桜才学園での生活   作:猫林13世

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欠伸くらいはするだろうな


欠伸写真

 登校途中に、私は憂鬱な事を思いだした。

 

「あ……宿題やんの忘れた……」

 

「トッキーは相変わらずドジっ子だな~」

 

「うっせ。そういうお前はどうなんだ」

 

「私は、タカ兄とお義姉ちゃんが怖かったので、しっかりとやったよ」

 

「自分の意思では無いじゃねぇかよ」

 

 

 あの兄貴と英稜の生徒会長に睨まれれば、そりゃ誰だって宿題をやるな……

 

「罰で立たされるだろーけど、まぁいいや」

 

「トッキーにとって、大した罰じゃないもんね。私みたいに、お小遣いが懸かってるわけじゃないんだし」

 

「お前の場合、それ以上じゃね?」

 

 

 こいつは確か、次赤点ギリギリだった場合、良くて留年。最悪退学の危機だったような気もするしな。

 

「到着。急がないと遅刻になっちゃうね」

 

「お前が早く起きないからだろうが」

 

 

 コトミと一緒に階段を駆け上がり、HRを終えて英語の授業が始まった。

 

「えー、罰で立たすと後ろの席の人が黒板見えないって苦情があるので、宿題忘れたヤツは空気椅子の罰に変更だ。忘れたヤツは手を上げろ」

 

「トッキー、お疲れ」

 

 

 コトミに肩を叩かれ、私は絶望的な気分を味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 委員会に出席する前に生徒会室に集まっていたら、三葉が生徒会室にやってきた。

 

「部費アップのお願い?」

 

「はい!」

 

「うーん、それは難しいな」

 

 

 既に今年度の予算編成は終わっているし、一つの部活を優遇するわけにもいかないし。

 

「今日はみんなの要望を背負って来てるんです。うんと言ってくれるまでこの場を動きません!」

 

「といわれても、今から委員会に出席しないといけないから、私たちはここからいなくなるぞ」

 

「じゃあ私、留守番してますよ」

 

「えっ、あぁ……ありがとう」

 

 

 あまりにも自然に言われてしまったので、私は思わず三葉に留守番を頼んでしまった。

 

「良いんですか?」

 

「だって、動かないって言ってるし、留守番してくれるなら鍵を掛ける必要もないし」

 

「それぐらい面倒だって思わないでくださいよ」

 

 

 タカトシに呆れられたが、とりあえず生徒会室の鍵を掛けずに、我々は委員会に出席する為に会議室に急いだ。

 

「(まぁ、我々が委員会に出席する事はだいたいの生徒が知っているから、生徒会室を訪ねてくるヤツなどいないだろうがな)」

 

 

 会議中、留守番の意味なんて無かったかもしれないなと思いながら、私はそれを表情に出さず進行役を務めていたが、隣に座るタカトシが若干呆れたような視線を向けてきたのが気になった。

 

「――というわけで、本日の委員会は以上とする」

 

「「「「お疲れさまでした」」」」

 

 

 私の閉幕の合図に答えるように各委員会の長が挨拶を交わし、お開きとなる。

 

「結構時間が経ってしまったな。三葉は大人しく留守番をしてくれただろうか」

 

「それくらいムツミでも出来ますよ……たぶん」

 

 

 萩村が若干不安そうな表情で答える。私たちは急いで生徒会室に戻ると、中から寝息が聞こえてきていた。

 

「寝てますね……」

 

「留守番になってないねぇ」

 

「やれやれ、仕方ないな」

 

 

 私は机に突っ伏して寝ている三葉の背中に手を伸ばし、ブラのホックを外した。

 

「何で今ブラを外したんですかね?」

 

「普通のブラを着けたまま寝るのは良くないんだぞ。就寝用ブラというものがあってだな――」

 

「普通に起こせよ!」

 

 

 久しぶりにタカトシに怒られた気がする……結局、三葉は起きなかったのでタカトシが背負って道場まで連れ帰ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で作業していると、畑さんが音も無く生徒会室に入ってきた。

 

「やっ!」

 

「畑、せめてノックはしろ」

 

「これは失礼しました」

 

 

 全く悪びれた様子もない畑さんの態度に、シノちゃんがため息を吐いた。ちなみに、タカトシ君は気配で気づいていたようで、驚いたりはしなかったけど。

 

「最近皆さん、ちょっとたるんでるんじゃないですか?」

 

「どういう意味だ?」

 

「我々生徒の代表なのですから、もう少しシャキッとしてもらいたいという意味です」

 

 

 そう言うと畑さんは、懐から三枚の写真を取り出しました。

 

「この欠伸写真を戒めにしてください」

 

「いつの間にこんなのを」

 

「これは萩村さんの欠伸写真です」

 

「は、恥ずかしい……」

 

「こっちが七条さんの欠伸写真です」

 

「あら~」

 

 

 油断してたつもりは無いけど、私じゃ畑さんの隠し撮りに対抗出来ないわね。

 

「これが会長のアクメ写真です」

 

「なっ、違うぞ!?」

 

「失礼、欠伸を噛んでしまいました」

 

「脅かすな……」

 

 

 シノちゃんが慌てているのを見るに、恐らくアクメ顔をしてたことがあるのだろうなと思ったけど、タカトシ君に怒られそうだから口にはしなかった。

 

「ところで、タカトシの欠伸写真は無いのか?」

 

「津田副会長は、私の気配を察知出来ますので。欠伸をしていたとしても私に気付かれない場所でしょうし」

 

「と、とにかく! これからは気を引き締め直して学園生活を送ろうじゃないか」

 

「そうだね~」

 

「はい」

 

「ではそういう事で。ちなみに、これコトミさんの居眠り写真だけど、いる?」

 

「屋上で腹出して寝てますね……」

 

「何してるんだ、コトミは……」

 

「放課後ですから、その辺りは大目に見てあげてください」

 

 

 それだけ言い残して、畑さんは生徒会室から音も無く消えてしまった。相変わらず凄い特技だよね。




やっぱり残念なコトミ……

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