桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミやトッキーが普通かはおいておきます……


普通の高校生

 いよいよ期末試験も近づいてきたという事で、私とトッキーは諸先輩方に囲まれながら勉強していた。今回平均以下だと、一学期だというのに進級が危ういと言われているので、さすがの私もいつも以上に真剣な面持ちで勉強に勤しんでいるのだが、気持ちだけでどうにかなるのなら、このような状況になっていないのだ。

 

「シノ会長、ここってどうやって解くんですか?」

 

「これはさっきの問題の応用で、考え方はさっきの問題と変わらないんだが」

 

「それじゃあ……こうですか?」

 

「いや、そっちじゃなくてこっちを先に解く事で、よりスムーズに答えにたどり着ける」

 

「トッキーさん、そこはその公式ではなくこっちの公式を使います」

 

「す、すみませんっす」

 

 

 私は今シノ会長に、トッキーはお義姉ちゃんに付きっ切りで数学を教えてもらっている。他の先輩たちは自分の試験勉強に勤しんでいるのだが、誰一人苦労している様子はない。

 

「よし、そろそろ休憩にしよう。あまりぶっ続けでやっても頭に入らないだろうからな」

 

「そうですね。既に一時間半は勉強してますし、コトミちゃんたちはそろそろ限界のようですし」

 

「はへぇ~……」

 

 

 口から何か出そうなくらいヘロヘロになっている私とトッキーだが、会長たちはまったくもってピンピンしているのだ。教える側と教わる側の差はあるとはいえ、二人も集中してたはずだからそれなりに疲れてると思うんだけどな……

 

「あれ? そういえばタカ兄は何処に行ったんですか?」

 

「タカ君なら昼食の買い出しに出かけたよ? スズポンと一緒に」

 

「スズ先輩で戦力になるんですかね?」

 

「私たちもそう思ったが、試験勉強を焦ってする必要がない二人だからな。前日に復習すれば何とかなると言われたら、私たちが介入する余地がないし」

 

「会長たちだって、その程度の勉強で何とかなるんじゃないんですか?」

 

「私たちはタカ君とスズポンのように、全問正解なんて出来ませんから」

 

 

 そうなのだ。タカ兄とスズ先輩は、前日にノートを見直したりするだけで全教科満点という驚異的な結果を叩き出すのだ。会長たちも私のような凡人から見れば凄いのだが、その人たちから見てもタカ兄とスズ先輩は次元が違うらしい……

 

「アリア先輩やサクラ先輩、マキは問題なく勉強を続けてるっていうのに……」

 

「焦っても身になりませんし、ゆっくり理解してくれれば私たちの努力も報われますから」

 

「というか、トッキーは兎も角コトミは普段から復習する時間があるというのに、何故しないんだ?」

 

「普通の高校生は、予習復習なんてしませんよ!」

 

「そうなのか? 私は一応しているんだが」

 

「私もです。習った事を早いうちに自分のものにしておかないと、後々大変ですからね」

 

「ねぇトッキー……」

 

「何だ?」

 

 

 私は信じたくないという顔でトッキーの方を向くと、トッキーも私と同じような顔をしている。

 

「もしかしてなんだけど、私たちの方がおかしいのかな?」

 

「あぁ、私もそんな気がしてきた……」

 

「というか、予習復習って都市伝説じゃなかったの?」

 

「少なくとも私の周りには、そんなことしてるやつはいなかった……」

 

 

 トッキーと二人で頷きあいながら、私たちは自分たちがおかしいのではないという結論に落ち着いた。そうでもしないと気が狂いそうだったから……

 

「そろそろ休憩も終わりで良いだろ」

 

「まだ五分しか休んでいませんよ?」

 

「この二人には時間がないからな。効率よく教えるためには五分の休憩時間も惜しかったんだが、お喋り出来るくらいに回復したなら大丈夫だろう。ほら、さっさと起き上がって勉強するぞ」

 

「シノ会長、スパルタ過ぎますよ……」

 

 

 文句を言っても解放されることはないので、私は自分の身体に鞭打って起き上がり机に向かう。

 

「そもそもコトミのポテンシャルは相当なものだと思うんだが、もう少し努力してみたらどうだ?」

 

「これでも頑張ってるんですけどね……」

 

「でも結果が出てないよね? 普段から私やタカ君が宿題を教えたりしてるのに」

 

「あれはその場しのぎですから」

 

 

 それではいけないと分かってはいるのだが、どうしても楽がしたいのだ。

 

「これじゃあタカトシに本格的に生徒会長の仕事を任せる日は遠そうだな」

 

「あれ? 次の会長ってタカ兄で決定してるんですか? スズ先輩とか、他の人は?」

 

「お前はタカトシ以上に会長らしい二年生を言えるのか?」

 

「……ちょっと思いつきませんね」

 

 

 タカ兄は中学時代こそ生徒会には入っていなかったが、生徒会長以上に全校生徒からの信望は篤かったし、先生たちからの信頼も凄かった。だからこそ、その妹である私の成績が酷かったのに失望されたのかもしれない……

 

「コトミがしっかりと一人で問題なくなった時こそ、私とアリアが生徒会を引退する日なのかもしれないな」

 

「それだったら、私はずっとしっかりしない方が生徒会の為ですね!」

 

「威張ってないでちゃんと勉強しなきゃダメだよ?」

 

「はい、ガンバリマス……」

 

 

 誤魔化そうとしたけどお義姉ちゃんにツッコミを入れられ、私は大人しく勉強する事にした。さすがにこの時期に進級ピンチは私としても焦るしね……




自分も予習復習なんてしなかったな……授業で大体理解出来たし

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