桜才学園での生活   作:猫林13世

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あんまり真面目に働いてなかった気もするが……


バイトの打ち上げ

 水着コンテストで優勝したシノちゃんをお祝いするために、私たちは海の家で祝勝会を開くことにした。

 

「それじゃあ、さくらなのに優勝した天草を祝して――」

 

「先輩が参加させたんでしょうが!」

 

「まぁまぁ、堅いこと言うなよ。それじゃあ、乾杯!」

 

 

 古谷先輩の音頭で乾杯をして、私たちは一気にコップを空にした。もちろん、お酒ではなくジュースだけどね。

 

「それにしても、ここの浜辺の男どもは貧乳趣味だったのか?」

 

「先輩だけどはりたおーす!!」

 

「冗談だ。それにしても、てっきり七条が優勝すると思ってたんだがな」

 

「私じゃシノちゃんには勝てませんよ~」

 

「そうですね。シノっちは大人びた見た目でつつましやかな胸という、ある意味最強のコンボを持っていますから」

 

「喧嘩売ってるんだな? それは喧嘩を売っているんだよな?」

 

 

 カナちゃんに詰め寄るシノちゃんを、タカトシ君が片手で押さえて落ち着かせた。

 

「良いんですかね? 俺や義姉さん、サクラさんはここでバイトしてたわけじゃないんですが」

 

「良いんだよ。津田君がここにいるだけで、客寄せになってるんだから」

 

「はぁ……」

 

 

 さっきから凄い数の女性がこの海の家にやってきている。既に私たち以外のバイトが来ているので、お店が回らないという事はないのだが、それにしても凄い数のお客さんよね。

 

「とりあえず夕方には帰って、明日からはタカトシの家で宿題を片付ける事にするか」

 

「何でウチなんでしょうか?」

 

「コトミが逃げるからだ」

 

「なるほど」

 

「えー、そんなこと言って、本当は会長たちはタカ兄と一緒の部屋で――」

 

「それ以上は言わない方が良いぞ? 楽しい夏休みを過ごしたいならな」

 

「グッ!? この威圧感は……」

 

「厨二禁止」

 

 

 タカトシ君に頭を叩かれ、コトミちゃんはチロリと舌を出して反省したように見える。

 

「まぁ宿題は早めに片付けておいた方が、後々楽しい夏休みを過ごせるというのは事実だ。カナや森も参加するんだろ?」

 

「当然です。コトミちゃんの宿題問題は、義姉である私も関係していますし、サクラっちにも手伝ってもらった方がタカ君も楽が出来るでしょうし」

 

「「(あぁ、主にツッコミか)」」

 

 

 タカトシ君とサクラちゃんが似たような表情を浮かべているのを見て、私はちょっと嫉妬してしまった。波長が似ているから仕方ないのかもしれないけど、タカトシ君とサクラちゃんは仲が良すぎるような気がするんだよね。

 

「とりあえず、今は会長の優勝を祝して騒ぎましょう!」

 

「あんまり騒ぐと店に迷惑だろうが」

 

 

 ハイテンションで騒ぎ出したコトミちゃんを叱りつけて、タカトシ君はため息を吐いてジュースを飲み干したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰りのタクシーを呼ぼうとしたら、何処からか見たことがある車がやってきた。

 

「お嬢様、お迎えに上がりました」

 

「ありがと~」

 

「出島さんでしたか……」

 

「皆様も、ついでにお送りしますので、どうぞお乗りください」

 

「ありがとうございます」

 

 

 出島さんの好意に甘える事にして、私たちは出島さんが運転する車に乗り込むことにしたが、タカトシだけが怪訝そうな顔をしていた。

 

「どうかしたの?」

 

「いや、タイミングが良すぎると思ってな……アリア先輩、ひょっとして監視されていたかもしれませんよ?」

 

「えっ?」

 

「バッグの中に、見慣れないものとか入ってませんか?」

 

「どうだろう……あら、これは何かしら?」

 

「超高性能小型カメラと盗聴器、ですね」

 

 

 タカトシが出島さんにそれを突き付けると、さすがに観念して犯行を認めた。

 

「お嬢様をお守りするのが私の役目ですので、離れていてもお嬢様の行動を確認するために忍ばせました」

 

「まぁ、出島さんが私を守ってくれてたのなら、今回は許してあげるね~」

 

「お嬢様!」

 

 

 何だかいい話風になってるけど、やってたことは盗聴と盗撮なのよね……どうせろくでもない映像とかを撮ってたんでしょうし……

 

「とにかく、出島さんのお陰で分乗する必要がなくなったんだ。今回はそれで良いじゃないか」

 

「アリア先輩が許したんですから、俺がとやかくいう事ではないですね」

 

「そういう事ですので、さっそく出発しましょう」

 

 

 出島さんと七条先輩の抱擁が終わり、出島さんは気合を入れて運転席に乗り込んだ。一度乗った事があるとはいえ、この車は凄いわよね……

 

「普通のバスとは違い、飲み物とかも完備されてるからな」

 

「何だったらカラオケも出来るよ~?」

 

「何処の観光バスですか……」

 

「シノ会長! 座席に穴が開いてますよ?」

 

「本当だ……ん? 今何か光ったような」

 

 

 会長がゆっくりと穴を確認すると、先ほど七条先輩の鞄から出てきた小型カメラが仕掛けられていた。

 

「出島さん、これはいったいどういう事でしょうか?」

 

「女子高生のパンツ写真が欲しかっただけです」

 

「堂々と言ったぞ、この人……」

 

「スカートの中を盗撮だなんて、恥ずかしくて濡れちゃいますよ~」

 

「お前は何を言ってるんだ……」

 

 

 相変わらずぶっ飛んだ考えの持ち主であるコトミの発言に、タカトシは盛大にため息を吐き、持っていたタオルをカメラの上に置き席に座るよう指示したのだった。




変態性なら、出島さんも畑さんに負けてないな

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