桜才学園での生活   作:猫林13世

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何が行われる予定だったのか……


生徒会合宿 前編

 横島先生の申し出で桜才・英稜合同生徒会合宿が行われる事になり、私たちは合宿場所となる旅館にやってきていた。

 

「ここは隠れ宿として有名でね。三ヵ月前に予約しないとダメなんだぜ」

 

「でも合宿を決めたのって一週間前ですよね?」

 

 

 タカトシの質問に、私たちも頷いて横島先生を見る。

 

「三ヵ月前は行く相手がいたのさ……」

 

「はぁ……」

 

 

 タカトシは深く考えなかったようだが、私たちはいろいろと引っ掛かりを覚えて顔を突き合わせて小声で話し合う。

 

「(八人で予約してたんだよな?)」

 

「(いったい何が行われる予定だったんでしょうか……)」

 

「(横島先生の事だから、きっと『そういう事』が行われたんだと思うよ~)」

 

「あの、先輩方。タカトシが凄い目で見てますので、そろそろ行きましょう」

 

「そ、そうだな!」

 

 

 萩村に言われて漸く、私たちはタカトシがこちらを睨んでいる事に気が付いた。とりあえずチェックインを済ませて、部屋に向かう。

 

「あの、今更ながら同じ部屋に男がいて大丈夫なんですか?」

 

「タカ君なら私たちを襲うわけ無いって信じてるから。むしろタカ君の方が襲われそうだし、お義姉ちゃんの隣で寝る?」

 

「カナっ! 抜け駆けは禁止だと言っただろ!」

 

「そうだよ~! タカトシ君の隣は、公平にじゃんけんで決めようって話し合いで決まったでしょ」

 

「そうなのか?」

 

「………」

 

 

 タカトシに尋ねられた萩村は、無言でタカトシから視線を逸らし、そのまま森も視線を逸らした。なんだかんだ言って森もタカトシの隣を狙っているからな……

 

「さぁ、まずは風呂に行くぞ!」

 

「横島先生、気合入ってるな~……あっ、先生は部屋の隅ですからね?」

 

「はい……」

 

 

 この人が一番タカトシを襲う可能性が高いので、タカトシから最も離れた場所で寝てもらうということで、私たちの意見は一致していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 泥風呂に入ってちょっとしたおふざけがあったけど、基本的には心地よい時間を過ごせたので、私たちは気分よく部屋に戻りました。

 

「お帰りなさい」

 

「あらタカ君。相変わらずお風呂に掛ける時間が短いね。せっかくの温泉なんだし、もう少しゆっくりすればいいのに」

 

「あんまり長い事浸かってると逆上せそうですし」

 

「だからっていつもと同じ時間じゃもったいないよ?」

 

「そうですかね? というか、シノ会長たちは何でそんな顔を?」

 

 

 タカ君に言われて振り返ると、確かにシノっちたちは物凄い形相で私の事を睨みつけていました。

 

「私とタカ君が特別な関係なのは、シノっちたちも知ってるでしょ?」

 

「あぁそうだな。カナとタカトシは『親戚』だもんな!」

 

「わざわざ強調しなくてもいいんじゃないですかね?」

 

 

 何でシノっちたちが怒っているのかあえて気にしてないのか、タカ君が何時も通りのトーンでツッコミを入れる。まぁ、私もわざとシノっちたちを嫉妬させたので、これ以上からかうのは止めておきましょう。

 

「せっかく温泉宿に来たんだし、卓球でもしましょうか」

 

「そういえばさっき、卓球台を見たな」

 

「それじゃあさっそくペアを決めましょう」

 

「あたしは部屋で呑んでるから、あんたたち若者だけでやってきな」

 

「もう呑むんですか? というか、合宿の引率だという自覚をですね――」

 

 

 どっちが引率だか分からないタカ君と横島先生の図を見ながら、私たちはこっそりと部屋を抜け出して卓球場へと向かう。タカ君には申し訳ないけど、私たちでは横島先生の相手は務まらないのだ。

 

「ではさっそくペアを決めたいと思います」

 

 

 公平なじゃんけんの結果、私と青葉っちペア、シノっちスズポンペアの揺れ無し、そして最後にアリアっちとサクラっちのプルンプルンペアとなった。

 

「何だかカナのモノローグに殺意を生じたんだが」

 

「私もです」

 

「気のせいじゃないですか?」

 

 

 タカ君がいたら読心術でバレてただろうけども、ここにタカ君はいない。恐らくタカ君も参加したくなかっただろうし、横島先生の相手を出来るのはタカ君だけですからね。

 

「ではさっそく」

 

 

 まずは私たちとシノっちたちのペアの勝負。青葉っちは一年生ですし、圧倒的に立場が不利ですが、スズポンは高校生以下の平均身長にも届いていないわけですし、身体的にはこちらの勝ちですね。

 

「何だか分からないけど張り倒す!」

 

「くっ!?」

 

 

 スズポンのスマッシュを返せず、まずは向こうの得点となる。

 

「仕方ないですね……」

 

 

 私は羽織っていた上着を脱ぎ、再び二人と対峙する。

 

「本気モードという事か」

 

「いえ、次やられたら下着姿になってしまいます」

 

「そ、そんなルールは設定していないぞ!?」

 

「あらシノっち。タカ君もいないのにそんなに赤くなるなんて……もしかしてノーブラなんですか?」

 

「うぐっ!? そ、そんなわけ無いだろ!」

 

「会長……?」

 

「そ、そんな目で見るな! してるに決まってるだろうが!」

 

「じゃあ、罰ゲームも怖くないですよね?」

 

「と、とにかく! 生徒会合宿で来てるんだから、そんな破廉恥な罰ゲームは禁止だ!」

 

「仕方ないですね」

 

 

 シノっちの名誉の為にも、これ以上苛めるのは止めてあげましょうか。




シノがフルボッコに……

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