桜才学園での生活   作:猫林13世

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直にしてる人がいますが……


美味しい思い

 衣替えシーズンという事で、風紀委員主体で我々生徒会役員も校門で服装チェックを行う事になった。

 

「ほらそこ! ちゃんとシャツは中にしまいなさい」

 

「ご、ゴメンなさい」

 

「まったく、衣替え関係なく注意しなければいけない生徒が多いな」

 

「その為の服装チェックですから」

 

「おう、五十嵐。ん? タカトシと萩村は何処に行った?」

 

「先ほど横島先生に呼ばれて、何処かに行きましたけど」

 

「そうか」

 

 

 横島先生の頼み事ということは、恐らくろくでもない事なんだろうが、決めつけるのも良くないか……

 

「人数が減ったが、しっかりと服装チェックは行うぞ」

 

「当然です。ここで問題ありと判断された生徒は、風紀委員会が管理しているリストに載せる事になります」

 

「問題児リスト、ということか?」

 

「そう判断していただいて構いません」

 

「我々には縁がないものだな」

 

「そうですね。最近は下ネタ発言も減ってきていますので、会長と七条さんはリストから外れています」

 

「何っ!? ということは、以前はリストに載っていたという事なのか?」

 

「えぇ」

 

 

 知らなくても良かったことを知り、私は少しモチベーションが下がった。だが現在は載っていないという事は、それだけ自制が出来ているという事だろうな。

 

「さて、そろそろ校門を閉める時間だが……コトミの姿を見てないな」

 

「また遅刻ですか……津田さんは反省していないのでしょうか」

 

「タカトシが怒ってるはずだし、最近はカナも注意しているはずだが」

 

 

 それでも改善されないのは、アイツが何とかしなければと思っていないからだろうな……タカトシやカナがいくら怒ったところで、コトミ自身が変わろうとしなければ変わらないだろう。

 

「時間だね」

 

「そうだな」

 

 

 アリアが腕時計を見ながら、門を閉める時間だと伝えてくれたので、私はゆっくりと門を閉めた。そうして五分後に向こうから走ってくる女子生徒の姿が見えた。

 

「せ、セーフ?」

 

「誰がどう見てもアウトだ」

 

「あれ? タカ兄がいると思ったんですが、今日は会長とアリア先輩とカエデ先輩の三人だけなんですか?」

 

「タカトシ君とスズちゃんは横島先生のお手伝いだね」

 

「津田さん! 先月から数えてこれで十五回目の遅刻ですよ」

 

「まだHRの時間じゃないですし、遅刻扱いは勘弁してください」

 

「駄目だな。職員室に行って遅刻届を貰ってくるように」

 

「そんな~」

 

 

 コトミに無慈悲なる宣言をして、私たちも教室に向かう事にした。ちなみに今日私たちがチェックした中で、遅刻扱いはコトミだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝横島先生から言われたのは、最近生徒会室の中と周辺が汚れているから、一度本気で掃除してほしいということだ。実際スズと二人でチェックしに行ったら、確かに汚れが目立っていたので、放課後は生徒会役員で掃除をする事になったのだ。

 

「――コトミがホント迷惑をかけてしまって、申し訳ございません」

 

「タカトシが悪いわけじゃないだろ。注意しても変わろうとしないコトミが悪いな、ここまでくると」

 

 

 掃除の前に愚妹の遅刻を謝ってから、俺は廊下を集中的に掃除する事になった。

 

「お兄ちゃんも大変ね」

 

「見限っても良いんだけど、それをしたら完全にダメ人間になりそうだし……世間様に迷惑をかけないようにするためにも、もう少し面倒を見なければいけないと思ってる」

 

「ホント、ご苦労様……」

 

「身内の恥を晒すのは避けたいからね」

 

 

 アイツの事だから、ホイホイと騙されて警察のご厄介になるようなことをしでかすかもしれないし、そんなことされるのなら、俺が我慢してしっかりとさせるよう努力した方が何十倍もマシだからな……

 

『タカトシ。悪いがドアの廊下側のガラスを拭いてくれないか?』

 

「構いませんが、何でこんなに汚れてるんですか?」

 

 

 こんな所、誰も触らないと思うんだが……

 

『そういえばこの間、横島先生が窓ガラスに胸を押し付けた時のエロスを表現するとかいって胸を押し当ててたけど、もしかして直あてだったのかな?』

 

「あの人は……」

 

 

 念入りに拭いておいた方がよさそうだと、ガラス越しにアイコンタクトでシノ会長と認識を共有し、俺と会長は必死に窓ガラスを拭き続ける。

 

「あっ、ゴメン」

 

『あっ、ゴメンね』

 

 

 窓ガラスを拭くのに集中していた所為か、スズが俺の背中に、アリア先輩がシノ会長の背中にぶつかり、二人揃ってバランスを崩してガラス越しにキスをしてしまった。

 

「これは問題ですね」

 

「私たちも悪かったけど、これは問題にするべきだよ」

 

「ちょっとまて! ガラス越しだ! 本当にしたわけじゃないぞ! というか、実際にタカトシとキスしているアリアに私を責める権利はないだろ!」

 

「というか、スズ。なんであんなに勢いよくぶつかってきたんだ?」

 

 

 普段にスズの勢いならあそこまでバランスを崩す事は無かったと思うんだがな……何か急いでいたんだろうか?

 

「虫がいて、ちょっと焦ってたのよ……」

 

「言ってくれれば処理したのに」

 

「素直にタカトシを頼ればよかったって、今は思ってるわよ」

 

「とにかく! ガラス越しだからノーカウントだ! この話題はこれで終わり! さぁ、掃除を続けるぞ!」

 

 

 強引に話を終わらせたシノ会長は、掃除中どことなく嬉しそうに感じられたが、スズもアリアさんも気にした様子はなかった。




ガラス越しなのでノーカウントで

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