桜才学園での生活   作:猫林13世

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福引なんて当たった事ないな……


スパリゾートホテル

 世間はゴールデンウィークで盛り上がっている中、我々生徒会も疲労回復目的でスパリゾートホテル一泊二日ツアーを企画した。

 

「シノ会長のくじ運は羨ましいくらいですね」

 

「まさかスパリゾート一泊二日を福引で当てるなんて」

 

「いやいや、アリアの強運に比べたら私のなんて可愛いものだろ」

 

「そう言えば引率の横島先生は何処に行ったんですかね」

 

 

 学生だけではまずいのではないかということで、丁度生徒会室に現れた横島先生が引率でついてくることになったのだが、さっきまでいたはずなんだけど見当たらないな……

 

「タカトシ、あそこで男性に声をかけてるのって横島先生じゃない?」

 

「あの人は、ほんと反省しないな……」

 

 

 通行人と思われる男性の集団に声をかけている横島先生の襟首をつかんで、男性たちに頭を下げて会長たちの許に戻る。

 

「捕まえてきました」

 

「ご苦労。横島先生、引率だという自覚を持ってください」

 

「いや~面目ない。つい美味しそうな男を見つけてな」

 

「あんた一応教師だろうが!」

 

 

 俺が雷を落とすと、横島先生だけでなくシノ会長たちも肩をびくつかせた。

 

「おいっ! 大声を出す時は言え! 私たちもびっくりしただろうが」

 

「予告してからじゃ効果ないですから」

 

「まぁ、タカトシ君しか横島先生を怒れないしね」

 

「そんなこと無いと思うんですが……」

 

 

 俺だって高校生なんだから、普通なら教師相手に説教なんてしたくないんだけどな……というか、誕生日を考えれば、この中で一番年下になるんだが……

 

「まぁいいか。それじゃあ、出発だ!」

 

「すぐそこじゃないですか……」

 

 

 意気込む会長にツッコミを入れて、俺たちはすぐそこのホテルに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 受付を済ます前に、私はあることに気が付いてしまった。

 

「そう言えばこれ、レディースプランだ」

 

「じゃあ、俺はこれで」

 

「待て待て! カップルとしてなら利用可能らしいから、誰かとカップルのふりをすれば大丈夫だ」

 

「誰かって、誰とカップルのふりをすればいいんですか?」

 

 

 タカトシの質問に、私たちは顔を見合わせる。この中で一番自然にタカトシと腕を組んだりカップルっぽい空気を出せるのはアリアだろうが、こいつはこの前お姫様抱っこしてもらってたりしてたし、これ以上リードされるのは避けたい。

 

「間を取って四股って事で良いんじゃね?」

 

「何処の間を取ったんですかね?」

 

 

 阿呆な事を言い出した横島先生に、タカトシが底冷えするような笑みを浮かべながら問い詰める。とりあえず横島先生は脱落したから、これで確率は三分の一だな。

 

「そう言えば、何で学生証なんて持ってこさせたんですか?」

 

「萩村が私たちと同年代だと証明するためだ」

 

「……会長のご配慮、感謝します」

 

「萩村が気にしてるのは私も分かってはいるが、私服だとますます同年代に見られないだろ?」

 

「それなら、スズちゃんが恋人役でもタカトシ君が犯罪者と間違えられる心配はないね~」

 

「どういう意味だ、おら!」

 

 

 アリアを問い詰めようとする萩村を、タカトシが宥める。何時までも受付前でうだうだしてるのも怪しまれるので、手っ取り早くじゃんけんで恋人役を決める事にした。

 

「それじゃ、よろしくね」

 

「はぁ……」

 

「何故あの時チョキを出してしまったんだ……」

 

「やはり七条先輩は強運の持ち主でしたね……」

 

 

 悔しいが確かに私とタカトシがカップルのふりをするよりも、アリアがした方が自然に見えるだろうしな……私だったら舞い上がってしまうだろうし、萩村だったらぎこちなくなりそうだし……

 

「決まったか? それじゃあさっさと受付を済ませて中に入るぞ」

 

「あっ、引率っぽい発言ですね」

 

「これでも引率なんだが?」

 

 

 苛立ちを横島先生にぶつける事で誤魔化し、私たちはスパリゾートを楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪しまれないように、設定上私たちは友人で、タカトシは七条先輩の彼氏として同伴した、という事になっている。その為、呼び方も名前呼びで統一する事になったのだ。

 

「あの、シノさん」

 

「何だ、スズ?」

 

「ナルコさんの姿が見えませんが?」

 

「ここにいる男性は恋人がいる人だけだから、そこまで心配する必要はないんじゃないか?」

 

「ですが、あの人は人のものだろうが横取りしますよ?」

 

 

 私の言葉に、シノさんが慌てて辺りを見渡す。幸いナルコさんはすぐに見つかり、私たちの視界から外れる事を禁止にすることに成功した。

 

「私ってそんなに信用ないのか?」

 

「むしろ、信用されていると思ってるんですか?」

 

 

 シノさんの返しに、ナルコさんは口をあんぐりと開けて固まってしまった。どうやら自分の中では信用されていると思っていたようね……

 

「そう言えば、アリアさんとタカトシは何処に行ったんですかね?」

 

「あの二人なら、カップル専用の施設に向かったぞ。それらしくみせるためには必要だからと、アリアが半ば強引に連れて行ったんだがな」

 

 

 会長の言葉の後半は、周りに聞こえないように小声だ。てか、つい気を抜くと『会長』呼びに戻ってしまうから気をつけないと……

 

「最近はアリアが勝ち組っぽいよな」

 

「元々人生勝ち組ですから、アリアさんは……」

 

 

 お金持ちのお嬢様で、容姿端麗、文武両道に加えてあの巨乳……天は二物を与えずというのは間違いだと思わせる人よね、七条先輩って……




何処をどう見れば信用出来るというのか……

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