生徒会の仕事も一段落つき、休憩がてら我々は読書をしていた。
「タカトシが戻ってこない事には帰れないからな」
「また横島先生が何かしでかしたんだっけ?」
「この間片付けた資料室を盛大に散らかしてくれたらしいので、その片付けを監視しているんです」
「どっちが教師だか分からないな、その構図だと……」
散らかした生徒を教師が見張っているならまだ分かるが、散らかした教師を生徒が見張るって、もう意味が分からないでもないが、タカトシだからという理由で納得出来てしまうから不思議だ。
「この間理事長に会った時も思ったんだが、いっそのこと馘にした方がタカトシの為なんじゃないかって思えてくるな、ここまで酷いと」
「タカトシの場合、横島先生以外にもコトミという頭痛の種が残ってるんですけどね」
「でもこの間のテストでは、ギリギリ平均点以上だったみたいだけどね~」
「あれだけタカトシとカナが勉強を見てやっても平均点ギリギリとはな……」
補習にならなければ良い、という次元ではないからな、コトミの成績の悪さは……
「ところでシノちゃん。最近ずっと推理小説を読んでるけど、好きなの?」
「なかなか面白くてな。犯人を推理しながら読んでいるんだ」
「へー面白そうだね~」
「こう言うのを読んでいると、私も探偵をやってみたいと思ってしまうんだよな」
「だったら、ウチの企業が計画しているミステリーツアーを体験してみる?」
「相変わらずスケールが違うな……」
普通ならそんな都合よく企画なんて無いんだろうが、アリアの家は大企業だからな……
「参加者は私たちだけか?」
「タカトシ君が来るなら、コトミちゃんも来ると思うよ。後は英稜の二人も誘ってみようよ」
「二泊三日なら、問題ないか。過去にも何度か泊りで遊びに行ったこともあるし」
「問題は、三人のバイトのシフトですね。急に言って休めるものでもないでしょうし」
「その辺はご都合主義で何とでもなるだろ」
「何言ってるんですか?」
私の若干メタ発言に、萩村が呆れた顔でツッコミを入れる。忘れがちだが、萩村もツッコミ側の人間だからな。
タカトシ君が戻ってきてそのまま帰路についた私たちは、都合よくカナちゃんとサクラちゃんと遭遇したので、例のミステリーツアーの計画を二人に話した。
「七条グループ主催のミステリーツアーですか。面白そうですね」
「参加者は何時ものメンバーですか?」
「五十嵐や畑にも声はかけたんだが、二人とも都合が悪いようで、我々生徒会メンバー+コトミだ」
「それでは、そこに我々二人も追加で」
「よし。あっ、二泊三日なんだが、予定は大丈夫か?」
シノちゃんが二人に予定を聞くと、カナちゃんもサクラちゃんも手帳でスケジュールを確認して笑みを浮かべた。
「ウチの両親は寛容なので、三泊四日くらい平気です」
「いや、二泊三日だぞ?」
「いえ、ツアー出発の前日、タカ君の家に泊まる事になっているので」
「な、何故タカトシの家に泊まる事になっているんだ」
「何故って、コトミちゃんの冬休みの宿題の監視として」
「あぁ……」
カナちゃんに嫉妬したシノちゃんが凄い剣幕で言い寄ったけど、カナちゃんの答えを聞いて思わず納得してしまったようで、そのまま引き下がった。
「それじゃあ参加者は七人だね~。出島さんに伝えておく」
「あの人も来るんですか?」
「進行役兼身の回りの世話を買って出てくれたんだよ~」
「タカトシがいれば身の回りの世話役は必要無いんじゃないか?」
「そこはほら、ウチの企画だからゲストに任せるわけにはいかないんだよ~」
「なるほど」
「とりあえず、必要な物は着替えか?」
「後は各自持っていきたいものを持っていけばいいんですね」
シノちゃんとカナちゃんが話を進めている後ろで、タカトシ君とサクラちゃんが少し嫌そうな顔を見せたのは、ボケとツッコミの比重を考えての事なんだろうな~。
「そうそう、三人はバイト、大丈夫なのか?」
「えぇ、丁度その期間は宿題を片付けようと思っていたので、元々休みを取っていたので」
「私とタカ君は、コトミちゃんの宿題の監視の名目で休みになってますので」
「そんな理由で休めるものなのか?」
「コトミちゃんの成績の悪さは、ウチの店でも有名になっていますので」
カナちゃんの言葉に、タカトシ君が顔を顰めた。たぶん、タカトシ君がため息を吐いていたのを心配したカナちゃんが話しかけて、その内容を他の人も聞いていたとかそんな感じなんだろうな。
「いや~、それほどでもないですけどね~」
「コトミ……いつの間に」
「ついさっきですよ。皆さんの姿を見つけたので、こっそりと近づいてきました。まぁ、タカ兄にはバレてたんですけどね」
「お前も少しは成長すれば、タカトシがお前の為にバイトを休む事も無くなるんだぞ?」
「少しくらい休まないと、タカ兄は明らかに働き過ぎですからね~。学生と主夫、そしてアルバイトまでしてるんですから」
「だから、お前が負担を掛けなければ良いんだろ?」
「それは無理です」
コトミちゃんが胸を張って宣言したので、私たちはそろってため息を吐いちゃった……もう少し頑張った方が良いと思うんだけどな……
参加者一名追加で