桜才学園での生活   作:猫林13世

369 / 871
変態が増えた……


突然の雨

 集中力向上の為にパターゴルフをしていたのだが、急に雨が降ってきて中断しなければいけなくなってしまった。

 

「雷まで鳴ってるな。諸君、金属製のものを手放すんだ」

 

 

 シノ会長の指示で、私たちはパターを置いて屋根のある場所まで非難する事にしたのだが、出島さんが何かもぞもぞやってるのが気になった。

 

「出島さん、なにをしてるんですか?」

 

「いえ、金属製品を手放す為にブラジャーを――」

 

「それは余裕でセーフですので、出島さんもさっさと屋根のある場所に移動してください」

 

 

 スズ先輩のツッコミで諦めたのか、出島さんも大人しく屋根のある場所まで移動し、一緒に雨宿りをする事になった。

 

「雷は高いところに落ちるので、それを考えて避難すれば問題ありません。ましてやこの辺りには避雷針もありますので、雨さえ止めば再開する事が可能です」

 

「さすが七条グループが保有するゴルフ場だな……安全対策も万全という事ですか」

 

「お嬢様に万が一の事があったら、私は生きていけませんので」

 

「大袈裟だよ~」

 

 

 主従の微笑ましいやり取りを見ながら、私は心がほっこりした。そんな時スズ先輩がもじもじしてるのが目に入った。

 

「どうかしたんですか、スズ先輩? もしかして雷が怖くてお漏らししちゃったんですか?」

 

「違うわ! っ!? し、七条先輩、トイレってどこにありますか?」

 

「この近くには無いかな……」

 

「そ、そうですか……」

 

 

 なるほど、お漏らしじゃなくて我慢してたのか……

 

「スズ先輩、大、中、小のどれですか?」

 

「中?」

 

「中に入れたものを出すという意味ですよ」

 

「そんな当然の知識のような顔で言われても……」

 

「スズ先輩でも知らないことがあったんですね」

 

 

 何故か誇らしげな気分になったけど、スズ先輩は別に口惜しがってないんだよね……スズ先輩が知らないことを私が知っていたというのに何でだろう?

 

「まぁすぐ止むだろ。気を紛らわせるために世間話でもしようじゃないか」

 

「そうですね」

 

 

 シノ会長の提案で、私たちは世間話に花を咲かせることにした。

 

「最近暑くなってきましたよね~」

 

「そうだな。夏本番が近づいている証拠だ」

 

「夏といえば熱中症対策をしっかりしないといけませんね。特に熱中症は雨上がりになりやすいと言われています。湿度が上がりより暑く感じるからです」

 

「なるほど。ではしっかりと対策しなければいけないな」

 

 

 そう言ってシノ会長がジュースを取り出し私たちに配る。スズ先輩と私はそれを受け取り、しっかりと飲み干した。

 

「って! もうパンパンだよ!」

 

「何で飲んだんですか?」

 

 

 おしっこを我慢してるのは分かってるんだから、受け取っても飲まなければ良かったのに……

 

「もうそこらへんでしてきちゃえば? 我慢してたら身体に悪いよ?」

 

「なっ!? 聞かれてた……くそぅ! 覚えてろよ!」

 

 

 

 タカ兄に聞かれていたのが恥ずかしかったのか、スズ先輩は近くの茂みに逃げ込んでしゃがみ込んだ。恐らくあのあたりで放尿するのだろう。

 

「いい、タカトシ! 目と耳を塞ぐのよ!」

 

「もうタカ兄は塞いでますよ~」

 

「えぇ。タカトシ様は完全に視覚と聴覚を塞いでおります」

 

 

 出島さんと私は、顔を見合わせて頷き、大きく息を吸う。

 

「嗅覚も閉じろ!」

 

「別に深呼吸してるだけですよ~。スズ先輩は自意識過剰ですね~」

 

「まったくです。私たちはただ深呼吸をしているだけです。万が一ロリっ子の尿の臭いを嗅いでも、それはたまたまであって私たちに悪気はありません」

 

「ありまくるだろうが!」

 

 

 私たちがスズ先輩をからかって遊んでいると、背後から無言でタカ兄がオーラをぶつけてきた。恐らく私たちが遊んでるという事を心の目で見抜いたんだろうな……さすがはタカ兄だ。

 

「萩村、出島さんとコトミは大人しくなったから、思う存分出すがいい!」

 

「いや、そういわれるとやり難いんですが……」

 

「大丈夫だよ、スズちゃん。タカトシ君が言ってたように、我慢して溜め込む方が身体に悪いんだから、気にせず出しちゃえば」

 

「分かってはいるんですが……」

 

 

 むぅ……何か話してるのは分かるんだけど、シノ会長とアリア先輩に嗅覚と一緒に聴覚も塞がれちゃったから何を言ってるのかが分からない……これがタカ兄なら読唇術で分かるんだろうけども、生憎私は修得してないから分からない……こんなことなら修得しておけば良かった。

 

「お、終わりました……あの、紙ってありませんか?」

 

「ティッシュで良いならあるぞ」

 

「ありがとうございます……ふぅ、もういいですよ」

 

「あっ、聞こえるし嗅げる」

 

 

 シノ会長に解放されたので、私は嗅覚と聴覚の素晴らしさを体感した。どうやら出島さんも同じようで、私と一緒にもう一度深呼吸をしたのだった。

 

「おっ、晴れてきたな」

 

「これなら再開できそうですね」

 

「あぁそうだな! これだけ晴れれば――」

 

 

 そう言ってシノ会長はグリーンの方に走っていき、力強く宣言した。

 

「お昼にバーベキューが出来るな!」

 

「あれ。そっちなの……?」

 

「もちろん、お昼が終わればゴルフを再開するぞ?」

 

 

 何やら怪しげな感じだったけど、タカ兄は追及する事はしなかった。こうして私たちはバーベキューを楽しんだ後、パターゴルフを再開したのだった。




コトミはダメだな……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。