桜才学園での生活   作:猫林13世

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机に頭をぶつけるのって、地味に痛いんですよね……


シノの失敗

 またしてもストレスが溜まってきたので、私はヤンチャをする事にした。

 

「(今回は、隠れて飛び出てビックリ作戦だ)」

 

 

 机の下に隠れて、誰かが入ってきたところで飛び出してビックリさせるという、実に単純な作戦だが、誰もいないと思っていたところでひとがでてきたらビックリするに違いないだろう。

 

『この間はありがとうね、タカトシ君。お陰で助かっちゃった』

 

『いえ、こちらも貸しがありましたので、お相子ですよ』

 

「(ターゲットはアリアとタカトシか)」

 

 

 仲良さそうに会話しながら生徒会室に来るなんて、これは本気で驚かさなければならないようだな。

 

「あれ? 人がいないのに鍵が開いてる」

 

「……そうですね」

 

「(よしよし、案の定不思議がってるな)」

 

 

 鍵を閉めておけべより驚かせることが出来たかもしれないが、あえて鍵を開けっぱなしにしておくことで、私がトイレにでも出ていったと思わせることが出来るのだ。

 

「とりあえずお茶を淹れるね~」

 

「いえ、お構いなく。それよりも、今日は仕事が多いみたいですから、少しでも先に終わらせておきましょう」

 

「確かに多そうだね~。でも、お茶くらいは良いんじゃないかな? タカトシ君や皆に飲んでもらいたいから、ウチから良いお茶っ葉持ってきたんだよ~」

 

「そうなんですか? それじゃあ、一杯だけご馳走になりましょうか」

 

「(グヌヌ……なんだかいい雰囲気で、逆に出にくくなってしまった……)」

 

 

 アリアの発言で引っ掛かったのは、何故『皆』で一纏めにしないでタカトシの名前を先に出したのか、というところだ。もしかしたら他意はないのかもしれないけど、何となくタカトシの事を特別扱いしているようにも聞こえる。

 

「それで、会長は何時まで机の下に隠れてるんですか?」

 

「何ッ――痛っ!?」

 

「えっ、シノちゃん?」

 

「……大丈夫ですか?」

 

 

 タカトシに覗きこまれた衝撃で思わず立ち上がろうとしてしまい、私は机に強か頭をぶつけてしまった。

 

「い、何時から気付いていたんだ?」

 

「何時って……最初から、部屋の中にシノ会長の気配はありましたし……」

 

「せめて常人レベルで判断してくれ……」

 

 

 普通気配なんて分からないだろうが……というか、私の作戦は最初から失敗だったという事か。

 

「そんなところで何してたの~?」

 

「隠れて飛び出てビックリ大作戦だったんだが、出るタイミングを逸してしまってな……挙句の果てにタカトシに驚かされるとは……」

 

「何か意味があるのかとも思いましたが、何時ものヤンチャタイムでしたか……」

 

「何時ものって、そんなにはやってないだろ?」

 

 

 私の抗議に対してタカトシは何も答えてくれなかった。そんなにはやってないと思うんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室に向かう途中、反対から畑さんが歩いてきたので、私は軽く会釈をして通り過ぎるつもりだったが、畑さんが話しかけてきた。

 

「この間のインタビュー、大変役に立ちました」

 

「いえ、お役に立てなのなら幸いです」

 

 

 新聞部からのインタビューだったので、私は胡散臭さを懐きながらもインタビューに応じたのだ。思いのほかまともなインタビューだったので、私も真面目に答えたのだ。

 

「それにしても、メモも取らずによくあそこまで正確に記事に出来ましたね」

 

「マスコミの端くれとして、ボイスレコーダーを持ち歩いていますので。これで聞き漏らしの心配はありません」

 

「なるほど」

 

「今度は風紀委員長にインタビューしようと思っているんですよ」

 

「五十嵐さんに?」

 

「この間の生徒会長交換会を経て、天草会長の中で校内恋愛禁止は古いのではないかという考えが浮かんだようなので、風紀委員長としてどうお考えなのかをね」

 

「なるほど……」

 

 

 ここ最近の畑さんは、真面目路線のようで安心出来る。

 

「ではさっそく――」

 

 

 そういって畑さんは女子トイレに入り、個室の扉の前でボイスレコーダーのスイッチを入れた。

 

「風紀委員長、インタビューよろしいでしょうか?」

 

『ッ!?』

 

「ここで録音するな」

 

 

 明らかにインタビュー以外の目的だろうと判断して、私は畑さんの腕を掴んでトイレの外に連れ出した。タカトシなら首根っこでも押さえつけて連行するんでしょうけども、私にはそんな事は出来ないので。

 

「それじゃあ、風紀委員長が出てくるまでの間、貴女にインタビューしてもいい?」

 

「まともな事なら」

 

 

 どうせふざけた質問が来ると決めつけていたので、私はあまり畑さんに意識は向けなかった。

 

「もし校内恋愛が解禁されたとして、貴女は誰かと付き合いたいですか?」

 

「ブッ!? な、なんですかその質問は……」

 

「一般的な質問のつもりだったのですが。そこまで動揺するという事は、やはり津田副会長狙いですか」

 

「何故そのような結論を導き出したのか分かりませんが、実際に解禁になってみなければ分からない、としかお答えできません」

 

「何という模範的な回答……正直つまらないですね」

 

「つまらなくて結構です。私は真面目に答えたのですから」

 

 

 これ以上畑さんといると、余計な事を書かれそうなので、私は足早に生徒会室を目指すのだった。




そして相変わらずの畑ランコ……

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