桜才学園での生活   作:猫林13世

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こんな人いないだろ……


独特な照れ隠し

 生徒会室でタカトシ君と二人きりになり、私はちょっと恥ずかしいのと、少しでもタカトシ君に意識してもらえるようにと思い、お茶を淹れる事にした。

 

「タカトシ君。お茶飲むよね?」

 

「俺が淹れますよ」

 

「大丈夫だよ。私の方が近いから」

 

 

 そう言って私は、家から持ってきた良いお茶を取り出し急須に茶葉を入れる。

 

「それって結構いい茶葉ですよね?」

 

「分かる? みんなに飲んでほしくて、家から持ってきたんだ~」

 

 

 本当はタカトシ君に飲んでもらいたかったのだけど、それを正直に言う勇気は私には無い。

 

「良いお茶は冷ましたお湯で淹れた方が濃厚な味が出るんだよね」

 

「そうらしいですね」

 

 

 やっぱりタカトシ君も知っていたようで、私の手順に頷きながら答える。タカトシ君は何でも知ってるから凄いなって私も思うよ~。

 

「美味しいです。アリアさんは良いお嫁さんになれますね」

 

「もー、タカトシ君お上手なんだから~」

 

 

 タカトシ君に褒められたことでますます恥ずかしくなった私は、タカトシ君の腕を取って甘噛みする。

 

「アリアさん?」

 

「ち、違うの! これはその……照れ隠しなの!」

 

「照れ隠しに相手を叩く心理が働くとは聞いたことがありますが、甘噛みする人は初めて見ましたよ……」

 

 

 タカトシ君が呆れながら私の身体を押して、とりあえず噛めない距離に追いやる。もちろん、押された事でバランスを崩す、などといったハプニングは起こらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遅れて生徒会室にやってきたら、室内でアリアがタカトシの腕を噛んでいた。まさかアリアがタカトシと進展したのかと疑ってみたが、とりあえずそんな事ではなさそうだ。

 

「だが、入りにくいな」

 

「そうですね」

 

「ノックでもするか」

 

「それが良いでしょう」

 

 

 私の隣で苛立ちを抑えながら答える萩村だが、私も心中穏やかではない。

 

『ドン!』

 

 

 ついついノックする手に力が篭ってしまい、大きな音が鳴ってしまった。

 

「それじゃ壁ドンだよ!」

 

「イライラした時に壁を叩く方の壁ドンだな!」

 

「感心してる場合か!」

 

 

 中からドアが開かれ、タカトシが呆れた顔で私たちを生徒会室に招き入れる。この部屋、一応私が長だったような気がするんだが……まぁ気にしないでおこう。

 

「(それにしても、同性から見てもアリアは魅力的な女性だ……どうすれば彼女のようになれるんだろう)」

 

 

 席に着いた私は、じっとアリアの身体の一部分を眺めながら思考する。同性としてあの胸はうらやまけしからんからな……一割くらい私にくれてもいいんじゃないだろうか、とすら思えてくる。

 

「(もしや普段の運動や食生活に秘密が? アリアの行動を真似すれば私も――)」

 

 

 そう考えた瞬間、アリアが髪を結おうと鏡を取り出し、胸の谷間に挿しこんだ。

 

「いきなり真似できない事をするな!!」

 

「な、なんですかいきなり……」

 

「あっ、すまん萩村……驚かせてしまったな」

 

 

 ここには萩村もタカトシもいるので、私が大声を出したことでアリアだけではなく、萩村も驚かせてしまった。だがタカトシは驚くことはなく、黙々と作業を続けている。

 

「(恐らく私の心を読んで、叫ぶのを察知していたのだろう)」

 

「だから、読心術なんて使えませんからね」

 

「っ!?」

 

 

 的確に私の心を読んだとしか思えないタイミングでのツッコミだったので、私は驚いて立ち上がってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日一日シノちゃんが私のモノマネをしてるように感じていたけど、何が目的だったのだろう。放課後になり我慢出来なくなったので、私は直接シノちゃんに尋ねる事にした。

 

「――というわけで、アリアの真似をすれば私も魅力的になれるのではないかと思ったんだ」

 

「そうだったんだ。でも、シノちゃんだって十分魅力的だと思うけど」

 

「アリアはそういってくれるが、私としてはもう少し成長したいんだ」

 

「シノちゃーん? どこ見てるの~?」

 

 

 シノちゃんの視線が、私の胸に向けられているのを感じて、私は咄嗟に両手で胸を隠して身体を捻った。

 

「そのポーズが魅力的なんだー!」

 

「ご、ゴメンなさい!」

 

 

 咄嗟に謝ってしまったけど、私はただ、シノちゃんの視線から逃げただけなんだけどな……

 

「さっきから何を叫んでるんですか? 廊下まで聞こえてますよ」

 

「いや、ちょっとアリアの魅力についてな」

 

「はぁ……」

 

 

 タカトシ君が呆れた視線をシノちゃんに向けて、すぐに無駄だと判断したのか作業を始めた。

 

「というか、タカトシは私とアリア、どっちが女性として魅力があると思ってるんだ?」

 

「はぁ? なんですか、その質問……二人とも違った魅力があるんですから、比べる事自体おかしいでしょう」

 

「どういう意味だ?」

 

「シノさんにはシノさんの、アリアさんにはアリアさんの良さがあるんですから、違う魅力を持った二人を比べるのは変だ、という事です。他人に劣等感を懐くのは仕方ないにしても、そこと比べて自分の魅力を否定するのはおかしいでしょ?」

 

「な、なんだかすごい事を言われた気がする……」

 

「別に大したことは言ってません。あくまで俺個人の感想ですから」

 

 

 タカトシ君に魅力的だと言われた私とシノちゃんは、恥ずかしくなってタカトシ君の臍を指で突っつき始める、

 

「甘噛みの次は臍責めかよ……」

 

 

 タカトシ君が呆れながら私たちの腕を取り、臍責めを止めさせたのだった。




壁ドンはこっちだろ

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