桜才学園での生活   作:猫林13世
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コトミも頑張っているんです


テスト前のテスト

 いよいよ秋本番という感じで、今日はなんだか寒いと感じる朝だ。二学期からずっと、タカ兄と一緒に登校する事にしているので、遅刻ギリギリという事は無くなったけど、こんなに寒い日はベッドの中で丸まっていたいよ……

 

「おはよう、タカトシ、コトミ」

 

「あっ、シノ会長。おはようございます」

 

「シノちゃん、おはよ~」

 

「おはようございます」

 

 

 校門に差し掛かる頃には、シノ会長とアリア先輩、そしてスズ先輩も合流し、ちょっとした集団になっていた。

 

「こんなに寒い日は、外に出ずに暖を取りたいですね~」

 

「しかし授業に参加しなければならないだろ? 我々学生の本分は勉強なのだから」

 

「そうは言ってもですね~……あっ、そうだ!」

 

 

 私は名案を思い付いたとばかりに手を打ち、四人に提案する。

 

「おしくらまんじゅうでもして温まりましょう!」

 

「いい年して何を考えてるんだか……」

 

「だって、人肌は温いでしょ? 冷えた身体を温めてくれるのは、やっぱり人の温かみだと思うんだよね~」

 

「馬鹿な事言ってないで、そろそろテストの心配をした方が良いんじゃないか?」

 

「それは言わないお約束だよ……」

 

 

 一応頑張ってはいるが、平均七十点はなかなかに厳しそうなんだよね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきのコトミではないが、確かに今日はなんだか寒く感じる。生徒会室で作業して、タカトシ以外は何となく寒そうな感じが見受けられる。

 

「おーす」

 

「横島先生、おはようございます」

 

「今朝は寒いわねー」

 

「そうですね」

 

 

 早朝会議だから横島先生にも来てもらったのだが、正直あんまり必要無かったかな……だいたいはタカトシが纏めてくれるし。

 

「こう寒いと――」

 

 

 横島先生がバナナを取り出し、皮をむく。どうやらあれが朝食のようだ。

 

「振動〇〇ラが捗るな」

 

「遅刻しておいてその発言ですか……理事長先生に報告して、横島先生の冬のボーナスをカットしてもらいましょうか?」

 

「正直すまんかった!」

 

「というかタカトシ、いつの間に理事長と仲良くなったの?」

 

「横島先生の事で困ったら相談しなさいって、この間言われたんだよね」

 

 

 どうやら理事長も横島先生の事は気にしているようで、普段側にいる確率の高いタカトシに監視を頼んだのだろうな。

 

「何卒! 何卒ボーナスだけは!」

 

「……何か使い道でも?」

 

「年越しの瞬間、独り身を紛らわすのはボーナスくらいしか無いんだよ……今年も結婚出来そうにないしな」

 

「それは……」

 

 

 さすがのタカトシも何も言えなくなってしまったのか、横島先生のボーナス問題に関してはこれ以降触れる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、力仕事では役に立てないので、私は生徒会室でコトミの勉強を見ていた。

 

「はいこれ」

 

「何ですか、これ?」

 

「タカトシがやらせとけって」

 

 

 私がコトミに渡したのは、タカトシが作った期末試験対策用のテスト用紙だ。タカトシが予想して作ったテストなのだが、これがまた実際のテストと似たような問題らしいので、一時期畑さんが裏で売買しようとしたとか噂が流れた程だ。

 

「テストの前に軽くおさらいをしておきましょうか」

 

「お願いします」

 

 

 既に基礎はタカトシと魚見さんに叩き込まれているようで、後は応用問題が出来れば七十点も夢ではないところまで来ているらしいので、テスト前に公式の復習をする事にした。

 

「――というわけ。分かった?」

 

「はい……何とか」

 

「それじゃあ、五分後にテストを開始するから、その間に態勢を整えなさい」

 

「ほぇ……」

 

 

 口から煙が出てるんじゃないかと思うくらい、今のコトミは疲弊している。というか、この程度の復習で疲れるようじゃ、タカトシや魚見さんの厳しさに耐えられないんじゃないのかしら……

 

「あと一分」

 

「……よし!」

 

 

 何とか気合いを入れたのか、コトミは集中している眼差しで裏返してあるテスト用紙を見詰めていた。

 

「始め!」

 

 

 私の合図とともに、コトミは答案を表返して問題を解き始める。その間私は読みかけの本を読むことにしようとしていたのだけど、思いの外すらすらと解いているので、私はコトミの手の動きを眺める事にした。

 

「(成長してないと思ってたけど、ちゃんと成長してるのね……これでタカトシの苦労が報われれば良いのだけども)」

 

 

 もう何度目か分からないけど、コトミがここまでスムーズに問題を解いてる姿を見る日が来るなんて……私は身内ではないけど、なんだか子の成長を喜ぶ親の気分ね。

 

「……よし、出来ました」

 

「それじゃあ、採点するわね」

 

 

 コトミから受け取った答案に目をやり、私は少し意外な気持ちを味わった。

 

「六十八点……結構出来てるじゃない」

 

「でも、目標には届いてませんね……」

 

「ケアレスミスが多いわね。ほらここはさっき教えた公式の応用だから――」

 

 

 私の説明を真剣な眼差しで聞いているコトミに違和感を覚えながらも、私はミスした箇所の説明をしていく。

 

「――というわけ。分かった?」

 

「はい、何とか……後は忘れないうちに本番を迎えられれば大丈夫だと思います」

 

「いや、ちゃんと身になるように反芻しておきなさいよね」

 

「ふぁぃ……」

 

 

 さすがにキャパシティを超えたのか、頭から煙が出始めている。詰め込み過ぎたつもりは無いけど、全部忘れたりしてないわよね……?




目標まであと一歩、頑張れコトミ


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