桜才学園での生活   作:猫林13世

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雪降り過ぎだろぅ……ここ神奈川だぞ……


コトミの試験結果

 諸先輩方、なによりタカ兄に迷惑をかけてしまった事は、私も重々理解している。だから今回のテストには、いつも以上に気合いを入れて臨んだ。

 

「トッキー、さっそく生徒会室に行こう!」

 

「あぁ……テスト終わりだというのに元気だな、お前……私は全部出しきって疲れた」

 

「私も疲れてるけど、ここで倒れるわけにはいかないからね」

 

「また厨二発言? 生徒会室に行くなら私もついて言って良い? 採点、私もやってもらいたいし」

 

「マキなら採点してもらわなくても平均以上なのは確定な気もするけど、仲間は多い方が良い! さぁ、生徒会室に出発だ!」

 

 

 トッキーを無理矢理立ち上がらせ、背中を押しながら私たちは生徒会室に向かう。タカ兄の採点は正確だし、その上スズ先輩やシノ会長がタカ兄の採点のチェックをしてくれるのだから、間違いなど起こるはずがない。

 

「タカ兄、来たよ」

 

 

 何時も怒られるので、今日はしっかりとノックをして、中からの返事を待つ。

 

『はーい、ちょっと待ってね~』

 

 

 どうやら中にいるのはアリア先輩だけのようで、私たちは少し気が抜けてしまった。

 

「お待ち同様。タカトシ君なら職員室に呼ばれちゃったから、少し待っててくれって言ってたよ」

 

「職員室に? タカ兄が?」

 

 

 私が呼び出されるならまだ分かるけど、タカ兄が職員室に呼び出されるなんて珍しいな……いったい何の用で呼び出されたんだろう。

 

「別に心配しなくても、アンタの事で呼び出されたわけじゃないわよ」

 

「スズ先輩……」

 

 

 いたことに気が付かなかった……

 

「ちょっとシノちゃんと夏休みの諸注意についての最終確認と、横島先生の監視を頼まれてるんだと思うよ~」

 

「横島先生の、監視……?」

 

「ほら、あの人前科があるから」

 

「そういえば海で男の人を襲ってたりしてましたね」

 

 

 普通なら警察のご厄介になっててもおかしくないんだろうけど、双方合意という事で厳重注意で済んだらしいんだけど、あの時は確か出島さんも一緒だったから、恐らく七条家の力が働いたんだろうな。

 

「待たせたな!」

 

「シノ会長、その登場の仕方は如何なものなんでしょうか……」

 

「コトミ相手なら問題ないだろ?」

 

「まぁ、私は気にしません」

 

 

 シノ会長の隣で、タカ兄が頭を抑えながらため息を吐いた。家でも学校でも苦労してるんだな、タカ兄って……今後気をつけよっと。

 

「それで、三人とも問題用紙を提出してくれ」

 

「はい」

 

 

 私たちは三日分の問題用紙をタカ兄に提出し、タカ兄はそこに書き込まれている解答に目を通していく。我が兄ながら、そのスピードはすさまじい物だ……

 

「待ってる間、冷たいお茶でもどうぞ~」

 

「あっ、ありがとうございます」

 

 

 アリア先輩にお茶を出してもらい、私たちはそれで一服する。自分でも気づいていなかったが、物凄く喉が渇いていたようで、あっという間に飲み干してしまう。

 

「あらあら~、おかわりいるかしら?」

 

「いえ、大丈夫です。あんまり飲み過ぎると、ここで放尿プレイに発展してしまいますから」

 

「馬鹿な事言ってないで、もう少し緊張感を持ったらどうなの?」

 

「こうでもしないと正気を保てないんですよ……本音を言えば、今すぐ逃げ出したいです」

 

 

 逃げたところで結果は変わらないのだが、数日間寿命が延びる気がしている……つまり、それくらい私は手ごたえを感じていないのだ。

 

「うーん……」

 

「タカトシ君、どうかしたの?」

 

「いえ、このテストですと平均点はどのくらいかと計算しているんですが、はっきりとは分からないんですよ」

 

「大体で良いんじゃないか? さすがのタカトシだって、全ての生徒のテストを見てるわけじゃないんだしさ」

 

「そうだな……」

 

 

 アリア先輩とスズ先輩に相談して、タカ兄は各教科の平均点を導き出している。私たちも覗きたいが、シノ会長がしっかりと見張っている為に見る事が出来ない。こういうときの連携はさすがだと思う……

 

「こんな感じですかね?」

 

「そうね。私もそう思うわ」

 

「私も~。シノちゃんはどう思う?」

 

 

 見張りをアリア先輩が引継ぎ、シノ会長にも意見を求める。

 

「そうだな……もう少し低い気もするが、この程度だろう」

 

「なら、これで計算しましょう」

 

 

 どうやら結論が出たようで、タカ兄が私たちの平均点との差を書き込んでいる。ここで平均以下だったら、私の夏休みは消えてなくなり、下手をすれば高校生活が終わってしまうかもしれないのだ……

 

「八月一日さん、平均八十三点」

 

「相変わらず凄いな……学年一位もあり得るんじゃない?」

 

「上位十名には入ってると思うよ」

 

 

 

 タカ兄がマキに問題用紙を返しながらそういうと、マキは恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

「次に時さん。平均六十八点」

 

「タカ兄……私は?」

 

 

 我慢出来ずに尋ねると、タカ兄は一度瞼を閉じてから答えた。

 

「平均七十二点。これなら退学は無いだろう」

 

「本当っ!? やったー!」

 

「その代わり、今後もこれを続けていかなければ、すぐに退学問題が浮上してくるだろうから、生活態度の改善と授業中の居眠りなど、問題行動を慎むように」

 

「ははぁー」

 

 

 深々と頭を下げながら、私はタカ兄から返された問題用紙を見返し、丸の多さに驚いたのだった。




コトミも頑張りました

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