桜才学園での生活   作:猫林13世

377 / 871
真面目に働くのか心配


海の家のバイト

 コトミだけでバイトに行かせるのも心配という事で、我々生徒会役員も古谷先輩の紹介で海の家でバイトをする事になった。

 

「問題を避ける為に、店員は白シャツにハーフパンツだ」

 

「何故この格好で問題が避けられるんですか?」

 

「あんまり刺激的な恰好をしていると、ナンパとかに巻き込まれる可能性があるからな。なるべく地味な恰好をするんだ」

 

「そうなんですね~」

 

 

 コトミが感心しながら古谷先輩の話を聞いている横で、アリアが背中を掻こうと腕を伸ばした。

 

「届かない……」

 

「挑発的なポーズも禁止だー!」

 

「ど、どうしたのシノちゃん?」

 

「アリアはもう少し自分のプロポーションを自覚しろー! そんな恰好したらすぐに襲われるだろうがー!」

 

「はいはい、天草のコンプレックスは知ってるから、七条も少しは天草の気持ちを汲んでやれ」

 

「そう言われましても、背中が痒くて」

 

「どの辺りですか?」

 

 

 萩村がアリアの背中を掻いてやることで、セクシーポーズ問題はなんとか解決した。

 

「ところで、津田君はどうしたんだい? お前たちが来るって事は、てっきり津田君も来ると思ってたんだが」

 

「タカ兄なら、元々のバイトで今日は来られません。明日お客さんとして来てくれるそうですが」

 

「そうなのか。せっかく女性客倍増を見込んでたんだがな」

 

「タカトシ君がここにいたら、それこそナンパされ放題だったんじゃないですか?」

 

 

 確かに、アイツはこの格好をしていても魅力的だっただろうし、海の家に来た女という女からナンパされていたかもしれないな。

 

「津田君には厨房を任せようと思ってたんだけど、それでもつられる女性客はいるだろ?」

 

「まぁ、タカ兄は料理上手ですからね~」

 

「私たちよりも上手いですから、女子としてのプライドがちょっと傷つきますが、アイツは主夫だからということで何とか納得してるんですけどね」

 

「津田君は主夫だったのか」

 

「コイツが一切家事出来ませんから」

 

「いやー、それほどでもないですよ~」

 

「褒めてない!」

 

「あいたっ!?」

 

 

 萩村に脛を蹴り上げられ、コトミはその場で飛び跳ねながら痛みに耐えていた。そうだよな、こいつが少しでも家事が出来ていれば、もう少し私たちと過ごす時間が確保出来ていたかもしれないんだよな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開店してしばらくはまばらだったお客さんも、お昼時になればかなりの数が訪れ、あっという間に店の中は人で埋め尽くされていた。

 

「うひゃー! こんなに大変なんて聞いてなかったんですけど」

 

「ぶつくさ言わないでさっさと運びなさい」

 

 

 スズ先輩に怒られ、私は出来上がった料理をお客さんに運ぶ。

 

「ところてんとイカ焼きお待ちしました~」

 

 

 男性客にところてん、女性客にイカ焼きを渡しながら、私は妄想を楽しんでいた。

 

「おいコトミ」

 

「はい、なんですか?」

 

「今、前立腺プレイヤーと触手プレイヤーだって思っただろ」

 

「何故それをっ!? まさか、心眼の持ち主だと!?」

 

「単純に私も注文を受けた時に思っただけだ」

 

「さっすがかいちょー! 下発言は減ってきても、相変わらずのレベルの高さですね~」

 

「タカトシがいないからな」

 

「シノちゃーん! こっちおねがーい!」

 

「おっと、それではコトミもしっかり働くんだぞ」

 

 

 シノ会長はアリア先輩に呼ばれて行ってしまったけど、相変わらずの同類だという事が分かってホッとした。最近真面目な感じしかしてなかったけど、基本的に会長もこちら側の人間だもんね。

 

「コトミ、これお願い」

 

「はーい! って、スズ先輩も運んでくださいよ~」

 

「私は裏方の仕事なのよ」

 

「何でですか~?」

 

「……子供が働いてると思われない為に、私は人前に出ちゃいけないんだと」

 

「あらら~」

 

 

 古谷先輩も色々と考えて配置してるんだな~と思いつつ、私はスズ先輩に八つ当たりされないように完成した料理を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピークも過ぎ、漸く一息つけるくらいにお客さんは減り、私たちは休憩を貰ってのんびりしている。

 

「いや~、働くって大変ですね~」

 

「コトミは途中から死にそうになってたな」

 

「だって、あんなに混むなんて聞いてなかったんですもん」

 

「海の混み方を見れば、あれくらい想像がつくだろ」

 

「そうですけど、もう少し楽が出来るかな~って思ってたから、より大変でした」

 

「でも、タカトシ君やカナちゃんが働いてるお店は、もっと忙しいんじゃない?」

 

 

 ただでさえファストフード店は混むって聞くし、そこにタカトシ君やカナちゃん、サクラちゃんといった餌が加われば、それだけで混みそうな気がするのよね。

 

「まぁ、タカ兄たちがいない時といる時とじゃ、売り上げがだいぶ違うってお義姉ちゃんから聞いたことがありますけど」

 

「いるだけで利益を上げているのか……さすがタカトシだな」

 

「バレンタインの時、名も知らない女子から大量にチョコを貰ってきましたからね~。そんな相手にも律儀にお返しを用意してましたが」

 

「その辺りもさすがだな……」

 

 

 そんなことされたら、ますますファンが増えちゃうんじゃないかって思ったけど、どうやらシノちゃんやスズちゃんもおんなじことを思ったようで、少し頬を膨らませている。タカトシ君本人がいないから嫉妬し放題だと思ったのかしらね。




タカトシがいたら大変だったら……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。