桜才学園での生活   作:猫林13世

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何故生徒会室に貼った……


目標

 生徒会室に入ると、何故か『禁酒』と書かれた紙が壁に貼られていた。

 

「あの、これは?」

 

「あぁ。さっき横島先生が来て貼っていったんだ。なんでも、お酒で失敗したからと」

 

「自分の部屋に貼ればいいだろうが……」

 

 

 タカトシのツッコミは最もだったので、私も隣で頷いてみせる。そもそも学校内でお酒を呑んだら、その時点であの人クビよね……

 

「まぁタカトシの言い分は最もだが、目標をこうして紙に書いて貼るというのは良いものだな」

 

「私たちもやってみる~?」

 

「そうだな……」

 

 

 何時もならすぐ喰いつきそうな会長が、何処か恥ずかしそうに考え込んだ。これはもしかして……

 

「会長、家の壁になにか貼ってるんじゃないですか?」

 

「そ、そんな事ないぞ! 別に何もやっていない!」

 

「そうやってムキになるの、怪しいですよ?」

 

「グヌヌ……」

 

「会長はですね――」

 

「また音もなく現れたな……」

 

 

 突如現れた畑さんに驚いた私たちを代表してタカトシがツッコミを入れてくれた。それにしても、何処から現れたのかしら……

 

「まぁまぁ。それで天草会長ですが、部屋の壁に1サイズ上のブラを――」

 

「何故お前がそれを知っている!?」

 

「ダイエットの逆ですか? 1サイズ下の服を買う事で、それを着ようと頑張れるとかいう」

 

「でも、シノちゃんの場合努力でどうにかなるものなのかな~? 豊胸だって言って、もう三年生だよ? 確か一年の時からずっと言ってるよね?」

 

「こ、これでも努力してるんだ! バストアップ体操をしてみたり、自分で揉んでみたり」

 

「あの、そういう話は俺がいないところでしてもらえますか? 別に気にしませんけど、シノ会長の方が恥ずかしいのでは」

 

「た、タカトシ!? そうだ、こいつがいたんだったな……」

 

 

 完全にタカトシの存在を失念していたようで、会長は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「それじゃあ、私はこれで」

 

「どうするんだよ、この空気……」

 

 

 元凶である畑さんが逃げ出して、タカトシはそう呟くしか出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえずシノちゃんが復帰したので、私たちも目標を書くことにした。

 

「アリア先輩はさすがにお上手ですね」

 

「一応書道も習い事の一つだからね」

 

「字が生きているようです」

 

 

 タカトシ君に褒められ、私はかなり浮かれてしまった。昔だったら下の口がびちゃびちゃになっちゃった、とか平気で言ってただろうけど、今はそんな事言えないよね。

 

「タカトシ君も上手だよね」

 

「俺のは特に上手くも無いと思いますが。普通に書いただけですし」

 

「こうしてみると、私が一番字が下手なのか?」

 

「会長のも十分お上手ですよ」

 

「だが、萩村も達筆だし、私だけごく普通の字じゃないか……」

 

「俺のだって普通の字ですよ? シノさんだけが特別変なわけじゃないですって」

 

 

 さすがタカトシ君。ここでシノちゃんの事を『会長』と呼ばないで『さん』付けで呼ぶことで、シノちゃんの機嫌の回復を狙うだなんて。これが計算じゃなくって天然だから、威力も倍増よね、きっと。

 

「タカトシにそういってもらえると自信になるな」

 

「ところで、この目標ってどこかに貼るんですか?」

 

「各自、自分の部屋にでも貼っておけばいいだろ」

 

「というかタカトシ。アンタまだ成績を上げようと思ってるの?」

 

「いや、実はこれは『コトミの』って書きたかったんだが……」

 

「なるほど……それじゃあそれはコトミの部屋に貼っておきなさいな」

 

 

 タカトシ君が書いた字は『成績UP』だ。もちろんタカトシ君自身も目標にしてるのだろうけども、確かにコトミちゃんの方がしっくりくるわね。

 

「それじゃあ、今日はこれで解散だ!」

 

「お疲れ様でした」

 

 

 シノちゃんの終了の挨拶に、私たちはすぐに反応出来なかったけど、タカトシ君だけはちゃんと返事をする。この辺りもさすがタカトシ君よね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってきた私は、机のところにタカ兄の書が貼られている事に気付き、急いでタカ兄のところへ向かった。

 

「ちょっとタカ兄! あれって何!?」

 

「あぁ。今日生徒会でちょっとな」

 

「何で私のところに貼るのさ~!」

 

「少しはプレッシャーになるかと思って」

 

「プレッシャーだよ! あんなの貼られちゃ常にタカ兄に監視されてるみたいじゃないか~」

 

 

 そんな状況じゃ、おちおちソロ活動も出来ない……いや、待てよ。常にタカ兄に見られているという事は、私のソロ活動をタカ兄に見せつけるチャンスなのでは?

 

「また馬鹿な事考えてるだろ。そんなだから成績が上がらないんだろ」

 

「ちゃんと勉強はしてるってば。今日だってほら!」

 

 

 私は、授業中にあった小テストをタカ兄に見せる。今日のは結構うまくいったので、それなりの点数なのだ。

 

「これに慢心しないで、しっかりと予習復習をして身につけなければ意味がないぞ」

 

「分かってるけど、たまにはご褒美とか欲しいかなって」

 

「七十点でご褒美なんて出せるか。せめて九十点にしろ」

 

「それは無理だって! 八十点で何とか……」

 

「まぁ取れてから交渉するんだな」

 

「タカ兄、厳しい……」

 

 

 バッサリと斬り捨てられ、私はそう呟くしか出来なかった……というか、私にとって七十点は快挙なんだけど、タカ兄にとってはダメダメな点数なんだろうな……




タカトシも達筆そうだし……

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