桜才学園での生活   作:猫林13世

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成長はしてるんですけどね……


コトミの試験勉強

 定期試験が近づいてきた事もあり、私は前にもまして津田家にお邪魔する機会が増えた。もちろんコトちゃんの成績の事もあるが、タカ君の体調面を気にしての事でもある。

 

「――義姉さんが俺の事を心配してくれるのは嬉しいんですが、それで義姉さんが体調を崩したら意味がないと思うんですが」

 

 

 私がタカ君に定期試験の手伝いをすると申し出た時、タカ君はこう言って私の事を気遣ってくれた。確かに最近調子が良くないなと思う日が増えたけど、それは別にタカ君の手伝いをしてるからではなく、単純にそういう周期だからである。

 

「お義姉ちゃん、ここなんですけど……」

 

「コトちゃん、ここはこの間教えたところの応用だよ」

 

「そうなんですか? ……じゃあ、こうやってこうやれば――」

 

「そっちじゃなくてこっちの公式を使うんだよ」

 

「なるほど」

 

 

 私とタカ君の調子が良くない事を分かってるからか、コトちゃんもいつも以上に真面目に勉強してくれてるような気がする。何となく情けない気もしますが、コトちゃんがやる気を出してくれているので善しとしましょう。

 

「あら? お客さんかしら」

 

「下から声がしますね」

 

 

 今日はタカ君が家事を担当しているので、来客への応対はタカ君がしている。私にタカ君程の気配察知能力があれば、誰が訪ねてきたのか分かるんでしょうけども、さすがにそんな能力は無いので、コトちゃんと二人で下を覗き込んだ。

 

「シノっちにアリアっち、それにサクラっちまで」

 

「会長、今日は会議があるって言いましたよね?」

 

「おや? もうそんな時間でしたっけ?」

 

 

 サクラっちに言われて漸く、私はそろそろ会議の時間になるという事に気が付いた。そろそろといっても、ここから英稜まで向かってもギリギリ間に合う時間ではあるが、迎えに来てくれなかったら間違いなく忘れていただろう。

 

「私がタカ君の家にいるって、よく分かったね」

 

「ここ最近コトミさんの勉強を見ていると、会長が自分で言ってたんじゃないですか」

 

「そうだったっけ?」

 

 

 サクラっちの指摘に恍けたふりをして、私は急ぎ制服に着替えて学校へ向かう事にした。シノっちとアリアっちが何でタカ君の家に来たのか気になったけど、それは後で聞けばいい事なのでとりあえずスルーする事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だか慌ただしくお義姉ちゃんがいなくなったかと思ったら、今度はシノ会長とアリア先輩が私の勉強を見てくれる事になった。スズ先輩がいないのは、ムツミ先輩とネネ先輩に勉強を教えて欲しいと泣きつかれたようだ。

 

「ネネ先輩って、成績上位者じゃなかったでしたっけ?」

 

「機械いじりをし過ぎて、成績に影響しているようだな」

 

「そうだったんですか。ネネ先輩が改良してくれた玩具は、かなりいい具合なので続けて欲しいんですけど」

 

「私も一時期お世話になってたから、頑張って欲しいんだけどね~」

 

 

 タカ兄がいなければ、この二人は前とあまり変わっていない。下ネタにも普通に反応してくれるし、私のノリにもついてきてくれるのだ。

 

「さて、無駄話はここまでにして、そろそろ勉強を再開するか」

 

「そうだね~。今度のテストで平均七十点以上じゃないといけないんでしょ~?」

 

「タカ兄はノルマが高過ぎるんですよね……」

 

 

 私の頭脳では、六十点平均だった前回の試験が奇跡なのだ。それ以上を望まれても厳しいに決まっている。そりゃタカ兄たちが必死になって勉強を見てくれているから、それくらいの結果を出したいと私だって思ってるけど、記憶力も理解力もタカ兄の足元にも及ばないので、なかなか厳しいのだ。

 

「何か覚えるコツとかありませんかね?」

 

「コトミはゲームとかでコマンドを覚えたりするんじゃないのか? その時と同じ感覚でやってみたらどうだ?」

 

「ゲームと勉強とでは勝手が違うんですよね……それに、私覚えゲー苦手ですし」

 

「馬鹿な事言ってないで、真面目に勉強しろ」

 

「あっ、タカ兄」

 

 

 先輩たちにお茶を持ってきたタカ兄にお盆で頭を小突かれて、私は軽く舌を出して誤魔化す。

 

「この間の試験でやれば出来ると証明されたんだから、しっかりとやってもらおうか」

 

「あれはいろいろとヤバい状況だったから発揮出来ただけで、今度の試験でも発揮出来るかどうか分からないよ」

 

「お前がいろいろヤバいのは今も変わってないだろ。このままだと本当に退学になりかねないんだからな」

 

「分かってます……」

 

 

 遅刻は減ってきたが、その分授業中の居眠りが増えてしまっているので、プラマイゼロ。だから私の評価は特に変わっていないのだ。そこへ赤点という問題が加われば、良くて留年、最悪は退学になる状況なのだ。

 

「私たちもコトミが退学になるのを見過ごすわけにはいかないからな。生活習慣の改善はタカトシとカナに任すしかないが、勉強なら手伝える」

 

「そういうわけだから、厳しくいくよ~」

 

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

「多少厳しくしないと覚えないだろ、お前は」

 

 

 タカ兄のツッコミに、私はガックリと肩を落として勉強を再開する。なんで私の頭はタカ兄並みの能力を発揮出来ないんだろうな……




ちょっとですが、久しぶりに森さん登場

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