桜才学園での生活   作:猫林13世

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あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします。


集中力を高めるには

 コトミの試験勉強を見ていたのだが、どうにも集中力が続いていない気がする。ゲームやら遊びやらなら何時間でも集中出来ているというのに……

 

「はぁ……」

 

「どうかしたのか?」

 

「タカトシ君が生徒会室でため息なんて最近無かったんじゃない?」

 

「先ほどコトミの件で職員室に呼ばれまして……今度の試験で平均以下ならいろいろとマズいそうです」

 

「それでため息か?」

 

「それもありますが、アイツに勉強を教えても集中力が続いていないんですよね……何かいい方法ありませんかね」

 

 

 こっちの集中力は問題ないのだが、コトミの集中力を上げる方法が良く分からない……というか、自分の事じゃないのに、何で俺はここまで追い込まれているんだ?

 

「スポーツなどをすると集中力が高まると聞いたことがあるぞ」

 

「最近ではパターゴルフなどがブームですよね」

 

「パターゴルフか……でもスズ、ここら辺にパターゴルフが出来る場所なんてあったっけ?」

 

 

 時間的にも遠出をしなければいけない場所はなるべく避けたい。それくらいコトミの成績はヤバいらしいのだ。

 

「パターゴルフ場は無いけど、ウチのゴルフ場を使えば大丈夫だと思うけど」

 

「いや、本家を代理にしちゃマズいんじゃないですか?」

 

「そうかな? じゃあ試しにタカトシ君がやってみて、問題なさそうならコトミちゃんにもやってもらうっていうのはどうかな?」

 

「いや、俺がマズいと言ったのは――」

 

「よし! それじゃあ今週末はアリアの家でパターゴルフ大会だ!」

 

「えっ、私たちもやるんですか?」

 

「当然だろ!」

 

 

 何で俺の周りは人の話を聞かない人が多いんだろうか……というか、会長たちは集中力に問題はないんじゃないだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日はタカトシ君たちと一緒にパターゴルフをやるために七条家が保有するゴルフ場にやってきています。案内人として出島さんに帯同してもらい、やり方などのレクチャーを受けて、漸くパターゴルフ大会が開始されるらしいんだけど、タカトシ君が頭を押さえているのは何でだろう……

 

「距離的には問題ないでしょ?」

 

「問題ないけどさ……俺が今抱えている問題は、俺たちがやったところでコトミの集中力に一切関係ないって事なんだけど」

 

「あっ……」

 

 

 タカトシ君が言ったように、これはコトミちゃんの集中力問題からきているものなので、私たちがやってもあんまり意味は無かったんだっけ……

 

「まぁ今は細かいことは気にするな!」

 

「俺にとっては細かくないんですが……妹が退学になるかどうかの瀬戸際ですし」

 

「そこまで酷いの?」

 

「残念ながら……」

 

 

 タカトシ君が疲れ切ったサラリーマンの如く深いため息を吐く。

 

「あれ? そういえば出島さんは?」

 

「さっき何処かに行っちゃいましたが――」

 

「タカトシ様。コトミ様をお連れしました」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「何で私はここに連れてこられたの?」

 

「コトミの集中力を高めるため、今日はパターゴルフで集中力を鍛えてもらう」

 

「私、それなりに集中力ありますよ? ゲームを一晩中やっても集中力乱れませんし」

 

「勉強に向ける集中力よ。アンタの所為で、タカトシが疲れ切った中年サラリーマンのような雰囲気を醸し出しているんだから」

 

 

 何か反論しかけたタカトシ君だったけど、言っても意味がないと思ったのかもう一度ため息を吐くだけに留めたようだ。

 

「とにかく、コトミが退学になるのは私たちも寂しいからな! きっちり鍛えて勉強に集中してもらう」

 

「退学って何ですか?」

 

「なんだ、聞いていないのか?」

 

「まぁ、言ったところで焦らないでしょうし、無駄な事に頭を悩ませるのなら勉強してもらった方が良かったですしね」

 

「えっ? 私の成績ってそこまでヤバいの?」

 

「遅刻の回数、授業中の居眠り、宿題未提出などなど、様々な要因が重なって退学か否かの瀬戸際まで追い込まれてるんだ。少しは危機感を覚えなかったのか?」

 

「だって、タカ兄が何とかしてくれると思ってたから」

 

「とにかく! 今日集中するコツを掴んで、明日から試験に向けて猛勉強してもらう! 何なら我々が津田家に泊まり込みでコトミの面倒を見てもいいぞ! タカトシはいろいろとあるだろうし」

 

 

 シノちゃんの言葉に、私とスズちゃんも力強く頷く。タカトシ君の為にも、コトミちゃんにはちゃんとしてもらった方が良いし、何よりこれ以上タカトシ君がやつれるのを見ていられないものね。

 

「わ、分かりました! 今日はしっかりとパターゴルフで集中力を高め、明日から頑張ります!」

 

「本当なら今日から頑張ってほしいんだが……まぁ、後は義姉さんなんかも手伝ってくれるでしょうし、皆さんの食事などは俺が用意しますから、コトミの事をよろしくお願いします」

 

 

 タカトシ君が深々と頭を下げると、コトミちゃんが慌てたように頭を下げる。恐らくタカトシ君が頭を下げる必要はないと気づいたんだろうな。

 

「よし! 暗い事は一旦忘れて、今はパターゴルフを楽しもうじゃないか!」

 

「そ、そうだね! タカトシ君もほら!」

 

「はい……ほんとすみません……」

 

 

 何だか可哀想なくらいタカトシ君が追い込まれてる気が……これはなんとしてもコトミちゃんにはしっかりしてもらわないと!




コトミの事で追い込まれるタカトシ……

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