桜才学園での生活   作:猫林13世

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原作のような流れは無しで


ちょっとした疑問

 生徒会室に行くと、何故かアリア先輩が机に突っ伏していた。

 

「アリア先輩? ……寝てるのか」

 

 

 これがスズならまだ納得出来るんだが、アリア先輩がこんなところで寝てるなんて珍しいな……

 

「よっぽど疲れてるのか?」

 

 

 忘れがちだが、アリア先輩はお金持ちのお嬢様だから、俺たちには分からない苦労とかがあるのかもしれないしな。

 

「とりあえず、寝かせておくか」

 

 

 男子の上着なんて嫌かもしれないけど、とりあえず羽織らせておくとするか。

 

「さて、他の人が来るまでに、こっちの仕事を終わらせておくか」

 

 

 今日もそれなりに仕事があるので、俺は寝ているアリア先輩を他所に作業を始める事にした。さっきまで規則正しかった寝息が、今は乱れている事は気づかないふりをして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し疲れたから机に突っ伏してたら、いつの間にか寝てしまっていたようで、私は起きるタイミングを逸してしまっていた。

 

「(まさかタカトシ君の制服の上着を羽織らせて貰えるなんて……)」

 

 

 スズちゃんとかシノちゃんが寝てた時にも羽織らせてあげてたけど、私にもちゃんとしてくれた嬉しさと、さっきまでタカトシ君が着ていたという恥ずかしさが混ざった感情が私を支配する。

 

「(タカトシ君は特に気にした様子もなく作業を始めてるし、このまま寝たふりを続けた方が良いのかな? それとも、自然な感じで起きて、上着を返した方が良いのかな?)」

 

 

 タカトシ君の事だから、私が既に起きている事に気付いているかもしれないけど、だからといってあっさりと起きる事は出来そうにないよ……

 

「(シノちゃんかスズちゃんが来てくれれば状況は変わるかもしれないし、あの二人なら私の事を起こしてくれるかもしれないし……)」

 

 

 結局そんな事を考えていた所為で、余計に起きるタイミングを逸してしまい、タカトシ君が黙って生徒会室を出て行ってくれたお陰で、漸く私は身体を起こす事が出来た。

 

「と、とりあえず恥ずかしいから、お手洗いで顔を洗ってこよう」

 

 

 そそくさと生徒会室を抜け出し、お手洗いを目指した途中で、シノちゃんとスズちゃんと鉢合わせした。

 

「おぉアリア……むっ? その上着は?」

 

「さっき生徒会室でウトウトしてたらタカトシ君が羽織らしてくれたの。彼、本当にジェントルマンだよね」

 

「そういえば、私が寝てた時にも羽織らせてくれたな」

 

「私の時もです」

 

「知ってるよ~。だからちょっと羨ましいな~とか思ってたけど、タカトシ君なら平等にしてくれるって分かってよかったよ~」

 

 

 これで私だけ羽織らせてくれなかったら、ちょっとどころではない動揺を覚えたかもしれないけど、こうして平等に羽織らせてくれたから、少なくとも私が二人より下に思われている事は無いって事だもんね。

 

「ところで、三人寝ていたら誰に羽織らせるのだろう?」

 

「「………」」

 

 

 シノちゃんの思いつきに、私とスズちゃんは顔を見合わせる。

 

「明日、やってみますか?」

 

「そうだな。タカトシが生徒会室にやってくる前に私たちが集まり、そして寝たふりをして実験してみよう」

 

 

 意外と乗り気なシノちゃんとスズちゃんにつられるように、私もその計画に参加する事にした。だって、二人だけ楽しそうでズルかったから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日決めたように、タカトシが生徒会室に来る前に私たちは集まり、そして寝たふりをする事にした。

 

「……何で三人が横並びで寝てるんだ」

 

 

 普段ならこんな座り方をしないので、タカトシも戸惑っているようだな……

 

「というか、大事な会議だって言ってたのに、何で昼寝なんか……」

 

「(すまん、それは君を呼び出すための嘘なんだ)」

 

 

 わざと時間を遅く教えたのも、この実験の為なのだ。タカトシなら私の嘘を見抜いていた可能性も考えられるが、こうして困惑しているという事はバレなかったという事か。

 

「てか、資料も何もないのにどうやって会議をするつもりだったんだ?」

 

「(早いところ誰かに羽織らせてくれないと起きられないじゃないか!)」

 

「というか、この書類の字間違えているし」

 

「(なにッ!?)」

 

 

 ここ最近はパソコンにも慣れて、誤字も減ってきたはずなのに……

 

「まったく……いい加減寝たふりは止めたらどうですか? 会議も嘘でしょうし」

 

「気付いていたのかっ!?」

 

「まずその座り方がおかしいですし、さっきからもぞもぞと動いてるのに気づかなかったとも? そもそも、会議の件を話しに来たシノ会長の目が、明らかに泳いでましたし」

 

「もぅ、シノちゃん駄目じゃない」

 

「せっかくの実験が台無しですよ」

 

「実験?」

 

「あっ……」

 

 

 萩村がポロリと言ってしまった単語を、タカトシが聞き逃すはずもなく、私たちは疑いの目でタカトシに見られる事になってしまった。

 

「い、いや……三人が寝ていたら、誰が上着を羽織らせてもらえるのか気になってな……」

 

「いや、三人そろって生徒会室で寝るなんてありえないだろうが……というか、何でそんな事が気になるんですか」

 

「仕方ないだろ! 気になってしまったんだから!」

 

「まぁ、良いですけど……それじゃあ、早いところ仕事を片付けましょうか」

 

「そうだな」

 

 

 実験は失敗したが、怒られる事なく終わったので善しとするか。




本当に寝てたら、誰を選ぶんだろうか……てか、あのマフラーは何処から出てきたんだ?

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