桜才学園での生活   作:猫林13世

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こっちはあんまり変わってない…のか?


会長交換 桜才編

 桜才と英稜の交流行事、生徒会長を一日交換しようという企画が立てられ、そしてそのまま採用された。

 

「というわけで、今日はよろしくお願いします」

 

「どういう理由で計画されたんですか?」

 

「他校の風習に触れる事により、自校の学園作りに生かすためです」

 

「はぁ……」

 

 

 それは生徒会が考えるのではなく、学園が考える事なのではないかとも思ったが、シノ会長も義姉さんもノリノリで交換に応じたから、そのツッコミはしないでおこう。

 

「不束者ですが、よろしくお願いします」

 

「苦しいので離れてください」

 

 

 何故かスズに抱きついた義姉さんに、スズが冷めた声で拒否のセリフを述べる。

 

「スズポン、なかなか心を開いてくれませんね」

 

「十分開いてるつもりですが……というか、開いてほしいならもう少しスキンシップの手順をですね……」

 

「じゃあお尻から開きましょう」

 

「心閉ざしてやる!」

 

「ふざけてないで、しっかりと仕事してください」

 

 

 スズに対してふざけだしたので、俺は義姉さんの襟首を掴んでスズから引きはがした。

 

「さすがタカ君。サクラっちにはないやり方ですね」

 

「……この後予算会議があるので、会長にはこちらの資料に目を通しておいていただきたいのですが」

 

「何で丁寧語になってるの?」

 

「ふざけているので、ご自分の立場を思い出していただこうと思いまして」

 

 

 俺があえて距離を取った話し方をしたからなのか、義姉さんは真面目に資料に目を通し始めた。常にこうしてくれていれば、俺もサクラさんも苦労しないんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 桜才学園の予算会議に参加しているけど、やっぱり少し資料に目を通しただけでどうにかなるわけがなかった。

 

「今月の部の予算ですが――」

 

「(タカ君、ここなんだけど)」

 

 

 どうしても分からない箇所を、隣に座っているタカ君に尋ねる。

 

「魚見会長! いくら親戚同士とはいえ、くっつき過ぎではありませんか!?」

 

「そうですか?」

 

「そうですよ。そこまでくっつかなくても見えますから」

 

 

 タカ君に諭され、私は少し不貞腐れながらもタカ君から離れた。

 

「タカ君、続きは後で…ね?」

 

「っ!?」

 

「話の続きを後で、という解釈でお願いします。というか、義姉さんも勘違いさせるつもりでしたよね?」

 

「バレました? シノっちから、カエデっちはからかうと面白いと聞いていたものでして」

 

「ろくなこと言って無いんだな、会長も……」

 

 

 この後の会議は、タカ君が目を光らしていたお陰でなのか、スムーズに進んだ。

 

「――では、今回はこれで解散です」

 

 

 タカ君の挨拶で、会議に参加していた面々は会議室から出ていく。そんな中、新聞部部長の畑さんだけが会議室に残った。

 

「何か?」

 

「魚見会長にインタビューしたいのですが」

 

「では、この後生徒会室で」

 

 

 会議室の片づけを済ませて、私は畑さんのインタビューを受けるべく生徒会室に一緒に向かった。

 

「今回の企画は、両会長の友情によって実現したわけですね?」

 

「少し違います。友人であり、ライバルでもあります」

 

「恋のですか!?」

 

「私、ネトラレに関心があるので、それは負けてもいいと思っています」

 

「なるほど。ですが、津田副会長が天草会長に盗られたとなると、魚見会長としては面白くないのではありませんかね?」

 

「どうでしょうね……」

 

 

 タカ君とシノっちの関係は、何処まで行っても会長と副会長、ボケとツッコミ、躾けられる側と躾ける側でしかなさそうですし……

 

「何か失礼な事考えてませんか?」

 

「そんな事ないよ?」

 

 

 タカ君の鋭い視線を受けながら、私はなんとか誤魔化そうとした。

 

「天草、ちょっといいか?」

 

「おや、古谷先輩」

 

「ん? 天草はどこ行った? それと、その制服は英稜学園のじゃ」

 

 

 急に生徒会室に入ってきた女性に、タカ君が事情説明をしている。どうやら彼女は、シノっちの前の生徒会長のようだった。

 

「――それで英稜の生徒会長さんがいるのか。しかも津田のおねーちゃんか」

 

「シノ会長に用事なら、メールしておきましょうか?」

 

「大丈夫、また来るから。ところで津田」

 

「はい?」

 

「ねぇ、ちゃんと風呂入ってる?」

 

「これみよがしに古典的なネタぶち込んでくるんじゃねぇよ。原則として学園に関係者以外入ってきてはいけませんので、お帰りくださいませ」

 

 

 タカ君が半分怒りながら古谷さんを追い返すと、横でメモを取っていた畑さんを睨みつけた。

 

「なに、メモってるんですかね?」

 

「こ、これはその……」

 

 

 タカ君が没収したメモを覗き込むと、そこには『津田副会長と英稜学園会長、混浴疑惑』と書かれていた。

 

「これ以上曲解が続くようでしたら、本当に新聞部を活動休止にするしかないのですが?」

 

「それだけは! それだけはご勘弁を!」

 

「でしたら、これ以上曲解や過大解釈はしないようにお願いします」

 

「分かりました。今後は正確な情報を伝えるマスメディアとして活動していきます」

 

「学校の部活ですけどね……」

 

 

 タカ君のセリフに、アリアっちとスズポンも頷いて同意している。畑さんも恥ずかしそうに頭を掻いて、逃げ出すように生徒会室から出ていったのだった。




古谷さんのネタは古すぎるだろ……

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