桜才学園での生活   作:猫林13世

439 / 871
原作ではタカトシですが


コトミの知識の幅

 中間テストも無事に終わり、季節は秋から冬へと向かっていく。

 

「足が冷えるな」

 

「もう11月ですからねー」

 

 

 我々生徒会メンバーは変わらぬ成績を収め、風紀委員長の五十嵐、新聞部の畑と、上位者にとっては平穏な日常を取り戻したと言えるだろう。

 

「今回はコトミの成績も悪くなかったですし、無事に終わって良かったですよ」

 

「タカトシ君とカナちゃんが必死になって教えてたもんね~。私たちも少しくらい手伝っても良かったんだけど?」

 

「さすがに毎回皆さんの力を借りるわけにもいきませんので」

 

「そういえば萩村」

 

「はい?」

 

「轟と三葉の成績が揮わなかったそうだな」

 

「ムツミは兎も角、ネネがあそこまで酷い点数になるとは思ってませんでした」

 

「今度はクラスメイトの為に勉強会を開く必要がありそうだな。柳本も酷かったみたいだし」

 

 

 タカトシのクラスは萩村もいる事で、クラス平均がだいぶ高い。それでも補習にリーチが掛かっているメンバーも多いのは、担任が横島先生だからだろうか。

 

「ところで、男子だけズボンってずるいな!」

 

「俺に言われても……というか、まだその内容だったんですか?」

 

「今足が寒いって思って思い出したのだ」

 

 

 テストの話題で誤魔化していたが、風が来るとやはり寒いものは寒いのだ。

 

「いっそ女子の制服もズボンに変更してもらうか」

 

「あんまりパンツスタイルが好きじゃない子もいるだろうし、女子の制服がスカートじゃくズボンじゃ、制服が可愛いって理由で入学してくる子が減っちゃうよ? 今の時代定員割れを恐れてる学校だって少なくないんだし、そういう理由でも選んでくれる子がいてくれるのはありがたい事だと思うけど」

 

「そうだな……確かコトミがそんな理由だったな」

 

「後は家に近いからという、非常に残念な理由でしたね……」

 

「仕方がない、この案は却下だ」

 

 

 桜才はそれなりの進学校なので、制服が可愛いという理由で選ぶ奴らがいなくなってもそこまで生徒が減るとは思えないが、不必要に理由を減らす必要もないか。

 

「暖房をつければいいだけの話だしな」

 

「そうですね」

 

 

 女子の制服ズボン化計画は、表に出る事無く却下されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝は晴れていたのに、今は雨が降っている。昇降口では傘を持っていない人たちが困り果てた表情を浮かべている。

 

「朝タカ兄に傘持ってけって言われた時は何でって思ったけど、やっぱりタカ兄は頼りになるな~」

 

 

 私は朝タカ兄から渡された傘を開き、そのまま帰ろうとして――

 

「ちょっと待って!」

 

「マキ?」

 

 

――親友に呼び止められた。

 

「どうしたの?」

 

「今日用事があるんだけど、傘持ってなくて……駅まで入れてくれない?」

 

「別にいいけど、マキが傘を持ってないなんて珍しいね」

 

「今朝の天気を見て、傘を持ってくる方が珍しいって。というか、よくコトミは持ってたね」

 

「まぁね! と言いたいけど、タカ兄に持ってけって言われたからなんだよね」

 

「なるほど、津田先輩なら納得」

 

 

 それで納得されるのも複雑だけど、私とタカ兄、どっちを信じると聞かれれば、私もタカ兄を信じるだろうな。

 

「ところで、マキの用事って?」

 

「お母さんの荷物が届くらしいんだけど、今日お母さんが出かけてるから私が受け取らなきゃいけないんだよね」

 

「再配達を頼めば良いんじゃない?」

 

「時間指定しておいてそれは失礼だと思うけど」

 

「確かに……何回運んでも報酬は一回分だけだもんね」

 

 

 マキの用事も聞けたことだし、今日はマキとラブラブしながら駅に向かうとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 英語の小テストで赤点だったコトミが生徒会室に呼び出され、今はシノ会長と単語のチェックをしている。

 

「闇」

 

「ダークネス」

 

「反射」

 

「リフレクション」

 

「探索」

 

「クエスト」

 

「コトミの英単語の知識、だいぶ偏ってるな」

 

「ゲームで鍛えてたのばかりですからね~。最近は普通の単語も覚えようとしてるんですけど、どうしても覚えられなくて」

 

 

 恥ずかしそうに頭を掻くコトミだが、恥ずかしいのはむしろ俺の方なんだが……

 

「好きなものはすぐ覚えられるってやつだね~」

 

「どうでもいい事ばっか覚えてるんだから」

 

「いや~……お義姉ちゃんにも似たような事を言われました」

 

「せっかく前回のテストは良い結果だったのに、これじゃあまた留年にリーチが掛かってるんじゃないか?」

 

「こ、今回の小テストはかなり難しくて、私以外にも赤点はいっぱいいました」

 

「大勢いるからと言って、安心して良いわけじゃないだろ。ここで復習した後、家で再テストをするからそのつもりで」

 

「えぇっ!? タカ兄、そりゃないよ……」

 

「それくらいしなければ、覚えないだろうが」

 

 

 それなりに成長しているとはいえ、根は相変わらずなので、吸収速度は遅い。だから繰り返しやって覚えさせる以外に方法が無いのだ。

 

「それなら私たちも手伝いに行くが?」

 

「いえ、今日は義姉さんが来てくれる日なので、皆さんの手は借りなくても大丈夫です」

 

「お義姉ちゃん、昨日も来てたけどね~」

 

「バイトが無い日は、だいたい来てくれるからな」

 

 

 お陰でだいぶ助かっているのだが、義姉さんの体調は平気なんだろうか……ちょっと心配だな。




英語は自分も苦手だな……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。