桜才学園での生活   作:猫林13世

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スズがヤバい……


限界を超えて…

 一晩中コトミの相手をして分かった事は、タカトシがいかに凄いか、という事だった。私一人だけだったら、コトミを桜才に合格させることは出来なかったでしょうね……

 

「タカトシ、アンタ凄いわね……」

 

「何かあったの?」

 

 

 ふらふらになりながらキッチンにやってきた私を、タカトシは心配そうに支えて椅子に座らせてくれた。

 

「コトミの相手をしてたんだけど、私じゃそろそろ限界なんだけど……」

 

「そのコトミは?」

 

「一時間前に寝たわ……さすがに寝ずに勉強を再開しても無意味だと思って」

 

「スズも寝たら? 今日は休んでていいから」

 

「そうさせてもらいたいのはやまやまなんだけど、お腹すいちゃって……」

 

 

 空腹のまま寝てもすぐに起きてしまうだろうし、何か食べてからの方が気持ちよく眠れると思って、私はこうしてキッチンにやってきたのだ。

 

「だったら軽く摘まめるものを作るよ。ちょっと待ってて」

 

「お願い……」

 

 

 タカトシが何かを作り始めたのを見て、私は安心感を覚えてそのまま眠ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 顔を洗ってタカ君のお手伝いをしようとキッチンに行くと、スズポンが寝ていた。なんでこんなところで寝ているのか気になって近づくと、タカ君が唇に指をあてて首を左右に振る。

 

「どうしたの?」

 

「コトミの相手で疲れたようです。気持ちよさそうに寝てるので、起こさずこのまま部屋に運ぼうかと」

 

「なら朝ごはんの準備はお義姉ちゃんに任せて、タカ君はスズポンを運んであげて」

 

「それじゃあ、お願いします。といっても、もう大体終わってるんですが」

 

 

 そう言ってタカ君はスズポンを抱っこしてコトミちゃんの部屋に運んでいった。恐らく明け方までコトミちゃんに勉強を教えていたんだろうけど、スズポンって確か夜弱いんじゃなかったっけ?

 

「それだけコトミちゃんの成績が危ないって事なんだろうな……」

 

「おはよう、カナ」

 

「おはようございます、シノっち。トッキーさんの方はそこまで問題ではなさそうですね」

 

「トッキーはドジっ子なだけで、基礎はしっかりできているからな」

 

「先ほどまでここにタカ君とスズポンがいたのですが、コトミちゃんは結構危なさそうなんですよ」

 

「何となく聞こえていた。萩村が頑張ってくれているようだが、今日は我々がコトミの相手をしなければいけないだろうな」

 

「スズポンは限界を突破してる様子ですし、今日もコトミちゃんを押し付けるのは可哀想です」

 

「トッキーはタカトシに任せて、我々でコトミを担当するとするか」

 

「義妹ですから、最終的には私が責任をもって面倒を見ますが、皆さんの力を借りたいと思います」

 

 

 私一人で担当しても、恐らくはスズポンの二の舞を演じるだけでしょうから、ここは全員でコトミちゃんを立派に成長させるのが得策でしょう。もちろん、コトミちゃんがやる気を出してくれないと意味はないですが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十時近くに目を覚ましたコトミを、我々がみっちり勉強を教える事で、コトミに二度寝をさせる暇を与えなかった。本当はまだ寝ていたいのだろうが、寝る間も惜しんで勉強しなければ間に合わないのだから、寝かせてやるわけにはいかないのだ。

 

「眠いですよ~……」

 

「後で休憩をやるから、今はここまでしっかり理解してもらおうか」

 

「寝ぼけ頭で詰め込まれても、覚えませんって……」

 

「頭の片隅にでも残っていれば、本番で役に立つだろうが」

 

「試験中に見覚えがある問題があれば、もしかしたら頭の片隅から引っ張り出せるかもしれませんしね」

 

「それは皆さんが優秀だからですよ……」

 

 

 目をこすりながらも、コトミは私たちの説明を聞きながら問題を解いていく。正解率はさほど高くないが、昔みたいに全問不正解という事は無くなってきている。

 

「コトミも基礎はそれなりに叩き込まれてるようだから、後は応用と問題を理解する速さを磨けば、平均以上は簡単になると思うぞ」

 

「そうなればいいんですが、私集中力が続かないんですよね……この間のパターゴルフも、途中から集中力が乱れて、なかなか入れられませんでしたし」

 

「ゲームや漫画に対しての集中力が、何故勉強に発揮出来ないのか疑問だ」

 

 

 格ゲーなどを数時間ぶっ続けでやることが出来るのなら、その応用で勉強も数時間くらいぶっ続けで出来るはずなんだがな……

 

「遊びと勉強とは違いますよ~。そもそも、勉強したくないって気持ちが強すぎて、集中力が散漫になってしまうのかもしれません」

 

「なら、勉強したいと自分に言い聞かせてみてはどうだ? もしかしたら、集中力が持続するかもしれないぞ」

 

「自分の気持ちに嘘を吐いてまで集中力を高めたいとも思いませんし……でも、集中しないと学校にいられなくなっちゃうかもしれないし……」

 

 

 何やら葛藤が見受けられるが、コトミは頭を振って勉強に集中しようと問題を睨みつけている。

 

「会長、これってさっきの問題の応用ですか?」

 

「そうだ。それが分かればすぐに解けると思うぞ」

 

「スズ先輩が必死になって基礎を叩き込んでくれたお陰で、なんとなく出来そうな気がしてきました」

 

「そうか」

 

 

 それなら萩村の苦労も報われることだろう。ちなみに、萩村はまだ起きてきていないがな……




コトミの相手はこれくらいじゃないと……

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