たちが女の子に囲まれているのも珍しいと思いつつ視線をずらすと、時さんが男の子に囲まれていた。

 

「時先生、絶対に弟子にしてもらうからな!」

 

「その時は覚悟してよね!」

 

「だから私は弟子なんて取らないって言ってるだろ!」

 

「トッキー、随分と気に入られたんだね~」

 

 

 隣でコトミが茶化しているけど、どうやら男の子たちは本気で時さんの弟子になりたい様子……何があったのかしら……ちょっと気になるわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日だったけど幼稚園の先生を体験して思った事は、子供相手は疲れるという事だった。

 

「タカ兄、今日は疲れたから外食にしよう」

 

「お前が疲れてようが関係ないだろうが……そもそも今日は義姉さんが夕飯の用意をしてくれてるんだから、このまままっすぐ帰るに決まってるだろ」

 

「言ってみただけだから本気で怒らないでよ」

 

 

 会長たちとは学校前で別れたし、トッキーはあの後部活があると言って道場に行っちゃったしで、帰り道は私とタカ兄の二人きり。なんだかこうして一緒に帰るのは久しぶりな気がする……

 

「ねぇタカ兄」

 

「なんだ?」

 

「今日の職業体験って、後でレポートを提出するんだよね?」

 

「一応課外学習という名目になっているからな。当然提出する事になるだろう」

 

「何書けばいいの?」

 

 

 正直に言えば、今日の体験で得たことは子供相手は疲れるという事だけで、他に何を書けばいいのかさっぱり分からない。

 

「今日感じたことを正直に書けばいいだけだ」

 

「疲れたって?」

 

「……そんなことで単位がもらえると思うなよな」

 

「でもさ~」

 

 

 大変だったとか、子供は可愛かったとか、そんなありふれた感想しか出てこないんだし、正直やりたくてやってたわけじゃないし。

 

「お前の場合はそれらしいことを書いておけばいいだろ。本当はダメだが、ありのままを書いたら指導室に呼び出されるだろうし」

 

「うへぇ……」

 

「というか、中学の時も職業体験があっただろ? その時のレポートはどうしたんだ」

 

「マキに手伝ってもらった」

 

 

 あの時もそれらしいことをテキトーに書いたんだっけ……あれでよくオッケーもらえたよね。

 

「つまり、お前は一向に成長していないという事か……」

 

「タカ兄、そんな褒めないでよ~」

 

「褒めてない」

 

「あれ? タカ兄、なんだかお疲れモード? 子供相手は疲れたのかな?」

 

「お前の相手をしてる方が何倍も疲れるんだよ……」

 

「つまり?」

 

「お前は幼稚園児以下、という事だ」

 

「そんなこと無いと思うけどな~」

 

 

 だって、幼稚園児にこの胸はあり得ないし。それに、性知識は絶対に勝てる自信があるもんね!




成長しないコトミ……

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