桜才学園での生活   作:猫林13世

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何でも出来るな、この人は……


海難救助訓練

 臨海学校が始まり、私はシノ会長とビーチで行動を共にしていた。

 

「まずは写真を撮ろう!」

 

「そうですね!」

 

 

 ちょうど畑先輩が通りかかったので、私たちは写真を撮ってもらう事にした。

 

「ピースだ!」

 

「はい!」

 

 

 シノ会長が片目を瞑って、開いている目を挟むようにピースをする。私もそれに倣ってポーズをとると、丁度タカ兄が通りかかった。

 

「指のお陰でタカ兄が全裸に見えます!」

 

「そんな意図は無かったんだが……」

 

「ですが、興奮しませんか?」

 

「まぁ、悪くはないな……」

 

 

 私たちを見て呆れた表情を浮かべていたタカ兄に、アリア先輩が近づき海に入っていった。何をするのかと見ていたが、ただ水をかけあっているだけのようだ。

 

「傍から見ると恋人同士のようですね」

 

「森先輩がいない限り、アリア先輩がぶっちぎりでタカ兄の彼女っぽいですからね~」

 

 

 美男美女で絵になりますし、アリア先輩のダイナマイトボディにデレデレしないので、余計にそう見えるのだ。

 

「なぁっ、そんなの絶対ダメですよ! 学生の本分を――」

 

「傍から見るとやきもちキャラみたいですね」

 

「ぽっと出のキャラに男の子を盗られそうになって、頬を膨らませて嫉妬してる幼馴染キャラみたいですね」

 

「撮るな!」

 

 

 カエデ先輩も大人しくしていればタカ兄の隣にいても不思議ではないんだろうけども、あふれ出るムッツリオーラがもったいないんだよね……アリア先輩は変態オーラが薄まってきたから、余計にそう思っちゃうんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海に来たからと言って、遊びに来たわけではないのだ。ここでは海難事故に対する講習を行う為に、ライフセーバーの方に来てもらっているのだ。

 

「皆さんこんにちは。七条家専属メイド兼ライフセーバーの出島です」

 

「(何でこの人を呼んだんですか?)」

 

「(だって、タダで良いって言うから……)」

 

 

 タカトシにツッコまれて、私は裏事情を素直に話した……できるだけ予算を使わずに行きたいという横島先生の頼みを、最大限に叶えられる人選だったので、私は出島さんの申し出に二つ返事をしてしまったのだった。

 

「夏は水の事故がつきもの。そこで皆さんには、水難救助の基本を学んでもらいます」

 

「(資格は本物だから、問題はないぞ?)」

 

「(人間的に問題があるんですよ、あの人は……)」

 

 

 本気で嫌そうな顔をするタカトシから離れるべく、私は萩村の隣に移動した。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、タカトシのジト目が……」

 

「そう言えば、タカトシがいない時に決まったんでしたね」

 

 

 出島さんを呼ぶことは事前に決まっていたのだが、タカトシに伝えていなかったのを後悔した。

 

「溺れている人を助ける場合、前から行くとしがみつかれて危険です。後ろから救助しましょう」

 

「(女難と通ずるものがありそうだ)」

 

「くだらんことを考えてないでくれます? 一応引率なんですから」

 

 

 恐らく変な事を考えていたであろう横島先生を、タカトシが首根っこを押さえつけて連行していった。

 

「海で最も怖いのは離岸流です。万が一それに乗ってしまったら冷静に対応しましょう。流れが止まるまで待ち助けを呼ぶか、45度の角度で泳いで抜けたりするのが安全です」

 

「怖いですねー。携帯防水だし、常備しておこう」

 

「持ちながら泳ぐのは無理だろ?」

 

 

 いつの間にか隣に来ていたコトミにツッコミを入れると、コトミは私たちの機嫌を損ねる行動に出た。

 

「こうやって胸に挟めば……はっ!? おっ、お尻でも同じことできると思います」

 

「下手な気遣いは悲しいから止めなさい……」

 

 

 怒るに怒れなくなったので、私はそうツッコミを入れるしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出島さんの説明を聞き、実際に訓練してみようという流れになったのは良いのだが、その訓練中に私は足をつってしまった。

 

 

「タカトシ、救助だ!」

 

「はい」

 

 

 それほど深くない場所ではあったが、私の身長的に冷静さを保つのは難しかった。すぐにタカトシに救助してもらったので大事なかったが、大勢の人の前でお姫様抱っこはちょっと恥ずかしかった。

 

「せっかくなので人工呼吸の訓練をしましょう」

 

「はぁ!?」

 

「フリですよ?」

 

「あっ、フリですか……」

 

 

 出島さんの提案に慌てて跳びあがりそうになったけど、フリならまぁいいよね……五十嵐さんと七条先輩は実際に、会長だってガラス越しにタカトシとキスしたことあるんだし、フリで嫉妬したりはしないでしょうし……

 私はタカトシの顔が近づいてくるのに耐えきれず目を瞑ってしまったが、どうやら無事に人工呼吸のフリは終わったようだった。

 

「………」

 

「出島さん?」

 

「いえ」

 

 

 何だか複雑そうな表情を浮かべている出島さんだったが、私には何を考えているのかが分からない。そこでタカトシに小声で尋ねてみた。

 

「(彼女、何を考えてたの?)」

 

「(私が言ったフリは『フラグの御膳立てしてやったからあとはわかるな?』というフリだったんだけど、日本語って難しいな……って考えてるみたい)」

 

「(あの人は……)」

 

 

 しかし、さすがタカトシよね……恐らく一言一句間違えずに出島さんの考えを読み当てたんでしょうけど、普通読心術なんて出来ないわよ。

 

「だから、読心術なんて使えないって」

 

「っ!?」

 

 

 心臓を鷲掴みされたような錯覚に陥るくらい、タカトシのツッコミはタイミングが良すぎるのだった……




でも残念な出島さん……

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