桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシとのボディタッチを狙う人が


ボディタッチ

 生徒会の作業が教室に戻ろうと思ったら、シノ会長が手を温めているのが目に入った。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、冷房で手が冷えてしまってな……ちょっと温めてただけだ」

 

「そんなに寒かったですか? 俺としては気にならない程度だったんですけど」

 

「体温はそこまで下がってないんだが、何故か手だけが冷えてしまったんだ。アリアや萩村は大丈夫だったか?」

 

「私は大丈夫だよ~」

 

「私も問題ありません」

 

 

 やはり冷えたのはシノ会長だけで、アリア先輩やスズは問題なさそうだった。というか、スズは打ち込み作業で指を使っていたし、アリア先輩も何か書いていた書いていたから冷えなかったのだろう。その点、シノ会長は書類に目を通して認印を押す作業だけだったから、だんだんと冷えていってしまったというところだろう。

 

「困ったな、次の授業は随分と板書が多い先生のモノだから、書くのに苦労しそうだ」

 

「何とかして温められればいいんでしょうが……」

 

「人の体温を貰えばいいのだろうか?」

 

 

 そう言ってシノ会長は俺の手を握りだした。確かに冷たくなっているな……

 

「会長、我が校の校則では、男女が手をつなぐのは問題になると思うのですが」

 

「そうだよ~。それに、タカトシ君は教室が違うんだから、繋ぐなら一緒のクラスの私とにしなよ~」

 

「お前たち、別の理由でこの行為に文句をつけてないか?」

 

「そんな事はありません。というか、すぐに五十嵐先輩に怒られそうですから、ここで注意しただけです」

 

「タカトシ君だって時間的余裕があるわけじゃないんだし、三年のフロアまで連れていくのは可哀想だよ~」

 

「う、うむ……ではアリア、私と手を繋いで教室まで行こうじゃないか」

 

「は~い」

 

 

 シノ会長とアリア先輩が生徒会室から出ていったのを確認してから、スズは俺の腕を掴んで生徒会室を出る。もちろん、廊下までしか腕を掴む事はしなかったが、何故かスズは嬉しそうな顔をしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育の時間、今日は水泳が予定されている。普段は結構本気で指導してくれるんだけど、どうやら今日は自由時間にしてくれるようだった。

 

「今日の水泳は自由にしていいんだって~」

 

「ムツミはほんとに楽しそうに体育の授業に出てるわよね」

 

「唯一の得意分野だからね~」

 

 

 はしゃいでいるムツミを他所に、私はとある目標を達成させるために準備体操を始める。

 

「スズちゃんも泳ぐの?」

 

「ネネは?」

 

「私はプールサイドでゆっくりしたいな~って思ってる。それほど運動得意じゃないし」

 

「一応授業中なんだから、それは許されないと思うんだけど」

 

「じゃあとりあえず浮かんでる。スズちゃんも一緒に浮かぶ?」

 

「私はプールの真ん中で足がつくか確認するために泳ぐから」

 

「そういえばプールって、真ん中の方が深いんだっけ」

 

「そうよ。浅い所じゃないと届かないという汚名を、今日こそ返上してやるんだから」

 

「スズちゃんは気にし過ぎだと思うんだけどね。ちっちゃくて可愛いじゃんか」

 

「ちっちゃいって言うな!」

 

 

 こんな身体つきで良い思いをしたことなんて無いんだから、せめてプールの中央で立てるくらいには大きくなりたいのよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会作業を終えて帰ろうとすると、校門のところにカナがいる事に気が付いた。どうやらタカトシを待っていたらしい。

 

「タカくーん!」

 

「義姉さん。何かあったんですか?」

 

「ううん、今日は時間があるからタカ君のお家に行ってもいいかな?」

 

「構いませんよ。今日はコトミも早く帰ってるでしょうから、宿題でも教えてあげてください」

 

 

 ナチュラルにタカトシと腕を組んでいるカナに、私と、いきなり現れた五十嵐で問い詰める事にした。

 

「魚見さん、ご親戚なのかもしれませんが、当校では男女の腕組は禁止されていますので」

 

「そう言われると思って、ちゃんと一ミリ離してますよ」

 

「そんな言い訳通用するわけないだろー!」

 

「シノ会長、ちょっとおかしくなってません?」

 

 

 タカトシにツッコまれたが、私は気にせずカナを問い詰める。

 

「というか、タカトシの家の鍵を持ってるんだから、勝手に行けばいいだろうが」

 

「確かに鍵は持ってるけど、たまにはタカ君と一緒にいたいって思っただけです」

 

「お前はしょっちゅう一緒にいるだろうが!」

 

 

 それこそ、同じ学校に通っている私たちよりもカナの方が一緒にいる時間が長いのではないかと思わせるくらいに。

 

「何を怒っているのかは分かりませんが、義姉さんも少し離れてください」

 

「しょうがないな……それじゃあ、校門を出てから腕組する事にする」

 

「あまり変わらないと思いますが……それではシノ会長、カエデさん、お疲れさまでした」

 

 

 しっかりと一礼して家への道を歩き始めたタカトシと、その後に続くカナの姿は、どことなく夫婦に見えなくもなかった。まぁ、二人とも制服を着ているから、夫婦と勘違いする人はいないだろうが。

 

「しかし、五十嵐まで注意しに来るとは思わなかったぞ。何処で見てたんだ?」

 

「私は、魚見会長がタカトシ君に腕を絡ませるところを偶々見ただけです」

 

「そんな偶然があるのか?」

 

 

 何となく怪しいと思ったが、私には畑のように問い詰める術がないからな……とりあえず今ので納得しておくか。




ウオミーが一番自然だ

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