桜才学園での生活   作:猫林13世

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本来ならカエデ初登場会なんですが、既に登場してるのでオリジナル話です


コトミの模試結果

 タカ兄に勉強を見てもらってたから、今回の模試は結構自信がある。前回は散々でお母さんやお父さんに怒られたからな。

 

「模試の結果を渡すぞー。順番に取りに来い」

 

 

 先生に結果の入った封筒を渡され、私はドキドキしながら中身を取り出した。第一志望は桜才で滑り止めで英稜の名前も書いておいた。

 

「……え」

 

 

 結果を開いて、私は自分の目を疑った。桜才学園、英稜と共に合格確率は30%。志望校変更を勧められている。

 

「何で! 結構自信があったのに!」

 

 

 前回の10%以下から比べれば確実に進歩しているのだが、今回の模試で結果を出さなきゃ志望校を変えろってお母さんに言われてたのでこの結果はかなり厳しい……タカ兄にも怒られるかもしれない。

 

「如何しよう……」

 

 

 今日結果が出る事はお母さんもタカ兄も知っている。見せられ無い結果だと言う事がバレたら説教されて志望校を変えろと言われるに違い無い。

 

「コトミー、アンタ判定如何だった? 私は70%だったよ」

 

「……30%」

 

 

 友達の明るい雰囲気に乗る事も出来ずに、私はどんよりとした空気を吹き飛ばせなかった。

 

「それってかなりヤバイよね? お兄さんやお母さんに怒られるんじゃない?」

 

「やっぱり前日にノンストップオ○ニーしてたのが原因かな…」

 

「絶対それでしょ。だからテスト中眠そうだったんだ」

 

「だってタカ兄が毎日付きっ切りで勉強見てくれてたからさ、まったく発散出来なかったんだよ」

 

「津田先輩は真面目だもんね」

 

 

 去年までタカ兄もこの学校に在籍していたし、女子生徒の間ではタカ兄は有名人だ。その原因の半分は私の所為なのだが、残り半分はタカ兄の実力で有名になったのだ。

 

「何で生徒会長やらなかったんだろうね?」

 

「タカ兄は目立つの好きじゃ無いし、自分はそう言う役職に就く器じゃないって言ってた」

 

「でも津田先輩以外には主だった候補は居なかったんだけど」

 

「タカ兄は生徒会長になって内申を稼ぐ必要も無かったし、多分そう言う事も絡んでたんだと思うよ」

 

 

 現にタカ兄は桜才の入試で上位入学をしてるしね……兄妹なのになんでこんなに差があるんだろうな……

 

「とりあえず来年も同じ学校に通えるように、コトミも頑張ってよね」

 

「このままじゃ冗談抜きで身体を売って生活しなきゃいけなくなる……」

 

「まだ言ってるの? まさか家でも言ってるんじゃないでしょうね」

 

「この前お母さんに言ったら呆れられた」

 

「そりゃそうよ……友達同士の冗談なら兎も角、親兄弟に言うような事じゃないでしょ」

 

「冬休みに猛勉強するしか無いかな……」

 

「また津田先輩に付きっ切りで勉強教えてもらうの?」

 

「それだとまたストレスが……」

 

 

 タカ兄に見られてるだけで興奮しちゃうし……それでなくてもタカ兄が部屋に帰った後でタカ兄の座ってた椅子の匂いを嗅ぐので忙しくなっちゃうし。

 

「コトミの変態も筋金入りだね」

 

「しょうがないでしょ、遺伝なんだから」

 

「そのわりには津田先輩は大真面目じゃない? 必ずしも遺伝って事は無いんじゃない?」

 

「タカ兄はお父さんに似たんだよ。それで私はお母さんに似たの」

 

 

 そうじゃなきゃこの兄妹の差は説明出来ないし。

 

「兎も角、私も残り半年で精一杯努力するんだから、コトミも頑張ってね」

 

「秘められた力を解放する時が来たようだな」

 

「厨二もいい加減にしときなよ」

 

 

 友達に呆れられながらも、とりあえず沈んでた気持ちは回復出来た。後はこれを如何やってタカ兄とお母さんに見せるかだ……怒られないようにするには如何するのが一番なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミの模試の結果を見る為に、リビングに呼び出された。この前は個々に見せてたのに、今回はお母さんやお父さんと一緒に見せるんだな。

 

「それでコトミ、結果は如何だったんだ?」

 

「これです……」

 

 

 素直に結果の入った封筒をテーブルの上に置くコトミ、雰囲気から察するに、あまり良く無い結果のようだ。

 

「それじゃあまず私から見るわね」

 

 

 お母さんが封筒に手を伸ばし、中身を見て愕然とした。そこまで酷い結果だったのか……次にお父さんがお母さんの持っている結果を横から覗き込んで天を仰いだ。

 

「タカトシ、これはコトミに諦めるように言うしか無さそうだよ」

 

 

 そう言ってお母さんが差し出してきた結果を見て、俺はため息を吐きたくなった。前回からは進歩してるようだが、これじゃあ桜才の受験は厳しいだろう。

 

「コトミ、お前自信あるっていってたよな? それがこの結果だった訳だが、お前は何が原因か分かってるのか?」

 

 

 前日は脳を休ませる為に早めに勉強を切り上げたのだが、完全に疲れが抜け切らなかったのだろうか。

 

「えっと、タカ兄との勉強が終わった後、ノンストップオ○ニーをしてまして、気が付いたら朝になってました……」

 

「「「………」」」

 

 

 コトミの衝撃告白に、俺はお父さんやお母さんと顔を見合わせた。つまりは寝不足が原因で問題の殆どを解く事が出来なかったと言う事なのだ。

 

「問題用紙もってるよな? 今からもう一回やってみろ。すぐ採点してやるから」

 

 

 コトミにもう一回模試と同じ問題を解かせる事で、本当の実力を知ろうとしたのだが、勉強をしてた本番と、既に忘れているだろう今とでは、大して結果は変らないだろな……

 

「タカトシ、これで駄目なら私たちはあの子に志望校を変えるように言うから」

 

「分かってる。さすがにこの時期に五割無いのはね」

 

 

 五割でも低いのだが、この前の一割未満よりかは十分に可能性があるのだ。だから五割以上なら俺たちはコトミの桜才受験を認めるつもりだったのだが、あのおバカ妹は大事な模試の前に徹夜したとか言い張ったからな……事の重大性がまるで分かってないのだ。

 

「終わりました……」

 

「それじゃあ少し待ってろ。すぐ採点するから」

 

 

 確か今回の桜才学園志望者で、合格確率五割以上の人の点数は500点中300点以上、つまり299点以下だとコトミに志望校を変えるように言わなければいけないのか。

 

「………」

 

 

 採点をしていくにつれて、コトミの表情は不安で塗り潰されていく。何だかんだ言ってもコトミは桜才を受けたいようなのだ。

 

「如何だい、タカトシ」

 

「うん、ギリギリかな」

 

「それって!」

 

「五割には届かなかったけど、十分可能性はあると思う」

 

 

 コトミの点数は295点。確率を出すなら約50%だ。

 

「とりあえずは認めるけど、これからもっと厳しく勉強を教えるから覚悟しろよ」

 

「うん! 私はドMだからむしろウェルカム」

 

「……やっぱ諦めろ」

 

 

 この危機感の無い妹は、何処を受験しても駄目な気がしてきた……




模試を受けた事が無いので結果や判定はテキトーです

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