桜才学園での生活   作:猫林13世

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いろいろと思考が飛び交ってる


三人の気持ち

 バイトから帰ってくると、義姉さんとサクラさんがリビングで寛いでいた。

 

「お帰り、タカ君」

 

「お帰りなさい」

 

「わざわざすみません。留守番なんてさせてしまって」

 

「気にしないでください。私はタカ君のお義姉ちゃんですから」

 

 

 それが何の理由なのかは分からないが、こうして義姉さんが来てくれたお陰で戸締りの心配をしなくて良かったんだし、あまり深く理由を聞くのも悪いか。

 

「ご飯にします? それともお風呂にします?」

 

「お二人は既にお風呂に?」

 

「えぇ。いただきました」

 

「では風呂にします。掃除もありますし」

 

「分かりました。では、タカ君がお風呂に入ってる間に晩御飯を温め直してますね」

 

「お願いします」

 

 

 義姉さんが用意してくれると分かっていたので、今日は帰りに何も食べてきていない。本当なら先に晩飯でもよかったんだが、どうせ風呂場で疲れるんだから、その後で飯にした方が体力の回復が見込めるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシさんがお風呂に入っている間、私と会長とで晩御飯を温め直す。タカトシさんに食べてもらえるほどの腕ではないけど、それでも食べてもらいたいと思う。

 

「サクラっちもだいぶ積極的になってきたよね」

 

「そうですかね? ですが、少しでも積極的にならないと、七条さんや天草さんの陰に隠れてしまいますから」

 

「ぶっちぎりのスパートをかけているサクラっちがあの二人の陰に隠れるとは思えないけど」

 

「そんなこと無いですよ……」

 

 

 タカトシさんの周りには魅力的な女性が多い。ただでさえ学校が違う私なんて、少し自重しただけで存在感が薄れるだろう。そうなるとタカトシさんの中で私の存在が忘れられてしまうかもしれないのだ。

 

「タカ君のお義姉ちゃんとして断言するけど、今タカ君が最も意識している女性はサクラっちだよ」

 

「ですが、それは異性としてなのか友達としてなのか分からないですよね?」

 

「異性の友達としての意識じゃないと思うけど。そもそもタカ君は異性の友達も多いから、その人たちに向けてる感情を見る限り、サクラっちに向けているそれとは別だと分かるよ」

 

「そう、ですかね……」

 

 

 確かにタカトシさんの周りには異性が多い。その殆どは友達として付き合っているのでしょうが、中にはタカトシさんに好意を向けている人はいるだろう。その人の感情をタカトシさんが気づいていないとは考えにくいし、その相手に友達としての情だけを向けているとも考えにくい。

 

「サクラっちの悪い癖だよね、自分に自信を持てないどころか、自分を卑下し過ぎるのは。これはタカ君も一緒だけど」

 

「私はそんな大した人間じゃないですよ……」

 

「そんなこと無いと思うけどね。まぁ、こればっかりは私が何と言っても変わらないのかもしれないけど」

 

 

 会長はそう締めくくった。確かに何度か会長に言われてきたが、その度に私は会長の過大評価だと思ってきた。しかし、もし会長が言っている事が真実だとしたら、もう少しタカトシさんに対して積極的になってもいいのでしょうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サクラっちの背中を押しながらも、私はサクラっちが積極的な行為に出ないだろうと確信している。もし積極的になれるのであれば、とっくになっているだろうし、彼女はタカ君との距離が開くのではないかと怯えているのを知っているからだ。

 

「(私は誰かを応援しなければいけない立場になったとはいえ、やはりタカ君の事を諦めきれないのでしょうね)」

 

 

 既に義姉としてタカ君と沢山の時間を過ごしてきたのだから、これ以上を望むのは他の女子に失礼だと思っている。元々私はタカ君に対してどのような感情を懐いていたのか、もう覚えていないんですよね……

 

「会長? どうかしましたか?」

 

「いえ、タカ君ならお風呂でソロ行為をすることも無いだろうなと思ってただけです」

 

「最近は控えてたのに、どうしてこのタイミングで……」

 

「たまには言っておかないと、自分を見失いそうだったので」

 

「?」

 

 

 サクラっちは首を傾げましたが、これは私の決意表明みたいなことなのですよ。これからもタカ君の事を義弟として思う、という決意表明。竿姉妹ならともかく、恋敵にはならないという決意。

 

「そういえばコトミちゃんは時さんたちと勉強会らしいですが、効果あると思いますか?」

 

「やろうという気持ちがあるのであれば、きっと効果もあるのではありませんか?」

 

「そうだと良いんですけどね……後で私たちが面倒を見る時、少しでも知識が身についていれば楽が出来ますからね」

 

「タカトシさんが楽を出来れば、自分の為に使える時間が増えますからね」

 

 

 確かに、タカ君が自分の為に使える時間が増えれば、もしかしたら彼女を作ろうと思うかもしれない。そうなればこの膠着状態を打開出来るかもしれないものね……

 

「そうなると、サクラっちとデートしたりするのかな?」

 

「な、何で私なんですか?」

 

「だって、他にタカ君とデートしたことある人っているっけ?」

 

「さぁ……私は知りませんが……」

 

「いてもおかしくはないでしょうが、サクラっちほど意識されてる子はいないと思うよ」

 

 

 何だか胸がチクチクと痛むけど、タカ君とサクラっちは私から見てもお似合いだしね……




ウオミーも複雑ですねぇ……

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